幼馴染の騎士
「…これはどうするべきなんだろうか」
珍しく途方にくれるのは烙斗。
何故、彼が途方のくれるのかというと。
膝の上には、お酒の瓶を抱えて懐くルルーシュと、肩には抱きついてくるスザクがいて。気が付いたときにはこうなっていて。烙斗は途方にくれていた訳だ。
「ルルーシュ様…」
「ルルだ」
「はい?」
「ルルだといっているだろう?」
「…わかったよ。ルル、お前なんでお酒なんて飲んでいるんだ?」
「スザクがくれた」
「…スザク」
「なーにー? 烙斗」
「なんでお酒なんて飲んでた訳?」
「えー。だって、キミがこないしぃ。ルルーシュが飲みたいっていうから」
「でも、お前たちメッタに酔わないよな」
「そーだねぇ…」
「…っ。ルル、その瓶見せろ」
「いやだ」
「ルル。いい子だから」
ルルーシュはしぶしぶ烙斗に瓶を渡す。が、それと同時に烙斗の腰に抱きつき、懐く。
瓶を見れば、アルコール度数がはかりしれなく強いお酒だった。
「スザク…。何処から持ってきたんだよ」
「え、ロイドさんがくれたよぉ?」
「…まったく」
ロイドがくれたとなりば、普通のアルコールに特殊なものを入れているはずだ。
「…まったく、あの人はやっかいなことを」
「らーくーとー」
「どうしたんだ? スザク」
「んー。なんでもなーい」
既に呂律も回っていないスザクと口調ははっきりしているが、既に行動がおかしいルルーシュ。
「ルル、スザク。寝るぞ。歩けるか?」
「無理。烙斗」
上目遣いのルルは両手を烙斗に差し出す。抱き上げろということらしい。
「まったく。スザクは歩けるか?」
「むーりー」
後ろから抱きついたままのスザクをとりあえず、そのまま抱きつかせ、ルルーシュを抱き上げる。
「スザク、とりあえず、足だけ動かせ」
「わかったー」
「ルル、落ちないように両手を首に巻きつけろ」
「ん…」
この部屋では三人も寝る事は出来ないので移動させることにする。
「烙斗?」
「ナナリー様」
「あら、スザクさんとお兄さまは眠ってらっしゃいますの?」
「…ええ、ロイドさんのお酒で」
「そうですか。烙斗、今日はとまって行くのでしょう?」
「だと思います。二人が離してくれないと思いますし…」
「では、明日、一緒に買い物に付き合ってくれませんか?」
「よろこんで。では失礼します」
「ええ。お兄様とスザクさんをよろしくお願いします」
三人の気配が遠くなっていった。
ナナリーはそれを感じて笑った。
「あの二人、本当に烙斗から離れたくないのですね」
ナナリーにとっても大切な人。
あの二人にとっては多分、それ以上。
離れたくないと無意識に思う。
「でも二人占めはずるいですものね」
ちゃかりとしているナナリーであった。
「ルル、スザ」
「んー」
「…ん」
「今日は一緒に眠るから、少し離せ」
烙斗の言葉に二人は軽く烙斗を離す。
「ほら、ルルはそこに横になれ」
「…わかった」
それでも、烙斗の服の端を持ったままだ。
「スザもほら」
「うー」
烙斗を真ん中に、二人が抱きつく形だ。
「…枕じゃないんだけど」
「いいのー。烙斗はボクらの安眠剤なの」
「烙斗…」
「はいはい。手を握りますよ。スザもだろ?」
「うんっ」
この場所で眠るときの約束。
烙斗の手を握って、眠ること。
「おやすみ。ルル、スザ」
やすらぎのゆりかごはここにある。