君の理想と恋心
「お互いに無理をしないで自然に傍にいられるような関係、があなたの理想なのでしょう?我侭くらい言っても良いんですよ、音也」
トキヤは音也の唇に音を立て口付けた。目を丸くしていた音也の顔が、トキヤの言葉の意味を理解して、一気に赤くなる。
「…聴いた?」
「ええ」
「なんでだよ、いっつも下らないとか言って聴いてないくせに」
「いけませんか」
「いけ…なくない、けどっ」
拗ねたように言って、顔どころか耳や首筋までも赤く染めて、音也が顔を逸らした。その様子が案外可愛らしくて、トキヤは笑った。
「私はあなたの理想に近付けていますか、音也」
そう尋ねると、音也はそろそろと上目遣いにトキヤを睨んだ。
「知ってるくせに、トキヤの意地悪」
唇を尖らせて文句を言うので、口付けて黙らせる。それから優しく髪を撫で、両手で頬を包んでもう一度、キスをした。
「…大好きだよ、トキヤ」
音也がぎゅっと閉じていた目をゆっくりと開いて言った。
その言葉を音也がどれだけ大事にしているか知っているから、トキヤは音也の目をじっと見つめ囁いた。
「私もあなたのことが好きですよ、音也…」
あなたが望むなら何度だって、大好きだと言ってあげる。何度だって、伝えよう。いつでも、あなたと同じ気持ちでいるのだと。
『だって自分の気持ちを相手に知っていて欲しいし、誰かに好きって言ってもらえたらすごく嬉しいよね』
それが好きな相手なら尚更、嬉しいはずだから。
(20121120)