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この恋は、君だから

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二人が浮気の境目について話を始めたところで、Aクラスの教室から真斗と音也が出てきた。音也は真剣な顔をして何かを真斗に話していたが、廊下に三人が揃っているのを見て、慌てて教室の中に戻って行ってしまった。真斗だけが廊下に取り残され、仕方ないように三人のところへ歩いてくる。
「イッキは相変わらずかい、聖川」
「ああ。ちゃんと話をしろと言っているんだが…困ったものだ」
チャイムが鳴り響き、ホームルームの時間を告げる。
「聖川さん」
トキヤは教室に戻っていく真斗を呼び止めた。
「音也に、今日は真っ直ぐ部屋に戻るように伝えて下さい」
 


夕方になり、部屋に戻ってきた音也はなんだか泣き出しそうな顔をしていた。無言のまま机に鞄を置いた背中に「おかえりなさい」と声を掛けると、「ただいま」と覇気のない返事が戻ってきた。
「音也、話があります」
真斗に頼んだ伝言から、トキヤに話が伝わっているということは薄々気付いているのだろう。音也はのろのろと制服を脱いで私服に着替えると、ダイニングテーブルの自分の席に着いた。
 音也のために作ったホットココアと、自分のコーヒーを持って、トキヤは音也の向かいに座る。音也は視線を落としたままトキヤの方を見ようとしなかった。
 目の前にココアを置いてやると「ありがとう」とぽつりと礼を言うが、カップに手をつけようとしない。トキヤはコーヒーを一口飲んでから、話を切り出した。
「翔から、話は全て聞きました」
「…………」
「音也、私は、キスをしたら浮気という意見には賛成します」
「ごめん、なさい。でも、俺…トキヤと別れたくない…」
そう言って、音也はぼろりと大粒の涙を零した。それがココアの中に落ちていったのを見て、トキヤは溜息を吐いた。
 出会った頃から思い込みが激しく真っ直ぐな性格だというのは知っていたが、まさかキスひとつで別れを切り出されるとまで考えているとは、さすがに思わなかった。
 トキヤの溜息をどう受け取ったのか、音也が立ち上がった。
「俺、絶対別れないからっ」
泣きながら言って部屋を飛び出していこうとする音也を、呆れつつ、背中から抱き締めて掴まえた。
「ちょっと待ちなさい。私はまだ何も言っていないでしょう、全く…あなたはどうしてそう、直情的なんですか。もう少し理性的になれないんですか」
腕の中で音也の体を引っくり返し、俯いていた顔を上げさせる。視線を逸らそうとするのを許さず、涙に濡れた目を真っ直ぐに見つめた。
「キスをしたら浮気というのは分かりますが、四ノ宮さんやレンのようにキスを挨拶のうちだと思っている人もいます。例えば、あなたがキスをされた相手が翔や聖川さんなら、私も少しは考えたでしょう。それでなくても、あなたは翔ととても仲が良いですし、何かがあるとすぐに聖川さんに頼りますからね」
音也の頬を濡らす涙を拭って、涙袋を指先で押さえる。目尻に膨らんで零れ落ちた涙を舌で掬い取った。
「四ノ宮さんとのキスはドキドキしましたか?」
「ううん…びっくりして、なんかよく分かんなかった」
「では、私とのキスは…?」
囁いてキスをする。音也が固く唇を結んだままでいるので、舌先で優しく促し開けさせ深く口付けた。舌を絡ませ角度を変え交わるキスに、濡れた音が響き、音也が頬をじわと染める。唇を離し、唾液に濡れた音也の唇を拭ってやった。
「どうですか?ドキドキしますか?」
「うん、すっごくドキドキする」
音也は言って、トキヤの肩に抱きついてきた。頬を摺り寄せられ、赤くなった耳朶に音を立て口付けると、音也が笑いながらぐすっと鼻を啜った。
「音也、もしもキスをして、私よりもドキドキする相手が現れたら、必ず教えて下さい」
それは、あまり想像したくない未来ではあるけれど。
 トキヤが囁いた言葉に、音也が顔を上げた。掠めるような口付けをされ音也を見つめると、音也は目を細めて笑っていた。
「きっとそんな奴、一生現れないよ。トキヤだけだよ」
声を震わせて言った音也の瞳から、涙が零れ落ちた。
「俺、トキヤのことが大好きなんだ」
切なげに告げられた言葉に、トキヤは微笑んだ。
 誰かをこんなふうに愛しく思うことがあるなんて、知らなかった。
 きっと、この恋は、一生終わらない。そんな予感がしていた。
「私もあなたのことが好きですよ、音也…」

(20121230)
作品名:この恋は、君だから 作家名:aocrot