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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 4

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第13章 真実の瞳


 フーチン寺と似通った寺が、山脈の向こう側に建立されている。
 名をラマ寺という。
 精神力の奥義を代々受け継いでいるフーチン寺に対し、このラマ寺では体力の限界を極める技、エイヤを修行している。
 エイヤとは、ラマ寺の当主ハモによって伝えられた技であり、フーチン寺のフォースよりもその歴史は浅い。しかし、歴史が浅いが故に人々にとって馴染みやすいのか、シーアン村の人々には伝わった。何よりもフォースのように精神力をかなり鍛える必要はないことが人々が馴染めた一因なのかもしれない。
 しかし、ラマ寺の修行僧は体ばかり鍛えている訳ではない。ラマ寺では精神の鍛錬を欠かしていない。心身ともに鍛えてこそ、エイヤの真の力を発揮できるというハモの教えによるものだった。
 ロビン達は御堂に入った。
 中は質素な造りではあるが、どこか神々しい。立派な仏壇がより一層そんな雰囲気を醸し出していた。
 仏壇の前では、1人手を合わせている女性がいる。静かに目を閉じて、一心に何かを願うような。そんな表情をしている。
「ただ今ハモ様は瞑想中でございます。どうかお静かにお願いします」
 年若き僧侶が注意を促した。
 ロビンは驚いた。
 ハモと言えばエイヤを創案し、伝えた人物である。
 フーチン寺のニュンパのような老人を思い浮かべていただけにロビンの驚きは大きかった。
「待っていましたよ、宿命を背負ったエナジストの皆さん」
 綺麗な声が辺りの沈黙を破った。
 ハモはロビン達にゆっくりと振り返った。三つ編みのおさげ髪が翻る。 見れば見るほどに美しい女性である。小さめの顔にバランスよく収まる小さな鼻と唇、どこか幻想的な雰囲気の薄紫の髪、そして何よりも全てを見透かす事ができそうなほど透き通った瞳がロビン達を見つめていた。
「なあ、今あの人…」
 ジェラルドがロビンに耳打ちした。
「ああ、待ってたって」
「あなた達が来ることは予測していました」
 ひそひそ話していたと言うのに会話の答えが返ってきた。
 ロビン達は『リード』を受けた時のような驚きにつつまれた。
「あの、ハモ様、私達…」
「分かっています。ガルシア達を追ってラマカン砂漠へ向かうのですね」
 もはや何でもお見通しのようであった。 ハモからは他に山脈の分かれ道での落石の原因はサテュロスである事を告げられた。
「彼らはあなた達に追いつかれる事を恐れて遠回りしなければならないよう、道を塞いだのです」
「くそ、ヤツらめ…」
 ジェラルドは固く拳を握りしめた。
「ですが、まだ彼らはラマカン砂漠にいます」
 アルテイン村に行ったりしているうちにもう既にかなりの時が経っていると言うのにガルシア達はまだ砂漠を進んでいる。それほどまでに過酷な道のりなのだろうか。
「皆さんも彼らを追って砂漠へ行くつもりなのですね。ですが、このままでは皆砂漠で死ぬことになるでしょう」
 ハモの突然の死の宣告に、ロビン達はかなり驚いた。
「どうしてオレ達が死ぬんだよ」
 ジェラルドは言った。
「それは砂漠の環境が原因です」
 ラマカン砂漠はもともとそこまで暑い砂漠ではなかった。この砂漠もモゴル森やアルテイン村のハイドロスタチュー同様魔が取り付いてからこれほどまでに暑くなったという。
 暑さもさることながら、砂漠特有の朝晩の温度差もとても激しく、夜には氷点下を下回ることもある。
 しかしながら、温度差よりも厄介な障害がラマカン砂漠にはある。蜃気楼というもので、これのせいで遠くを見渡すことが難しいばかりか、オアシスを見つけることも困難なのである。
 ラマ寺の者でも砂漠を越える事は難しいというのに、砂漠に行った事もないようなロビン達がうかつに飛び込んでは、行き倒れてしまうとハモは言うのである。
「だとすれば、ボクらは一体どうすればいいのですか?」
 イワンが訊ねるとハモはゆっくりとイワンの前に歩み寄った。
「イワン、あなたに『イマジン』のエナジーを授けます」
「『イマジン』ですか、それは一体どんなエナジーなのですか?」「『イマジン』とは心の目を開いて真実を見通す力です。先ほども説明した通り、ラマカン砂漠には強力な蜃気楼が発生していてオアシスを見つけることが非常に困難なのです。ですから、目ではなく心で見つけるのです」
 イワンは少し迷っていた。
 自分に『イマジン』が使えるかどうかはもとより、ハモについて思うことがあったからである。
 何故か彼女はこちらが名乗ってもいないのに名前が分かっていた。これは別に皆も同じであるが、どういう訳か、ハモはイワンの事を昔から知っているような、そんな口ぶりだった。
「イワン、『イマジン』を授けてもらってはどうですか?」
 メアリィは言った。
「そうだぜ、オレは砂漠で死ぬのはゴメンだよ」
 イワンは尚も迷っていたが、決心した。
「分かりました。それで、ボクはどうすれば?」
 ハモは突然不安そうに目を伏せて後ろを向いてしまった。
「どうしたんですか、ハモ様。『イマジン』は…?」
「うまくいくかどうか、分からないのです」
 ハモはイワンに向き直った。
「前に一度、コウランという子に予測する力、『プリディクト』を授けてみたのですが、その時は全く変化がありませんでした」
 コウランのあの予測はエナジーによるものだったのだ。しかしハモはコウランがそのエナジーをできるようになっていると知らないようだった。
「あの、ハモ様。オレ達途中までコウランと一緒に来ましたが、ここまで来れたのはコウランのお陰でもあるんです」
 ロビンはアルテイン鉱山での出来事を説明した。
「そうだったの、コウランが…」
「ハモ様、大変アル!」
 御堂の扉が開とともにコウランが現れた。
 コウランとはアルテイン鉱山の抜け道を通り抜けた後ウルムチを探しに行くと言って、一旦別れていた。
 ここに来たということはウルムチを見つけ、助け出すことができたのだろうか。
「ハモ様、私感じたネ。ウルムチ助けて言ってるヨ」
 どうやらまだ助けられていないようである。
「まあ、コウラン。ウルムチなら随分と前にシーアン村に帰ったはずよ?」
「それが、まだ帰ってないの事ヨ…」
 訝しく思ったハモはエナジーを使った。
『プリディクト』
 祈るような形で目を閉じた。目前の闇が、次第にある風景に包まれていく。
 そこは山脈の分かれ道である。サテュロスらの手によって引き起こされた落石によって周囲は岩に満たされている。
 その岩の中に1人、人がいる。
 おかっぱ頭の少し太った男の足が、岩の下敷きになっている。
 ハモは目を開いた。
「大変!本当に落石に巻き込まれてるなんて。コウラン、すぐに助けに行きましょう!」
 ハモはコウランと共に御堂から出ていこうとする。
「…!待ってくださいハモ様、『イマジン』を…」
 ロビンは慌てて2人を引き止めた。ハモははっとなった。
「忘れるところでした…」
 忘れるところだったとは、とんでもない事である。ロビン達にとっては命に関わる事だというのに…。
 ハモはイワンのもとへ歩み寄り、手を差し出してきた。
 イワンはその手に触れた。ハモはイワンの手を両手で優しく包み込んだ。