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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 4

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「コウランに授けることができたのです。イワンも『イマジン』を授かることができるでしょう。さあ、目を閉じて気持ちを集中して。私のエナジーを感じ取るのよ」
 イワンは言われるままに目を閉じて集中した。同時にハモは何かを唱え、念じ始めた。すると2人の体が輝き始めた。最初は淡く、後から時間が経つごとにはっきりと。
 数分間におよぶ念が終わると2人の体が一層強く輝いた。ハモはイワンの手を離した。
「終わりましたよ、これできっとあなたは『イマジン』を使えるはず」
 イワンにイマジンを授けると、ハモはすぐにコウランを連れてウルムチを助けに行った。
「ボク達も手伝いに行きませんか?」
 イワンは言った。
「ボク達に時間がないということはよく分かります。ですが、ハモ様にまだ訊きたいことがあるんです」
 イワンの申し出を断る者などいるはずもなかった。
「ありがとうございます。みんな」
    ※※※
 歩くこと数十分かけて東の山脈の分かれ道へとたどり着いた。 そこではハモとコウランが岩が崩れ塞がった道を見つめ、立ち尽くしていた。
「ハモ様!」
 ハモは振り返った。
「まあ、あなた達。来てくれたの?」
「ハモ様、一体どうしたのですか?」
 ハモは目を伏せて岩で塞がった道に向き直った。
「あれからまた崖崩れがあったようで、ウルムチも埋まってしまったみたいなのです」
 目の前の岩は隙間なく崩れてしまっている。この中に本当に人が埋まっていようものなら、もたもたしている場合ではない。救助が遅れれば命も危ない。
「一体どうしたら…」
 ハモは困り果てていた。
 目では探ることができない。ましてや、岩を一個一個どかして探していたのでは時間がかかりすぎる。探している間に手遅れになってしまうかもしれない。
 あれこれ考えているうちに、イワンはふと思いついた。
「『イマジン』を使ってみましょう」 目ではなく心で真実を見るエナジーならば岩に埋もれるウルムチを見つけ出せるのではないかとイワンは思ったのだ。
 しかしハモは浮かない顔をしている。
「『イマジン』で透視をするのはとても難しい事なのです。果たしてうまくいくか…」
「いえ、真実を見通すことに変わりありません。きっとできます」
 イワンは引き下がらなかった。
 イワンは崩れた岩の前に立ち、目を閉じて念じた。
『イマジン』
 詠唱するとともに目を開いた。イワンの目にのみ、風景に色が無く見える。
 灰色の、しかし暗闇ではない曇り空のような風景の中をイワンは歩いてみた。
 なかなかそれらしいものが見えてこない。イワンは岩の上に上ってみたりした。
 やはり無理だったのかと諦めかけた時、崩れた岩の一部分だけ色が元のままになっているのを見つけた。
――もしかして、ここに?――
 イワンはエナジーを使った。『リフト』
 エナジーによって岩が支えられ、持ち上げられた。それによってできた隙間から少し太りぎみの男の顔がのぞいた。
「ここにいました!」
 イワンは大声で言った。同時にウルムチの首に手を当てて脈を調べた。とくとくとしっかり規則的に打っている。さらに呼吸もしている。ウルムチは奇跡的に助かったのだ。
 その後ウルムチはロビンとジェラルドによって岩の隙間から引き出され、ラマ寺まで連れて応急処置をする事にした。
 コウランは一緒には来ず、シーアン村の人々にこの事を伝え、落石の処理をすると同時にウルムチを迎えにくると言ってシーアン村に帰っていった。
 御堂の外でウルムチの手当てが終わるのをロビン達は待っていた。
 イワンはハモに訊きたい事を自分の中でまとめていた。
 ハモはどういうわけかイワンの事をよく知っていた。まるで、自分の家族を見守るように。 予知能力とも違う、ずっと前から連れ添ったような、そんな雰囲気である。
 御堂の扉が開かれ、ハモが現れた。
「お待たせしました。ウルムチは皆さんのおかげで、助かりました。今は応急処置も終わってよく眠っています。後は意識が戻ってからちゃんと治療を受ければすぐによくなるでしょう」
 ロビン達はひとまず胸をなで下ろした。
「つい足止めをさせてしまいました。今から急げばサテュロス達に追いつけると思います。どうぞお急ぎください」
 ハモは一礼するとすぐに御堂に戻ろうとした。
「待ってください」
 イワンが引き止めると、ハモは振り向かず立ち止まった。
「ハモ様はどうしてボクの事を知っているようなのですか?」
 ハモは振り向かない。
「…まだ私の口からは多くは語れません。ですが、私はあなたの事を幼い頃から知っているのですよ」
「え?ハモ様、それはどういう…」
 ハモは振り返ってイワンの鼻先に指を当てた。
「今はこれしか言えません。時がくれば教えましょう。…イワン、立派になったあなたを見て、私は嬉しかったですよ」
 ハモはイワンの頭をそっと撫でた後、ロビン達に一礼し、御堂の中へ戻っていった。
「いいのかイワン、お前の訊きたい事とやら、訊きそびれたようだが」
「もう、いいですよ。ハモ様を手伝いに行った時から、あまりボクに目も合わせてくれませんでしたから」
 イワンに後悔の色はなく、むしろこれで良かったのかもという表情をしている。
 ロビン達にはそう見えたが、訊ねてきたリョウカにはそれが偽りだと見抜いた。
「イワン、本当に後悔しないのか?」
 リョウカは念を押した。
「本当にいいですよ。そのうちに分かると、ハモ様も仰ってましたし…」
 これも笑顔で答えた。
 人の心を読めるイワンは自分の心を偽る事は得意だった。しかし残念ながら同じく人の心を多少読めるようになったリョウカには通用しなかった。しかし、察したのか、リョウカはそれ以上は言わない。
「そうか、お前がそこまで言うならば仕方ないな」
 こう言うだけだった。
「さあ、皆さん。いつまでもゆっくりとはしていられませんよ。早く出発しましょう!」
 イワンは珍しく声を張り上げ、先陣を切って歩き出した。
 この時全員がイワンが胸の奥に秘める本当の気持ちに気付いた。だが、気付いたからこそ、皆何も言わなかった。
    ※※※
 灼熱で陽炎が発生している砂漠に、5人の男女が歩みを進めていた。
 一番前にサテュロスとメナーディが、2人から数メートル後ろにガルシアとシンが、すぐ後ろにジャスミンとスクレータという隊列で進んでいた。
 砂漠越えを始めて既に2日目である。それほどまでに広い砂漠なのだが、ここまで時間がかかってしまったのは別の理由がある。
 ドサ、とガルシアの後ろで音がした。見るとジャスミンが砂の上に倒れていた。
「ジャスミン、おい大丈夫か!?」
 ガルシアは抱き起こした。ジャスミンの顔は赤くなっているどころか青白くなっている。砂漠の暑さで脱水症状を起こしていることは明確だった。
「待ってくれサテュロス、ジャスミンが倒れた!」
 シンは大声で伝えた。
 サテュロスは立ち止まり、大きく舌打ちをした。
「また倒れおったか…」
 ただでさえ無茶な旅をしてきているというのにこの環境である。こんな灼熱の砂漠でもサテュロスは今までたいして休みをとらなかった。そのせいでジャスミンやスクレータは度々倒れていた。