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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 4

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第15章 戦士の祭典


 船着き場に、質素ながらも気品のある船が到着する。乗客が次々に降りていく。
 皆同様に安堵の表情がある。ただ無事に航海を終える事ができたという事だけではない、命が助かったと言うような、そんな大きな安堵感である。
 桟橋に掛かる船と地面をつなぐ橋を渡って、彼らも降りてきた。
「どうにか無事に着くことができたな」
 リョウカは風に靡く髪を押さえた。
「一時はどうなるかと思ったよ」
 ロビンも後に続いてくる。
「ほら、ジェラルド着きましたよ」
「しっかり歩いてください!」
 イワンとメアリィに支えられてジェラルドも降りてきた。顔は真っ青で血の気がない。
「うぇ…、気持ちわりぃ…」
 完全な船酔いである。足元もおぼつかず、2人に支えられている姿は酒に酔った酔っ払いにも見えた。
「あんなにはしゃぐから…」
 ロビンは苦笑いである。
「船酔いするのが後の方でよかったといえばよかったがな」
 リョウカは呆れ果てていた。
 ロビン達はラマカン砂漠を抜け、カレイの町に立ち寄った。どういうわけか、ラマカン砂漠は言われるほど暑くはなかった。いや、確かに暑いことは暑かったが、行き倒れてしまうほどのものには感じなかった。
 カレイの町に立ち寄った時、あるツアー団体に出会った。彼らはカラゴル海を船で渡って、アンガラ大陸一番の町、トレビで開かれるコロッセオを見に行くそうであった。
 ツアー客のほとんどがコロッセオの観戦が目的であったが、その中に2人、コロッセオの参戦が目的でこのツアーに参加した男達がいた。
 男達の名をシオン、ウラヌスと言った。
 小柄なシオンはその体を活かした素早い動きを得意とし、対してウラヌスは大きな体に相応しい屈強な力を持っていた。
 ロビン達もトレビを目指すことにしていたが、聞くところによると、カレイとトレビを結ぶシルク道は土砂崩れで塞がっており、トレビに行くなら船を使ってカラゴル海を渡るしかなかった。
 ロビン達は仕方なく船に乗ることにした。
 いざ航海が始まると、何度も魔物に襲われた。最近、カラゴル海では魔物が多く出現すると出航前に船長に聞いていた。中には、航海に出た後、そのまま帰ってこなくなった船もあると言う。
 そこでロビン達は船を守る為に協力する事にした。魔物退治は船団長のカジャとカレイで出会ったシオンとウラヌスも協力してくれた。
 最初に出てきた魔物は弱く、簡単に倒す事ができた。一番最後に出て来た魔物がとてつもなく手強い相手だった。
 大鮹の魔物、クラーケンである。ロビン達が駆けつけた時にはもう既にカジャとシオンらがやられていた。
 激戦の末、ロビン達はなんとかクラーケンを倒す事ができた。
 クラーケンとの戦いのせいでオール漕ぎが倒されてしまったが、ツアー客に頼み込んでオール漕ぎをさせることで、船はどうにか無事にトレビの港へ到着する事ができたのだった。
「ほら、ウラヌス!きちんと歩け!」
 シオンに支えられてウラヌスも船から降りた。
「う?む、やはり水を見てると気分が悪いぞ…」
 こちらはジェラルドとは違い、船酔いよりも金槌故のものだった。
「しっかりしろ。早く行かねばコロッセオに遅れてしまうぞ!」
「大変そうですね…」
 ロビンは苦笑し言った。
「全く、こいつの金槌にも困ったものだ」
 シオンは迷惑そうにウラヌスを支え直した。
「おう、お前たちまだいたか!」
 船の上からカジャが言った。深々と残った傷跡のある強面だが、笑顔はなかなかに愛嬌がある。
「カジャさん、どうしたんですか?」
 ロビンは訊ねた。
「お前たちもう行くんだろ?礼くらい言っておこうと思ってな!」
 それから、とカジャはなにやらもそもそと何かを取り出すとロビンに投げつけてきた。
 ロビンは慌ててそれを取った。見るとそれは小瓶だった。
「俺達船乗り特製の気付け薬だ。船酔いにはよく効くぜ!ジェラルドとウラヌスに飲ませてやるといい。ただしとんでもなく苦いがな!」
 ガハハ、とカジャは笑った。
「どうもありがとうございます」
「なぁに、いいってこった。じゃあ、道中気をつけてな!」
 カジャは船の奥へ戻っていった。
「カジャさんはすごいな、船乗りがやられて自分も傷を負った後だっていうのにあれだけ元気だもんな」
「あれが海の男というものなんだろう」
 ロビン達はジェラルドとウラヌスにカジャからもらった薬を飲ませ、トレビを目指して船着き場を後にした。
    ※※※
「うっは?、すげー!」
 ジェラルドがはしゃぐのも無理なかった。
 コロッセオとはトレビで年に一度開かれる戦士達の祭典である。故に町で開催されている祭りもものすごい規模のものだった。
「あれもやりて?、あ、これもいいな…ああ!トレビの泉だって、行こうぜロビン!」
 ジェラルドはロビンの手首を掴んだ。
「え!?いや、オレは…」
 祭りの時のジェラルドの力は普段のそれとは何倍も違っていた。
「ごめん、先に宿を探しといてくれ!」
 言い残すとロビンはジェラルドに引きずられ、人混みへと消えていった。
「やれやれ、船酔いはどこにいったのやら…」
 リョウカは呆れて溜め息をついた。
「それじゃあ、宿を探しに行きましょうか?」
 イワンは言った。
「すまんが俺達はコロッセオの参加の申し込みをしてくる。ここで別れよう」
 シオンが言う。
「そうですか、では大会頑張ってきてくださいね」
 メアリィはシオン達を応援した。
「ふむ、リョウカよ」
 ウラヌスは言った。
「ロビンにも言おうと思っていたのだが、ロビンは行ってしまった。だから、とりあえずお前に言おう。コロッセオに出てみぬか?」
 思いがけない誘いの言葉だった。
「私が?」
「そうだ、お前の船上での剣技、誠に見事であった。その技量ならば、コロッセオでも通じるであろう。どうかな?」
 リョウカは少し考えた。
「私で参加できるのか?」
「当然だ、コロッセオへの参加資格は実力のみだ」
 リョウカは決断した。
「面白そうだ、ぜひ参加しよう」
 ウラヌスは笑った。
「うむ、そう言ってくれると思っていた。リョウカと戦える事を楽しみにしていよう」
「ウラヌス、リョウカも出場するのなら急ぐぞ」
「うむ、そうだな」
 リョウカはイワン達に向いた。
「そう言うわけで、私もコロッセオに行く。宿探し頼んだぞ」
「分かりました。応援してますね」
 イワンは言った。
 リョウカはふと周りを見渡した。
「お前たちも遊んできたらどうだ?」
「え?」
「これだけの人だ、カレイからのツアー団体もいることだし、そう簡単に宿など見つからないだろう」
「ですが…」
「じゃ、そう言うことで、祭を楽しめ。こんな機会はなかなかないぞ?」
 リョウカは後ろを振り返って、シオン達とともにコロッセオのある町の北を目指して歩いていった。
 人混みの中にイワンとメアリィは取り残された。
「どうしましょう、イワン?」
 メアリィは遊ぶかどうか訊ねた。
「そうですね…」
 イワンは祭の様子を見渡した。
 祭には、普段大人びているイワンを引きつけるような魅力が沢山あった。
 中でもギャンブルダイスという物がイワンの子ども心を呼び覚ましていた。
「遊んでいきましょう!」