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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 5

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 向かい側に行くのに、飛び越すには遠すぎる幅の段差に石柱を押していき、それを足場にして向こう側に渡るというものである。
「へっ、こんなの楽勝だぜ!」
 サトレージは石柱を押し始めた。石柱は着々と押し進められていく。
 一方、リョウカは石柱には目もくれず走り続けた。段差の端で思い切り踏み切った。
「やあ!」
 リョウカは空中を一回転しながら跳んだ。滞空時間が長く、リョウカの真紅の長髪が美しく靡いている。観客にどよめきが生まれた。
 着地も綺麗に決めると、観客のどよめきは一瞬にして歓声に変わった。
 リョウカの見事な幅跳びにより、サトレージとの差が一気に開いた。
 次の障害物は行く手を塞ぐ岩をどかして道を切り開くものだった。
 岩は意外と大きく、飛び越そうにも、乗り越えようにも、岩のある通路に天井があり、岩をどかすしかない。
『ムーブ』
 リョウカは岩に手をかざし、エナジーを発動した。岩は右側に動かされる。
 一方のサトレージは今ようやく一つ目の障害物を越えたばかりだった。
 最後の障害物は水路に浮かぶ角材を利用して向こうへ渡るものだった。
 角材は全部で二つ浮かんでいる。リョウカはここでも大技を見せた。
 角材の上に乗り、そこから左斜め上にジャンプして壁を蹴り飛距離を伸ばし、二つ目の角材を踏み台にして、前方に弧を描きながら跳んだ。
 一連の動作はとても素早く、着地の瞬間大きな歓声がわいた。
 そこから少し走ると円形の広々とした試合場にたどり着いた。
「一着、第七戦士リョウカ!」
 審判員は告げた。サトレージとはかなり大きな差を開いての到達だった。
 リョウカが到着してから数分後、すっかり息を切らしたサトレージが到着した。
「ぜえ…はあ…、お、お嬢ちゃん…足は早いんだな…」
 最早勝負は目に見えていた。
「それでは先に到着した第七戦士リョウカ、武器をお選びください」
 様々な武器が並べられたワゴンを係員が運んできた。
 リョウカはその中から細身の剣を取り出した。そして、鞘から抜いてみた。反りのない両刃の剣である。普段リョウカの使う刀とは似ても似つかないが、重量はほぼ同じだったので、これにする事にした。
「では鞘はお預かりしましょう」
「いや、いいんだ」
 リョウカは剣を鞘に納めた。
「しかし鞘が邪魔では?」
「居合いが私の剣技だ。気にしないでくれ」
「…分かりました」
 聞き慣れない剣技の名を聞いて、係員は釈然としない様子だった。
 サトレージも武器を選び終えていた。彼が選んだのはなかなか鍛えられた長剣だった。
 本来一着の者が進んで選ぶはずの剣であった。
 両者武器を選び、向かい合ってお互いに構えた。
 試合の勝敗はどちらかが倒れるまで決まらない。正に命を懸けた試合が今。
「試合開始!」
 始まった。
「うおらあああ!」
 サトレージは剣を振りかぶり、攻撃を仕掛けた。
「ふん!」
 リョウカは剣を弾き返した。キイイン、という金属音が響くと、隙ができたサトレージの胴体を斬りつけた。
「たあ!」
 しかし、サトレージの甲冑に傷を付けるだけで、斬れなかった。
 まだ大きな隙を晒しているサトレージにリョウカは告げた。
「お前、鎧がなければ真っ二つだったぞ」
 剣を鞘に納めた。
「どうした?突っ立ってないでかかってきたらどうだ」
 サトレージは我に返った。
「舐めるなぁ!」
 サトレージはがむしゃらに攻撃をしてきた。
 剣の扱いや形はそこそこできてはいるが、それでもリョウカには到底及ばない。
 サトレージの最後の一太刀を後方へ跳びながらかわし、着地しながらリョウカは言った。
「ふ、お前では私に触ることもできないな」
「何だと!?」
 サトレージは息切れしている。
「嘘だと思うなら、もう一度来ればいい」
「くっそ?!」
 サトレージは剣を振り上げ立ち向かった。
「っはあ!」
 リョウカは拳を前に突き出した。そこに力全てを集め、エイヤを放った。
 サトレージはエイヤをまともに受け、後ろへ突き飛ばされた。
 エイヤの衝撃で、サトレージの甲冑はへこみ、サトレージ自身も倒れて動く気配がなかった。しかし、死んではおらず、ただのびているだけのようである。
 両者離れた状態で突然サトレージが吹き飛ばされたので、会場は一時静寂に包まれた。
「斬れない相手には打撃だ。もっとも、お前ごときに剣はいらないがな」
 リョウカはすっと、審判を一瞥した。
 審判は衝撃的な出来事に呆然としていたが、はっと我に返り、宣言した。
「一回戦第一試合、勝者、第七戦士、リョウカ!」
 会場に大歓声が戻った。
 失神したサトレージが担架に乗せられて去っていく。
 コロッセオファイナルは正に始まったばかり、それを表すかのように会場の歓声はいつまでも収まる気配がなかった。