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GIFT TO YOU

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「静雄さんって、あんまり自分の生まれた日が好きじゃないみたいなんだよね。」
 抑揚のない平坦な声で帝人は言った。これといった表情は浮かんでいない。
同席していた後輩たる黒沼青葉はこの一言に分かり易い渋面を浮かべたが、帝人が意に介した様子は無い。頼んだホットチョコレートのマグカップに両手を添え、一口啜っている。幸せそうに緩んだ帝人の顔を見て、青葉は嘆息した。緩々と首を振る。全く仕様が無い、と顔は語っていたが、肝心の御帝人は首を傾げるのみに留まった。
「・・・僕は別に、平和島静雄のことなんてどうでもいいんですけど。」
「うーん、やっぱり、あれのせいなのかなぁ。」
 総スルー。
個性の強過ぎる面々の統率、もといコントロールには、ある程度の諦観と、不要を切り捨てられる精神力が必要と見える。紆余曲折あり名実共にダラーズの頂点へと座すこととなった帝人は、平凡を体現したかのような様相でありながら、実に見事に変革を遂げるに至った、彼もまた非凡な面を持ち合わせているのであった。
 閑話休題。
 帝人は思案する。2人にとって特別な日を如何様に演出するかであるとか、贈り物に何を選ぶべきかといった所とは違う、もっと根本的な問題について。言うなれば己を欲をどうしたら満たすことができるのか、ということをだ。
帝人の思う「静雄の生誕日を祝う」という事柄は、所詮彼の自己満足の域を出ない。
世間的にいう所の”恋人”という関係に当たる静雄と帝人であるから、帝人の欲求は普遍のものだ。恋人に誕生日を祝われて嫌な気持ちになる者はそうは居ないだろう。
 だからこそ、である。静雄が帝人の気持ちを受け取ってくれるからこそ、帝人は静雄に大人な対応をさせたくないと思っているのだ。静雄は帝人の「おめでとう」に笑顔で感謝を返してくれるであろう。しかしそこからの発展は無い。そもそもにして静雄は自身の存在自体を良く思っていない所があるのだから、そんな彼が生まれ落ちた日を手放しで喜ぶと思うことは矛盾している。
 気持ちは受け取る。しかし返すことは無い。彼は帝人の好意を無碍にしない為に自身の思いを黙殺する。
「あぁ、本当にどうしよう。」
 帝人は憂い顔で息を吐いた。青葉は付き合いきれない、と頼んだセットメニューの消化に勤しむこととしたようだ。
 個人的に静雄に送るプレゼントは、既に用意している。あとは帝人の気持ちにケリを着けるのみだ。
 帝人は答えを求めるように、眼下に映る人の流れを眺め続けた。





 これは、どうしたものだろう。
 青年は困惑を幾分か滲ませた表情で眼下の少年を見下ろした。時は正に、明日を越えようとしている。
 仕事から帰宅した青年は、それよりも先に合鍵を使用して彼の為に夕食含む諸々の用意を済ませてくれていた恋人の存在に出迎えられた。蜂蜜色も鮮やかに艶やかな髪はサラリと揺れ、苛立ちと疲労に苛まれた精神と肉体、そして表情までもが浄化されていくように、腕の中に招き入れた恋人の身体はそれだけで青年には癒し効果を齎した。
 青年、平和島静雄は、自室で寛ぐ少年、竜ヶ峰帝人を後ろから抱き締めていた。週明けに小テストがあるのだ、と、生真面目に勉強し始めた少年の手元を何をするでも無く見詰めていた。
 ふいに、規則正しく、時折迷いながら動かされていた手が、ピタリと止まった。何だろう、そう思い帝人に問おうとしたその一瞬、腕の緩んだ静雄の行動を見透かしたように、帝人は身体を反転させると、突然。
「えっ?」
 静雄の身体に抱き付いたのだ。きゅっ、と優しく、しかし容易には離れない強さで静雄の身体に回された腕は、脆い。筋肉隆々とした体付きではないにしろ、それなりに成人男性の平均を上回る体型である静雄の胸囲に回される腕の持ち主は、高校生の平均身長に及ばない、貧弱と称しても差し支えない程に頼り無い身体だ。後ろに回すだけでも一杯一杯ではなかろうか。だがそれでも、その腕からは、確かな意思が感じられて、それ故に、静雄は困ってしまった。
 嫌悪では決してない、しかし意図が読めないことで、静雄の次の行動は制限される。取り敢えず抱き返してやるのが正解だろうか、と、そろりと腕を動かした、時。
 カチリッ。
「お誕生日、おめでとうございます、静雄さん。」
 秒針が0時を指し示す。と同時に上げられた顔は、ひどく幸福そうだ。パチリ、ゆっくりと瞬きをした静雄の様子から帝人は、静雄が帝人に対して適切な応えを返そう、としていることを読み取った。そうはさせまいと、先手を打つ。
「今年は、何を渡そうかな、って凄く悩んだんですけど、コレにしました。」
 言って帝人は、静雄の腕の中から手を伸ばし、近くに置いておいた鞄から小さな白い箱を取り出した。
「俺に?」
「他に誰が居るんですか。」
 心底おかしい、とクスクスと笑い声を漏らす帝人に、静雄は面映ゆい気持ちになる。
静雄の内心は、実に複雑に彩られているが、彼自身はそういった内面など億尾にも出していない、と思っている。故に、静雄から帝人に返す言葉は、優しく笑って「ありがとな。」、しかない。これで完結する。誕生日を祝って貰って手放しで喜べる程の年齢でもない。人の気持ちは有難く受け取る、内心が如何であろうとも、だ。それが処世術であり、常人として"当たり前"の対応であると静雄は認識している。とはいえ、それが日常生活できちんと生かされているかといえばまた別の問題ではあるのだが。
 兎も角、静雄は笑って謝意を述べようとしたが、またしても帝人に「開けてください。」と促され、言葉を封じ込まれる。何やらそのように誘導されているような気にさせられるが、感謝の言葉はどのタイミングでも言えるだろうと、帝人のペースに呑まれてやることにした。
「―――・・・これぁ・・・」
「ザッハトルテ。もっと分かり易く言うとチョコレートケーキです。」
 滑らかな曲線を描く円形のホールケーキ。2人で食べるには丁度良いサイズだ。
所々にがたついた所が見受けられるので、恐らくこれは帝人の手作りなのだろう、と見当を付ける。静雄からすれば、彼の為に時間を割いて手間を掛けてくれたというその点だけで、十分なプレゼントに値するが、帝人はそれでは気が納まらないだろう、こうして目に見える形で静雄に提示し、証明し続けている。
「一応、失敗はしてない、と思うので、不味くは無い、と思います。」
 心配そうに中を覗き込んだ帝人は、光を取り込んで艶めくケーキを粗を探るように眺めた。仕様が無い、と静雄は1つ、息を吐くと帝人の手から箱を取り上げ、机上に置いた。
あっ、と不満げな声を漏らして追おうとする視線を両手で固定し、真正面から灰蒼の双眸を捉える。
「良いんだよ、俺はアレが良いんだから。もう俺が貰ったんだから、それにケチ付けんのは禁止。」
 むぅ、と口を尖らせた帝人だったが、直ぐに気を取り直したように表情を改めると、力の籠った瞳で静雄の蔦色のそれを見詰め返した。
「実は、これだけじゃないんです。」
「あ?」
「静雄さんには、もう1つ、あげたいものがあります。」
 決意を秘めた瞳は、優しく凪いでいた。帝人の眼の中に自分の情けない顔を見たh静雄は、相も変わらず年下の少年に心の強さで敵わない自らに落胆する。
作品名:GIFT TO YOU 作家名:Kake-rA