GIFT TO YOU
帝人の薄い唇が、徐に開いた。
「お誕生日、おめでとうございます。」
「おっ、おぅ。」
帝人から齎されたのは、先程の言葉の重複であった。静雄は訳が分からないながらも1つ、頷く。そうした静雄の様子に帝人の口元の笑みは殊更深まっていく。
「僕、見付けたんです。」
「何、」
「静雄さんが壊すことができないもの。絶対に壊れないものが、分かったんですよ。」
静雄は目を瞠った。 言葉が何1つとして生まれてこない。満足そうに息を吐いた帝人は、少し背伸びをすると、静雄の耳元に唇を寄せた。そして、囁く。
「静雄さんがこの世に生まれた事実は、誰にも壊せないんですよ。」
だからこその祝福です、言って帝人は密やかに笑った。
静雄の、帝人の背に回された腕が強張る。頬を朱色に染め、言葉ない様子で小刻みに震える静雄に帝人が感じたものは果たして。
室温に溶け始めたチョコレートが一筋、側面を流れて落ちた。
作品名:GIFT TO YOU 作家名:Kake-rA