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浅蘇芳 藤袴
浅蘇芳 藤袴
novelistID. 44967
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晴れた日は恋人と市場へ

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今日は2月だけど、運良くあったかい。そして空も青く澄み渡っている。とりあえず、よかった・・・
なにせ今日は・・・久々に二人で出かけるのだから。


「遅れてしまってすみません。待たせてしまいましたか。」そう言った柳生は息を切らしていた。
「おう。大したことはないき、大丈夫ぜよ。それにしても遅れてくるとは珍しいのう。なんかあったんか。」
実際こうして待ち合わせるとき、いつも仁王の方が待たせていたものだったから、少し気になった。
「ちょっと、久々にここに来るものでしたから、駅の出口を間違えてしまいまして。」少し照れくさそうに言った。
まあそうかもしれんな。 同じ神奈川でもここは・・・横浜なんじゃからの。 まあ、横浜を選んだ理由は、秘密だけどの。
「それならいいきに。早く赤レンガ倉庫行きたいなり。」
「そうですね。では行きましょうか。」

こうして二人のデートは始まった。
みなとみらい線に乗って二つ目で降りて、そこから馬車道を歩いた先に赤レンガはあった。
歴史を感じさせる建物は、それだけで存在感があるし、まるでこの街のシンボルにも見えた。

平日だというのに、たくさんの客でごった返している感じだ。特に若い男女が多い印象を受ける。バレンタインが近いということもあるのかもしれない。

案の定、バレンタイン商戦が繰り広げられているのが見てとれる。ここはお菓子屋が数多存在する。そのわけかどの店もこぞって客引きしてる感じがうかがえる・・・

その時ある考えが頭に浮かんできた。

「そうじゃ柳生。ここからは別々に行動せんか?」こう聞いてみた。
彼は一瞬戸惑ったが、何かを察知したのか、了承してくれた。 一時間半後に2号館1回の案内板の前で、という約束を決めて一旦別れた。

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「さて、まだちと早いが、何にするかのう・・・」
 そうぼそぼそ言いながら中を歩いていく。本当に様々な店が並んでいて、雑貨、アクセサリーから、お菓子、花などなんでも揃っていた。そのため見るだけでも結構面白い。いろいろ考えながら歩いていると、あるものが目にとまった。
せっかくだし、何か渡すのも悪くない。
これはあやつになら似合うだろう・・・そう思いつつ購入することにした。

その後はお土産屋でお菓子を買って、待ち合わせ場所へと向かった。



待ち合わせ場所に行くと、そこにはすでに柳生がいた。姿を見るなり手を降ってきた。それに応じて駆けていった。
「今回は、負けたぜよ。」
「いえいえ、今朝は私が待たせてしまいましたから。今度は遅れてはいけないと思いましてね。そうだ、よければこちらを受け取ってください。」
そう言って差し出したのはラッピングが施された袋。バレンタインを意識でもしてるのか、それを感じさせる包装だ。
「開けてもええか?」そう尋ねてからドキドキしながら袋を開けた。
出てきたのは、紅茶でも入っているような缶だ。 紅茶なのか何なのか首をかしげた。
「それは、スチームクリームというそうで、全身に使える保湿クリームですよ。」
「どうしてまたそんなもんを・・・」なんかすごく照れくさくなってきた。
「まあ最近は寒さも厳しく、乾燥で肌もがさついてる感じがしましたから・・・って、何するんですか仁王くん!」
思わず帽子を柳生の頭にかぶせた。そして何を思ったか抱き寄せてしまった。
「そんなこと言うんから愛おしくなっちまうんじゃ。やめてくれんかの・・・」 なんかもう自分でもわけがわからなくなってしまったようだ。
「そんな可愛らしいところは相変わずですね。この帽子はありがたく使わせていただきますね。そんなわけで、放したまえ。」

やっと我に返った。 また、思わずやってしもうた・・・


「今日はこのあと、新しいカフェに行くんでしょう。早く行きましょう。」
「そ、そうじゃの・・・」

今度は行きとは逆の電車に乗って、地元へ向かった。 お互い気を使ったのか、終始無言だった。
かれこれ一時間くらいそんな感じだった。 平日の昼間ということで電車は閑散としていて、それがさらに気まずさを助長したのかもしれない。

しばらくすると電車が目的地に着き、降りた。目的の場所はそこから徒歩5分のところで、またもや黙ったまま歩いて行った。
(本当にこれでよかったんでしょうか・・・)
(さすがにさっきは言い過ぎたぜよ)

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「ようこそ。カフェ『ワンダーキャッスル』へ!」ドアを開けた瞬間二人とは対象にバカ明るい声が響き渡る。
カウンターの奥にはブン太が立っている。少し背丈も伸び、バーテンダーを彷彿とさせる服を来ている。
ふたりはカウンターに腰掛けた。

「ようブンちゃん。今日は約束通り柳生を連れてきたナリ。」
「仁王くん。ここだったんですね。私を連れてきたいと言ったのは。」
「まあ、ここはなかなかいい店だしの。料理もコーヒーも味がいいからの。」
「そうなんですか、お久しぶりです。丸井くん。」

ブン太も笑顔で挨拶に答えた。
「お!柳生久しぶりじゃね? 仁王もサンキュー!んで、今日は何するんだ? メニューならそこね。」
テーブルの上に、可愛らしい字で書かれたメニューボードがある。そこには美味しそうなコーヒーやスイーツの写真が並んでいた。
「じゃあ俺はロールケーキとエスプレッソお願いするぜよ」
「では私はさつまいもモンブランと紅茶お願いします」
2人のオーダーを聞いてブン太は奥へ入っていった。

再び黙り始めていた頃、ドアのベルがなってだれか入ってきた。
「じゃあ、いつものやつはここに置いていくよ。」

どこかで聞いたことがあるような声。気になって振り返ると、そこにはエプロンをつけた幸村が立っている。手には色鮮やかな花束がある。
「やあ。二人とも、久しぶりだね。」彼は優しく微笑んだ。
「お久しぶりです、幸村くん。」「久しぶりじゃのう。」

幸村は、ここの近くで花屋を営んでいるということだ。彼の見た目と、花を選ぶセンスとやらで、人気なんだそうだ。
この店には、たまに来て花を提供しているそうだ。

「まあせっかく来てこのまま帰るのもなんだし、ちょっと寄ろうかな。お隣失礼。」
そう言って仁王の右隣に腰掛けた。

そのうちブン太がでてきて、二人の前にオーダーしたものを並べた。
「お待たせ! ケーキと飲み物それぞれな!ゆっくり召し上がってな。あ!幸村くんきょうもありがとう! いつものでいいかな?」
「ああ、大丈夫だよ。」

そして彼は再び奥に消えた。

「あれ、柳生、その帽子、おしゃれだね。どこで買ったの?」帽子をみて尋ねてきた。
「ああ、これはですね、先ほどにお・・・」言ってる途中で仁王が口をおおった。