こらぼでほすと 再来5
「俺らがいなくなって、壊れたって本当か? 」
だというのに、ニールはハレルヤたちが行方不明になったことで、精神的に崩れたと、ティエリアに教えられて驚いた。他人なんて、これっぽっちも気にしていないはずのニールが、よりにもよって同じマイスターのハレルヤたちがいなくなっただけで、おかしくなったというのが解せなかった。死んで当たり前のテロリストだ。いつ消えても、それを気にすることはない。現に、組織にいた時は、トレミーのクルー以外が死ぬことも、ままあったが、ニールは崩れたことなどなかった。
「うーん、よくわかんないな。その時のことを、よく覚えていないんだ。・・・・季節が一つ消えたってことぐらいしか覚えてない。」
「はあ? 」
「王家のお嬢さんから連絡貰って、おまえらの居場所を調べなけりゃ、と、焦って準備したとこまでは覚えてる。でも、そこからが曖昧でさ。次に覚えてるのが、怒鳴ってるティエリアの顔とコスモスだ。ティエリアが降りて来た時は、すっかり秋だったんだ。確か、準備してたのは夏の初めだったんだけどな。」
「なんで、俺らがいなくなったぐらいで壊れてんだよ? 」
「そう言われてもなぁ。・・・・おまえらまでいなくなったら、マイスター組は壊滅状態だ。それが気になったんだと思うよ。そんな状態で、再始動したら刹那もティエリアも死んじまうなって。」
「じじい、飛躍しすぎだ。」
「うん、そうなんだけどな。・・・・おまえらが生きてるって言われて、それでも納得できなかったんだろうな。おまえらを連れ戻さなきゃって考えたはずなんだけどさ。・・・・ごめんな? 長いこと、不自由させて・・・おまえらを探して取り戻すための準備が整わなくてさ。俺には、なんもできなくて・・・ほんと、申し訳ない。」
クルマは、ショッピングモールの駐車場に入った。適当に空いているスペースに駐車したが、降りる気にはならない。ハレルヤたちが行方不明の頃には、すでにニールは所属が変わっていて、組織に関与できなかった。だから、何も謝ることはないはずだが、ニールは助手席で深々と頭を下げている。
「それぐらいのことでか? 」
「だって、おまえらがいなくなったら、俺一人だぞ? 寂しいじゃないか。なんで生きてるんだ? って思うだろ? 」
それが、ニールの本心だ。これは仮面のほうではない。それがわかるくらいに、ハレルヤたちも付き合いがある。
・・・・ニール、寂しがり屋さんだからね、ハレルヤ・・・・
アレルヤが内で、くすっと笑った。刹那が、常々、「俺のおかんは寂しがり屋だ。」 と、言うのは、こういうことらしい。
「別に、こっちでノウノウと暮らしてればいいじゃねぇーか。」
「それは無理だ。俺、おまえらが生きてるから生きてるってだけだ。」
「亭主が居るだろ? 」
「亭主じゃ、これは埋められないな。」
「とんだヘタレ野郎だな? 」
「俺は、こんなもんだ。・・・・だから、俺に心配かけんじゃねーっっ。」
ぶすっとして、そう叫んでニールが笑っている。それぐらいマイスター組のことを気にかけているということなのだろう。悪い気はしない。ニールの残された最後の砦が、マイスター組だと言うのだから、ハレルヤも笑い出す。ニールが過去なくしたものの代わりに、自分たちは大切にされているのだ。もう失くしたくないから、失くす事実から逃げる。それが、ニールの壊れた最大の原因だ。
・・・・おまえ、本当にバカだな・・・・
刹那も、かなりバカだと思っていたが、ニールも大概にバカらしい。まあ、バカだからテロリストになったには違いない。
「心配しなくても、しばらくは平穏に生きてるさ。それでいいだろ? 」
「そうしてくれると助かるな。」
「厄介なじじいだな。」
「うっせぇーよ。・・・ほら、行こうぜ? ハレルヤ。おまえ、こんなとこで時間潰してたら買い物できないぞ。」
どっこらせ、と、ドアを開けてニールが降りる。エンジンを切ってハレルヤも苦笑した。これでは、無茶なんかできない。自分たちが消えてしまったら、もれなくニールは、その事実から逃げてしまうからだ。逃げたら戻れない状態になってしまったら、それは死んだと同じことだ。刹那とティエリアが強行に、ニールの復帰は否定しているが、それはこういうことを含んでいる。そんな危険な精神状態のヤツなんか、ミッションには借り出せない。ハレルヤは、他の人間なら、俺が死んだ後のことなんて知るか、と、考える。だが、アレルヤの大切な生き物が生き残っていたら、と、考えたら、そうはいかない。それに、そんなふうに心配してくれるのは、相方の大切な生き物とニールだけだ。
早々に、ショッピングモールには到着したので、とりあえず、ぶらぶらして食事するか、と、歩いてみる。レストラン街へのルートを歩きつつ、その後の予定を、ふたりして考える。
「どんな服がいいんだ? 」
「いや、俺は別に服は、どうでもいいんだ。アレルヤは、いろいろと希望があるみてぇーだから、そっちは頼むわ。」
「なら、食事をゆっくりするか? 」
「そうだな。あんた、何がいい? 」
「そりゃ、俺の台詞だろ? 食いたいものを言ってみな。」
「あっさりしてるのがいいな。」
「じゃあ和食かな。」
ハレルヤは、基本的に表に出ることが少ないから、あまり服装に拘りはない。親猫の体調から考えて、そういもののほうが食うんだろうと思っただけだ。レストラン街の店に入ろうとしたのだが、金曜日だというのに満員だ。
「そうか、学生が休みだったな。」
学生たちの春休みというものに該当していて、若い人間が溢れている。これでは、ゆっくりと食事するのは難しい。下手をすると、並ばなければならない状態だ。
「他はないのか? ここじゃなくてもいいんだろ? 」
ショッピングモール内と限定しなければ、外にも食べるところはあるはずだ。そうだな、と、ニールが思いついた場所に案内してくれた。そこは、トダカ家の近くで、たまに、トダカと食事する店だと言う。
「なんだよ、トダカのじじいともデートしてんのか? 」
ニールの説明に、ハレルヤは呆れたというように、目を大きくする。ニールのほうは、苦笑しつつ、「そうじゃないよ。」 と、ランチを頼んだ。
「俺、この間から、あまり外出できなくなったからさ。たまに、トダカさんが外食に誘ってくれるんだ。近場なら問題ないからって。だからだよ。」
「けど、デートなんだろ? 」
「親子デートだから、おまえらとやってるのと同じことだぜ。」
「デート相手が多すぎないか? ハイネやレイも誘ってただろ? 」
夏休みに、ハレルヤが見ていた限り、ニールの周りには、誰かが居て、それが外出にも付いて行くなんてことになっていた。事情が事情だから、ハレルヤも理解しているが、ちょっとおもしろくない。自分たちは、たまにしか会えないのに、『吉祥富貴』のスタッフは四六時中、顔を合わせているのだ。
「なんだ? ヤキモチか? ハレルヤ。」
「ちげぇーよ。」
「じゃあ、おまえだけ特別に、おねだりもさせてやる。なんか欲しいものを見つけたら、言ってくれ。」
「バイク。」
「おう、じゃあ、専門店へ行こうか。」
だというのに、ニールはハレルヤたちが行方不明になったことで、精神的に崩れたと、ティエリアに教えられて驚いた。他人なんて、これっぽっちも気にしていないはずのニールが、よりにもよって同じマイスターのハレルヤたちがいなくなっただけで、おかしくなったというのが解せなかった。死んで当たり前のテロリストだ。いつ消えても、それを気にすることはない。現に、組織にいた時は、トレミーのクルー以外が死ぬことも、ままあったが、ニールは崩れたことなどなかった。
「うーん、よくわかんないな。その時のことを、よく覚えていないんだ。・・・・季節が一つ消えたってことぐらいしか覚えてない。」
「はあ? 」
「王家のお嬢さんから連絡貰って、おまえらの居場所を調べなけりゃ、と、焦って準備したとこまでは覚えてる。でも、そこからが曖昧でさ。次に覚えてるのが、怒鳴ってるティエリアの顔とコスモスだ。ティエリアが降りて来た時は、すっかり秋だったんだ。確か、準備してたのは夏の初めだったんだけどな。」
「なんで、俺らがいなくなったぐらいで壊れてんだよ? 」
「そう言われてもなぁ。・・・・おまえらまでいなくなったら、マイスター組は壊滅状態だ。それが気になったんだと思うよ。そんな状態で、再始動したら刹那もティエリアも死んじまうなって。」
「じじい、飛躍しすぎだ。」
「うん、そうなんだけどな。・・・・おまえらが生きてるって言われて、それでも納得できなかったんだろうな。おまえらを連れ戻さなきゃって考えたはずなんだけどさ。・・・・ごめんな? 長いこと、不自由させて・・・おまえらを探して取り戻すための準備が整わなくてさ。俺には、なんもできなくて・・・ほんと、申し訳ない。」
クルマは、ショッピングモールの駐車場に入った。適当に空いているスペースに駐車したが、降りる気にはならない。ハレルヤたちが行方不明の頃には、すでにニールは所属が変わっていて、組織に関与できなかった。だから、何も謝ることはないはずだが、ニールは助手席で深々と頭を下げている。
「それぐらいのことでか? 」
「だって、おまえらがいなくなったら、俺一人だぞ? 寂しいじゃないか。なんで生きてるんだ? って思うだろ? 」
それが、ニールの本心だ。これは仮面のほうではない。それがわかるくらいに、ハレルヤたちも付き合いがある。
・・・・ニール、寂しがり屋さんだからね、ハレルヤ・・・・
アレルヤが内で、くすっと笑った。刹那が、常々、「俺のおかんは寂しがり屋だ。」 と、言うのは、こういうことらしい。
「別に、こっちでノウノウと暮らしてればいいじゃねぇーか。」
「それは無理だ。俺、おまえらが生きてるから生きてるってだけだ。」
「亭主が居るだろ? 」
「亭主じゃ、これは埋められないな。」
「とんだヘタレ野郎だな? 」
「俺は、こんなもんだ。・・・・だから、俺に心配かけんじゃねーっっ。」
ぶすっとして、そう叫んでニールが笑っている。それぐらいマイスター組のことを気にかけているということなのだろう。悪い気はしない。ニールの残された最後の砦が、マイスター組だと言うのだから、ハレルヤも笑い出す。ニールが過去なくしたものの代わりに、自分たちは大切にされているのだ。もう失くしたくないから、失くす事実から逃げる。それが、ニールの壊れた最大の原因だ。
・・・・おまえ、本当にバカだな・・・・
刹那も、かなりバカだと思っていたが、ニールも大概にバカらしい。まあ、バカだからテロリストになったには違いない。
「心配しなくても、しばらくは平穏に生きてるさ。それでいいだろ? 」
「そうしてくれると助かるな。」
「厄介なじじいだな。」
「うっせぇーよ。・・・ほら、行こうぜ? ハレルヤ。おまえ、こんなとこで時間潰してたら買い物できないぞ。」
どっこらせ、と、ドアを開けてニールが降りる。エンジンを切ってハレルヤも苦笑した。これでは、無茶なんかできない。自分たちが消えてしまったら、もれなくニールは、その事実から逃げてしまうからだ。逃げたら戻れない状態になってしまったら、それは死んだと同じことだ。刹那とティエリアが強行に、ニールの復帰は否定しているが、それはこういうことを含んでいる。そんな危険な精神状態のヤツなんか、ミッションには借り出せない。ハレルヤは、他の人間なら、俺が死んだ後のことなんて知るか、と、考える。だが、アレルヤの大切な生き物が生き残っていたら、と、考えたら、そうはいかない。それに、そんなふうに心配してくれるのは、相方の大切な生き物とニールだけだ。
早々に、ショッピングモールには到着したので、とりあえず、ぶらぶらして食事するか、と、歩いてみる。レストラン街へのルートを歩きつつ、その後の予定を、ふたりして考える。
「どんな服がいいんだ? 」
「いや、俺は別に服は、どうでもいいんだ。アレルヤは、いろいろと希望があるみてぇーだから、そっちは頼むわ。」
「なら、食事をゆっくりするか? 」
「そうだな。あんた、何がいい? 」
「そりゃ、俺の台詞だろ? 食いたいものを言ってみな。」
「あっさりしてるのがいいな。」
「じゃあ和食かな。」
ハレルヤは、基本的に表に出ることが少ないから、あまり服装に拘りはない。親猫の体調から考えて、そういもののほうが食うんだろうと思っただけだ。レストラン街の店に入ろうとしたのだが、金曜日だというのに満員だ。
「そうか、学生が休みだったな。」
学生たちの春休みというものに該当していて、若い人間が溢れている。これでは、ゆっくりと食事するのは難しい。下手をすると、並ばなければならない状態だ。
「他はないのか? ここじゃなくてもいいんだろ? 」
ショッピングモール内と限定しなければ、外にも食べるところはあるはずだ。そうだな、と、ニールが思いついた場所に案内してくれた。そこは、トダカ家の近くで、たまに、トダカと食事する店だと言う。
「なんだよ、トダカのじじいともデートしてんのか? 」
ニールの説明に、ハレルヤは呆れたというように、目を大きくする。ニールのほうは、苦笑しつつ、「そうじゃないよ。」 と、ランチを頼んだ。
「俺、この間から、あまり外出できなくなったからさ。たまに、トダカさんが外食に誘ってくれるんだ。近場なら問題ないからって。だからだよ。」
「けど、デートなんだろ? 」
「親子デートだから、おまえらとやってるのと同じことだぜ。」
「デート相手が多すぎないか? ハイネやレイも誘ってただろ? 」
夏休みに、ハレルヤが見ていた限り、ニールの周りには、誰かが居て、それが外出にも付いて行くなんてことになっていた。事情が事情だから、ハレルヤも理解しているが、ちょっとおもしろくない。自分たちは、たまにしか会えないのに、『吉祥富貴』のスタッフは四六時中、顔を合わせているのだ。
「なんだ? ヤキモチか? ハレルヤ。」
「ちげぇーよ。」
「じゃあ、おまえだけ特別に、おねだりもさせてやる。なんか欲しいものを見つけたら、言ってくれ。」
「バイク。」
「おう、じゃあ、専門店へ行こうか。」
作品名:こらぼでほすと 再来5 作家名:篠義