こらぼでほすと 再来6
朝から、悟空をバイトに送り出した寺の女房は、さくさくと家事をこなして、台所で、おしっっと拳を握って気合を入れた。それを、居間から眺めている亭主のほうは、ケーキごときで、そこまで気合を入れるか? と、内心でツッコミだけはして放置している。念願のケーキだから、気合が入るのは仕方がない。
粉をふるうところから始まり、着々とスポンジは出来ていく。その間に、夜の食事の準備もしている。この日は、いつも年少組が勢揃いするから、食事も生半可の量ではないので、朝から準備して夕方に完成なんてことになる。ある意味、肉体労働に近いものがあるので、坊主も気になって出かけられない。
「おはようございます。」
そこへ金髪碧眼のレイが顔を出した。手伝いにやってきたらしい。続いて、歌姫様とキラ、アスランもやってきて、昼頃には、シンも現れた。みな、一様に同じことを考えていたらしい。昼は簡単に、卵と野菜うどんをアスランが手早く作る。それを食べてから、歌姫様が有無を言わさず、寺の女房の腕を掴んだ。
「キラ、監視をしてくださいませ。」
「うん、了解。」
「ママ、後のメニューは、これでいいですね。」
「デコレーションは残しとくからさ。まずは寝ろ、ねーさん。」
「休憩しないと、せっかくのパーティーを楽しめませんよ? ママ。」
口々に、休めと言われて、女房も、ありがとう、と、礼を言いつつキラと脇部屋に引き上げた。昨日、外出しているから、今日はナマケモノモードの日だから、そういうことになる。壊滅的に家事能力のないキラが、監視役でニールを休ませて、残りの段取りは他のもので行うことに決まっていたらしい。朝からバタバタしていたので、ニールも、ちょっと身体が重い。こういう場合は、素直に年少組の好意に甘えるぐらいのことはできるようになった。
「シン、足りないものを買い出してきてくれ。・・・・これ、スーパーにはないだろうから、デパートまでな。」
「あのさ、うちの父さんたちも来るから、刺身も買ってくるよ。酒の肴も必要だからさ。」
「そこいらは任せる。適当に、チョイスしてきてくれ。」
アスランは、ニールが書き記していた料理のメニューを見て、足りないものをすらすらとメモする。歌姫様は、レイを助手にして、煮物の野菜の皮を剥いている。
「オーナー、この煮物、アイリッシュシチューに変更しませんか? 」
「では、煮物の量を減らして、そちらも作りましょう。これは、三蔵さんのためにママが用意しているので無くすことはできませんの。」
さらに、午後から沙・猪家夫夫も顔を出したので、作業はスピードアップする。その頃に、アレルヤとティエリアも戻って来たのだが、さすがに大人数で驚いていた。
「おまえらは、しばらく、どっかへしけこんで来い。せっかくなんだから、協力しろ。」
「はあ? 」
「後二時間くらいしてから帰って来い。それぐらいなら、完成しているからさ。」
悟浄が、そう言って、戻って来たアレルヤとティエリアを追い出した。主役が手伝うなんていうのは、興ざめだ。さらに、トダカがアマギと共に大量に飲み物を運んできた。
「おや? 間男がいないね。」
「ハイネなら、本宅で何かやってるみたいですよ。時間には現れると思います。」
アスランがトダカの疑問に答えて、笑っている。昨夜、ニールから頼まれたことで、本宅に用事が出来たから遅れると連絡は入っていた。ようやく、ニールが起きてくると、ケーキのデコレーションが始まる。ケーキは、三つ。ひとつは、生クリーム、ひとつは、チョコ、ひとつはフルーツたっぷりのタルトだ。何層かに分けられて、中には果物もふんだんに盛り込まる。しっとりとしたスポンジは、完成度の高いもので、何年も作っていたからのものだ。
「ママ、これ。」
キラが準備していたプレートを渡して、それを差し込んだら完成だ。そのプレートは、「はっぴーばーすでぃーあれるや・はれるや」 と、書かれている。それが、白と黒のケーキにセットされる。
「ありがとう、みんな。手伝ってくれて助かった。」
完成したケーキを眺めて、親猫も嬉しそうに周囲に声をかける。八戒とアスランも顔を見合わせて苦笑する。ここまで、五年。本当に長かっただろうと思うからだ。料理を並べて準備しようと動き出したら、外からバイクのエンジン音がして、ハイネがやってきた。
「持ってきたぞ。明日から特訓してやる。」
「ありがとう、ハイネ。」
「なんでバイク? てか、うちのねーさんが乗るのかよ? ハイネ。」
シンが、会話の意味がわからずツッコミだ。クルマすら運転禁止の人間に、そんな危険なことはやめろというところだ。
「俺じゃねぇーよ、シン。ハレルヤだ。」
「ママニャンな、ハレニャンに誕生日祝い四年分にバイクをプレゼントしたんだけどさ、ハレニャン、乗ったことないから特訓すんだよ。」
普通は逆だろう、と、ハイネはツッコミしているが、誰もが、ああ、と、それには納得だ。デートの時に、そういうことになったのなら、即買いしちゃったに違いないからだ。歌姫の所有する車両に、大型バイクもあるから、ハイネが、それを整備して運んで来てくれた。その話に、トダカとアマギは受けて大笑いしている。
「ちょっ、トダカさん、アマギさん、それ笑いすぎ。」
「いや、だって・・・きみ、やることが極端すぎるんだよ。だいたい、スーパーの特価で、安いネギを買うか買わないかなんて、チラシ見て悩んでるくせに、バイクを衝動買いするなんてさ。ねぇ、トダカさん。」
「あははは・・・・うちの子は、そういう子なんだよ。可愛いだろ? あははははは。」
普段の慎ましやかさからすると、やることが極端すぎて笑えるらしい。もう、と、怒ってニールは準備を続ける。
準備が整った頃に、アレルヤたちが戻って来た。悟空も、途中で合流したのか、一緒だったのは幸いだ。居間に勢揃いしている面々と料理の数に、アレルヤたちは、さらに驚いた。客間の襖を開けて、そこまで机を配置した上に、料理がどーんと並んでいるのだ。
「おかえり、アレルヤ、ハレルヤ、ティエリア。」
ここに座って、と、上座になるこたつに座らされた。さすがに、こたつには入りきらないから、机が持ち込まれて、他の面々も座っている。
「とりあえず、これ吹き消してくれ。」
ふたつのケーキがアレルヤたちの前に置かれて、レイがローソクに火をつける。そして、歌姫が合図して、ハッピーバースディーの歌だ。歌が終わるとアレルヤたちが、交互に顔を出してローソクを吹き消した。
「おめでとう、アレルヤ、ハレルヤ。ようやく、言えたよ。」
ほっとしてニールも笑い出す。ここまで五年。本当に長かった。当人たちに食べてもらうまで、ケーキは何度も焼いていた。それを食べてもらうまで五年もかかったのだ。
「ありがとう、ニール。それから、みんなもありがとう。」
なんか照れくさいなあ、と、アレルヤは真っ赤になっているが、それも笑いを誘う。ほら、乾杯もしようぜ、と、飲み物も配られる。
「ティエリア、今年は今年で用意するけど、去年の分な? 」
「にゃんだ? 」
「おまえの誕生日の分。アイスケーキでお祝いしたけど、こっちでもやろうな? 」
粉をふるうところから始まり、着々とスポンジは出来ていく。その間に、夜の食事の準備もしている。この日は、いつも年少組が勢揃いするから、食事も生半可の量ではないので、朝から準備して夕方に完成なんてことになる。ある意味、肉体労働に近いものがあるので、坊主も気になって出かけられない。
「おはようございます。」
そこへ金髪碧眼のレイが顔を出した。手伝いにやってきたらしい。続いて、歌姫様とキラ、アスランもやってきて、昼頃には、シンも現れた。みな、一様に同じことを考えていたらしい。昼は簡単に、卵と野菜うどんをアスランが手早く作る。それを食べてから、歌姫様が有無を言わさず、寺の女房の腕を掴んだ。
「キラ、監視をしてくださいませ。」
「うん、了解。」
「ママ、後のメニューは、これでいいですね。」
「デコレーションは残しとくからさ。まずは寝ろ、ねーさん。」
「休憩しないと、せっかくのパーティーを楽しめませんよ? ママ。」
口々に、休めと言われて、女房も、ありがとう、と、礼を言いつつキラと脇部屋に引き上げた。昨日、外出しているから、今日はナマケモノモードの日だから、そういうことになる。壊滅的に家事能力のないキラが、監視役でニールを休ませて、残りの段取りは他のもので行うことに決まっていたらしい。朝からバタバタしていたので、ニールも、ちょっと身体が重い。こういう場合は、素直に年少組の好意に甘えるぐらいのことはできるようになった。
「シン、足りないものを買い出してきてくれ。・・・・これ、スーパーにはないだろうから、デパートまでな。」
「あのさ、うちの父さんたちも来るから、刺身も買ってくるよ。酒の肴も必要だからさ。」
「そこいらは任せる。適当に、チョイスしてきてくれ。」
アスランは、ニールが書き記していた料理のメニューを見て、足りないものをすらすらとメモする。歌姫様は、レイを助手にして、煮物の野菜の皮を剥いている。
「オーナー、この煮物、アイリッシュシチューに変更しませんか? 」
「では、煮物の量を減らして、そちらも作りましょう。これは、三蔵さんのためにママが用意しているので無くすことはできませんの。」
さらに、午後から沙・猪家夫夫も顔を出したので、作業はスピードアップする。その頃に、アレルヤとティエリアも戻って来たのだが、さすがに大人数で驚いていた。
「おまえらは、しばらく、どっかへしけこんで来い。せっかくなんだから、協力しろ。」
「はあ? 」
「後二時間くらいしてから帰って来い。それぐらいなら、完成しているからさ。」
悟浄が、そう言って、戻って来たアレルヤとティエリアを追い出した。主役が手伝うなんていうのは、興ざめだ。さらに、トダカがアマギと共に大量に飲み物を運んできた。
「おや? 間男がいないね。」
「ハイネなら、本宅で何かやってるみたいですよ。時間には現れると思います。」
アスランがトダカの疑問に答えて、笑っている。昨夜、ニールから頼まれたことで、本宅に用事が出来たから遅れると連絡は入っていた。ようやく、ニールが起きてくると、ケーキのデコレーションが始まる。ケーキは、三つ。ひとつは、生クリーム、ひとつは、チョコ、ひとつはフルーツたっぷりのタルトだ。何層かに分けられて、中には果物もふんだんに盛り込まる。しっとりとしたスポンジは、完成度の高いもので、何年も作っていたからのものだ。
「ママ、これ。」
キラが準備していたプレートを渡して、それを差し込んだら完成だ。そのプレートは、「はっぴーばーすでぃーあれるや・はれるや」 と、書かれている。それが、白と黒のケーキにセットされる。
「ありがとう、みんな。手伝ってくれて助かった。」
完成したケーキを眺めて、親猫も嬉しそうに周囲に声をかける。八戒とアスランも顔を見合わせて苦笑する。ここまで、五年。本当に長かっただろうと思うからだ。料理を並べて準備しようと動き出したら、外からバイクのエンジン音がして、ハイネがやってきた。
「持ってきたぞ。明日から特訓してやる。」
「ありがとう、ハイネ。」
「なんでバイク? てか、うちのねーさんが乗るのかよ? ハイネ。」
シンが、会話の意味がわからずツッコミだ。クルマすら運転禁止の人間に、そんな危険なことはやめろというところだ。
「俺じゃねぇーよ、シン。ハレルヤだ。」
「ママニャンな、ハレニャンに誕生日祝い四年分にバイクをプレゼントしたんだけどさ、ハレニャン、乗ったことないから特訓すんだよ。」
普通は逆だろう、と、ハイネはツッコミしているが、誰もが、ああ、と、それには納得だ。デートの時に、そういうことになったのなら、即買いしちゃったに違いないからだ。歌姫の所有する車両に、大型バイクもあるから、ハイネが、それを整備して運んで来てくれた。その話に、トダカとアマギは受けて大笑いしている。
「ちょっ、トダカさん、アマギさん、それ笑いすぎ。」
「いや、だって・・・きみ、やることが極端すぎるんだよ。だいたい、スーパーの特価で、安いネギを買うか買わないかなんて、チラシ見て悩んでるくせに、バイクを衝動買いするなんてさ。ねぇ、トダカさん。」
「あははは・・・・うちの子は、そういう子なんだよ。可愛いだろ? あははははは。」
普段の慎ましやかさからすると、やることが極端すぎて笑えるらしい。もう、と、怒ってニールは準備を続ける。
準備が整った頃に、アレルヤたちが戻って来た。悟空も、途中で合流したのか、一緒だったのは幸いだ。居間に勢揃いしている面々と料理の数に、アレルヤたちは、さらに驚いた。客間の襖を開けて、そこまで机を配置した上に、料理がどーんと並んでいるのだ。
「おかえり、アレルヤ、ハレルヤ、ティエリア。」
ここに座って、と、上座になるこたつに座らされた。さすがに、こたつには入りきらないから、机が持ち込まれて、他の面々も座っている。
「とりあえず、これ吹き消してくれ。」
ふたつのケーキがアレルヤたちの前に置かれて、レイがローソクに火をつける。そして、歌姫が合図して、ハッピーバースディーの歌だ。歌が終わるとアレルヤたちが、交互に顔を出してローソクを吹き消した。
「おめでとう、アレルヤ、ハレルヤ。ようやく、言えたよ。」
ほっとしてニールも笑い出す。ここまで五年。本当に長かった。当人たちに食べてもらうまで、ケーキは何度も焼いていた。それを食べてもらうまで五年もかかったのだ。
「ありがとう、ニール。それから、みんなもありがとう。」
なんか照れくさいなあ、と、アレルヤは真っ赤になっているが、それも笑いを誘う。ほら、乾杯もしようぜ、と、飲み物も配られる。
「ティエリア、今年は今年で用意するけど、去年の分な? 」
「にゃんだ? 」
「おまえの誕生日の分。アイスケーキでお祝いしたけど、こっちでもやろうな? 」
作品名:こらぼでほすと 再来6 作家名:篠義