こらぼでほすと 再来8
「そうですね。紅は贈るでしょうから、適当に挟んであげてください。最初だけシャンパンということでよろしいですか? トダカさん。」
「そちらの手配はしてあるよ、八戒さん。仕事が終わってからだから、みんなも、それほど飲まないだろうけど、最初だけはシャンパンで。ああ、ティエリアくんには、シャンメリーを用意するからね。」
「トダカさん、特別は? 」
「きみらしか呑まないから却下だ、鷹さん。」
「まあまあ、鷹さん。俺のお勧めを持ってくる。それで勝手に盛り上がればいい。」
着々と、はぴば祝いは決まって行く。毎年の事ながら、やはり、一年に一度となると気合も入る。この時ぐらいしか、ニールに日頃の感謝を伝えられないから、年少組としては、やる気満々だ。
今日は、一日外出だから、と、アレルヤとティエリアは寺から飛び出した。途中で、シンとレイと合流して、高級デパートへ案内してもらった。バスタオルやエプロンは、同じ階にあるので、そこいらを物色する。
「俺らは、七階の書籍売り場へ行くけど、終わったら携帯鳴らしてくれ。」
「ありがとう、シン、レイ」
どうやら、シンたちも、ここでプレゼントを買うつもりだったらしく、書籍売り場へと移動した。さて、ミニティエリアとアレルヤは、きょろきょろと売り場を探す。だいたい、こういうところとは、普段、まったく縁のない生活をしているわけだから、右も左もわからない。バスタオルは、すぐに見つかったので、そこから始める。大判とカテゴライズされているバスタオルの前で、ふたりして眺める。
「いちばんほわほわがいいにゃ。」
「ほわほわっていうと、こういうのかな? 」
手触りのいいのを、アレルヤがティエリアに触らせてみる。もにもにと揉んで、あっちのは、どうだ? とか言うので、そちらもアレルヤが手にして渡す。いろいろと試してみて、一番良さそうだと思うのに辿り着くまで、けっこうかかった。最後の二つは、どちらも甲乙付け難くティエリアも悩んで、首を傾げる。製品の原料は、まったく同じなので、後は色と柄ぐらいなのだが、どちらも、薄い緑地で、意匠のデザインが違うだけだから、どっちでも同じだが、ティエリアは、どっちも気に入ってしまい決められない。
「ふたつ買ってもいいんじゃないの? ティエリア。」
「しょうか、ふたちゅでももんだいにゃいにゃ。」
で、なぜか、ティエリアは、それを二セット持ち上げる。ミニティエにとっては、それだけで持てない大荷物と化す。それをアレルヤが取上げた。
「ライルの分かい? 」
双子なんだから、同じモノを贈ろうと考えたのかな、と、アレルヤは思ったのだが、ぶんぶんと首を横に高速で振った。
「にゃんで、あほりゃいりゅのものにゃんか、よういしゅるひつようがあるにゃ? こりぃは、しゃんぞーのぶんにゃ。」
「ああ、キラがペアって言ってたもんね。」
夫夫には、ペアでも良いのだろう、と、アレルヤは解釈した。まあ、ペアルックなんてものもあるのだから、ペアのバスタオルなんてのもいいかもしれない。
「ということは、僕のも、そうしようかな。」
「ふたりににゃら、しんぴるにゃほうがいいにゃ。」
「そうだね。ニールも、シンプルなのしてるもんね。」
いや、ひらひらふりふりのもあるのだが、亭主が、それを見て顔色を青くしたので、それから、そういうものはやめている。そういうひらひらものは、主に鷹やアイシャあたりからのプレゼントだ。
バスタオルを、プレゼント用に包装してもらって、そこでエプロン売り場を教えてもらった二人は、そちらでも、あれやこれやと悩んで、薄い紫地のものと、薄いオレンジ地のものを選んで、こちらも包装してもらった。これで任務は完了だが、アレルヤはティエリアを、だっこして、尋ねる。
「ティエリア、僕からきみに、何か贈りたいんだけど、希望を言って。」
「うに? 」
「だって、きみに、まだ僕は誕生日祝いを贈ったことがないだろ? 」
「しょうだにゃ。」
旅の途中で、ふたりしてプレゼントを贈り合うつもりだったのだが、結局、これといったものが、みつからなくて有耶無耶になっていた。そのうち、何かあったら、ということにしたが、せっかくだから、と、アレルヤが口にした。ニールが贈った枯れないバラは、ティエリアが常時、持ち運んでいる。そんなふうに持ち運びできるものがいいのだが、なかなか思うものがないのだ。
「何がいい? もちろん、形のあるもので。」
「おみゃへに、おりぃはおくってにゃいのに。」
「僕、その日一番の言葉を貰ったから、それで十分だ。」
「だみぃにゃ。おりぃにもおくりゃせるにゃ。」
「じゃあ、僕らもお互いにタオルにしようか? これなら、どちらも使うものだからいいよね? 」
「いいにゃ。」
そして、二人して、そのままご機嫌で、タオルの売り場に向かっているのを、冷静に買い物が終わったシンとレイが観察していた。
「あれ、いいよな? レイ。どんなにいちゃいちゃしてても、周囲にはわかんないんだぜ。」
「けど、シン。あれは、一歩間違うとアレルヤが、ロリコンになると思うんだが・・・」
どうでもいいことを話つつ、こりゃ、もう少し時間がかかるなあ、と、二人は待っていることにした。すでに、ふたりは事前に探しておいた書籍をプレゼント包装して持っていた。もうちょっと予算は引き上げたっていいのだが、ニールが渋い顔をするので、いつも通りの範囲に留めている。
「アレルヤたちが帰ったら、しばらくは寺に居候しようか? 」
「そうだな。たぶん、ママは寂しいだろうから・・・授業のほうは、なんとかなるはずだ。」
「春休み前でレポートの準備はあるけどな。」
「それは、いつものことだ、シン。先にやっておかないと、オーヴの遠征ができないんだから、きりきりやれ。」
「わかってるよ。・・・なあ、レイ。あれ、もうちょっとかかりそうだから、俺らも他の階を流そうぜ? 」
遠目に見ている限りは、まだ動きそうにないので、シンがエスカレーターのほうへ歩き出す。そうだな、と、レイも後を追う。贈り物をいろいろと考えるのは楽しいものだ。その時間は存分に楽しめばいいと思うから、邪魔しないように姿を隠すことにした。
作品名:こらぼでほすと 再来8 作家名:篠義