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Wizard//Magica Wish −8−

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「はぁっはぁっ」

雨の中を俺は傘すら刺さないで走る。次第に雨に体力が奪われ、普段であれば走ってもバテない距離でも息を切らしながらさやかちゃんの家へと目指していた。このまま、恭介の思いと仁美ちゃんの思いを無駄にしてしまってはいけない。全ては俺にかかっているんだ。さっきまでの出来事を さやかちゃんに伝えなくては!!

「あと…はぁっ…はぁっ…もうちょっと!」

「ハルトく~んっ!!!!」
「ハルトっ!!」

「はぁっはぁっ…え?」

疲労により霞む視界の先に3人の人影がこっちに向かって走ってくる。次第にシルエットが明確になり、誰が誰なのだか見当ついた。
杏子ちゃんと まどかちゃん、そして ほむらちゃんだ。
3人とも、俺と同じく傘すら刺さず、息を切らしながら何か焦っているように俺の元へと辿り着いた。

「どうした?3人とも」

「はぁっはぁっ…た、大変だよ!さやかちゃんが!!」
「落ち着いて まどかちゃん、さやかちゃんがどうかしたの?」

「さやかちゃんがっ!朝から家を開けて今も行方不明なの!!おばさんやおじさんも知らなくてっ!今警察も動いて見滝原市を全面捜索してるの!!」

「なんだって!!?」

「あいつの事だ!間違いなく魔女狩りや使い魔を狩っているに違いない!!」
「けど、美樹さやか は余分にグリーフシードを持っていないわ。今は3時過ぎ、もし朝からの連戦で今も戦い続けているのだとしたら…」

「相当穢れが溜まっている!…っ…あの馬鹿!」
「『ソナー』プリーズ!」
「俺は山間地帯を探してくる!皆は他をお願い!」

それぞれが再びバラバラになり、さやかちゃんの捜索作業が始まった。さやかちゃんが暴れる理由…おそらく、いきなり恭介に告白されて自分自身の気持ちの整理がおっつかなくなり、自暴自棄に暴れているんだろう。
そんなことしても、なんの意味はないのに!
俺は捜索魔法を使いさやかちゃんのソウルジェムの波動を探す。

「どこだっどこにいる!さやかちゃん!」

いくら走っても反応がない。
山道に入り舗装すらされていない道を走る。雨に濡れているため俺は何度も転んだ。服が汚れようが関係ない。早くしないとさやかちゃんが魔女に…。
それとも、もうさやかちゃんは…。

「…っ!…見つけた!!」

微かに、さやかちゃんの魔力の波動を感じ取った。きっと近くで戦っているのだろう。ここは以前狼型の使い魔と戦った場所だ。波動が大きくなっていく方向へと足を走らせる。すると目の前に結界があった。

「『ドライバーオン』プリーズ!シャバドゥビタッチヘンシーン!」
「変身!」
「『ランド』プリーズ!『ドッドッド、ド・ド・ドン!ドッドッド、ドン!!』」

勢いに身を任せ一気に結界内へと侵入する。すると目の前には無数に湧き出る狼型の使い魔と戦っているボロボロのさやかちゃんがいた。
地面はところどころ血が流れ落ちていた。きっとさやかちゃんのだろう。

「『バインド』プリーズ!」
「これぐらいっ!」

「…っ…」

鉄格子を無数に出現させ、狼型の使い魔を一匹残らず縛り上げた。そのまま俺はウィザーソードガンを一発も外すことなく全ての使い魔に命中させ、さやかちゃんの横に移動した。

「…あんた…なんで」
「こんなところで何してるの!」
「『コピー』プリーズ!」

ウィザーソードガンを複製させ、両手で使い魔を狙い打ちした。縛りあげた使い魔は抵抗すらできず次々と消滅していく。最後の一匹を撃ち落としたと同時に結界は消え去り、俺とさやかちゃんは変身を解除した。


「はぁっはぁっ…さやかちゃん、ソウルジェム…っ!!」

「なによ…」
「こんなに穢れて!それ貸して!」
「あ、あんた!何勝手に!!」

ソウルジェムを見たとき、俺は言葉が出なかった。
ソウルジェムは既にどす黒い穢れが満ちており、あとちょっとでも魔法を使用すればグリーフシードに変貌する一歩直前のところだった。俺は何も躊躇せず非常用にとっておいたグリーフシードで全ての穢れを吸い取り、元の綺麗な状態にした。

「…っ…そんなことしたって…何の意味があるのよ」
「さやかちゃん!こんなことして何の意味があるのさ!本当に魔女になるつもりだったの!?」
「別に良いじゃない!!あたしはもう人間じゃないんだから!!」


さやかちゃんは足元にあった木の枝を広い、俺に見せつけるかのように数歩後ろへ下がった。
「ねぇ…見てよ!こんな事しても、全然痛くないんだよ?」
「さやかちゃん?…っ!よせ、さやかちゃん!!」
「はぁっ…はぁっ…うあぁっ!!!!」
次の瞬間、さやかちゃんは尖った木の枝で自分の腹部に突き刺した。服から大量の血が滲み、地面に血が流れ落ちる。
「ははっ!…痛くない…全然痛くない!!なんで!?どうして!?うあぁぁぁぁっ!!!!」
手を休むことなく何度も何度も腹部に突き刺す。次第に口から吐血し始め、足がガタガタと震えていた。

「止めろ、さやかちゃん!!」
「は、離せ!離せよ!!」

俺は見ても立ってもいられず、さやかちゃんの手を無理やり掴みその行為を止めた。さやかちゃんは必死に抵抗する。
「離せっ離せぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「ぐっ…さやかちゃん!」
「離せっ!離せぇぇぇ!!!!離せっ…離せ……離せよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「…っ、いい加減にしろ!!」
「っ!!」

俺は木の枝を遠くへ投げ飛ばし、さやかちゃんに一喝した。こんなに感情を表に出したのは久しぶりだ。さやかちゃんは大きく目を見開き、棒立ちになってしまった。
「そんなに闇雲に暴れたって、どうにかなる訳ないでしょ!いい加減今の状況を受け止めなよ!!」
「うるさい…うるさいわよ…黙れよ」
「逃げるな、さやかちゃん。俺はもう全て知っている。さやかちゃんが恭介の事が好きだってことも、全部」
「っ…今更なによ。馬鹿じゃないの?あんたには関係ないだろ!!」
「関係なくても、もう知っちゃったんだから、どうしようもないだろ!」

「っ…馬鹿…本当に…あんたは…なんで私の事を…そこまで!!」
「当たり前だろ!!ほっとけないからだ!!」
「っ!!」


「なあ さやかちゃん…もう、こんなことは止めよう」


俺は さやかちゃんに手を差し伸べた。きっと さやかちゃんだって心の底からこんな破天荒な事は望んでいないはずだ。
「一緒に帰ろう、ね?」
「…訳わかんないわよ、全部自己完結して…私の気持ちなんか知らないくせに」
「うん、そうかもしれない。でも、さやかちゃんが自分から話してくれるんだったら話は別だけどね」
「…ったく、あんたってホント馬鹿ね」
「うん、昔から知ってる。ねぇさやかちゃん、一人でなんとかできないんだったら俺が一緒に手伝うよ、な?」
「…っ…じゃあ…」
さやかちゃんは落ち着いたのか、俺の差し伸べた手を握ってくれた。俺はちょっと安心した…


だが、事態はそれでは済まなかった。




「あんたが私をなんとかしてくれるって言うのなら、あんたがあいつの変わりになって」
「えっ…」






「んっ…」
「…っ!!」
俺の中の世界が一変した。
目の前が灰色になり、何が起こったのか理解できなかった。
理解できたのはそれから数秒後だった。
作品名:Wizard//Magica Wish −8− 作家名:a-o-w