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こらぼでほすと 再来10

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トレミーに残っている刹那とロックオンは、のんびりとベッドで寛いでいた。携帯端末には、律儀な元カレからのお祝いの言葉が、電子グリーティングカードで届けられていて、それを見て、ロックオンは微笑んでいる。
「なあ、刹那、おまえさん、兄さんにカードは送ったのか? 」
「いや、そういうことはしない。」
 地上に、その時期、降りていれば、言葉を贈るが、離れている時は何もしない。もちろん、親猫のほうも、同様だ。そこまで、マメな性格ではない。降りていれば、キラたちが周囲で盛り上がっているから、それで同調できるが、そうでないと気恥ずかしくてできないのだ。
「じゃあ、俺だけなんだ。」
「ああ、今年は、おまえの担当だったからな。」
 とは言っても、言葉を贈って、一緒にロックオンの故郷のビールで乾杯したぐらいのささやかなものだった。それでも、自分の嫁は満足なのか、昨日から終始、嬉しそうに微笑んでいる。丸一日、部屋に閉じこもっていたので、そろそろ空腹だ。酒とつまみぐらいでは、刹那の胃袋は満足しない。
「そろそろ、食堂に行かないか? ロックオン。」
「うん、そうだな。でも、その前に、キスしてくれよ? ダーリン。」
「おまえは、本当に甘えん坊だな。」
 ちゅっと刹那が口付けると、ロックオンも返してくる。こういうところが可愛いとは、刹那も思うので、自然と微笑んでいたりする。
「いつか、ふたり、並んで祝いができるといいんだが。」
「まあ、しばらくは無理だな。・・・・そうだ、メシ食ったら、軌道ステーションまで遠征して買い物しようぜ? おまえを着飾らせて、兄さんを驚かさないとさ。」
 四月になったら、刹那がニールのところへ降りる。寺の桜を一緒に見る約束をしているからだ。これも、今まで実現していない。その時に、ロックオンがコーディネートした服を着せて刹那を送り出すことになっていた。ロックオンからの誕生日プレゼントだそうだ。
「ん? 俺じゃなくて、おまえのものだろ? 」
「もちろん、買ってもらうけど。何度も軌道ステーションに行くのも、面倒だから刹那のも用意しようぜ。」
「まあ、それは構わないが。そういうことなら、シャワーを浴びろ。」
 すでに、刹那はシャワーを浴びている。ウダウダしていたのはロックオンのほうだ。今日と明日は休日にしてあるが、それでも軌道ステーションまでの往復となると時間がかかる。
「じゃあ、機体のほう準備しておいてくれ。あ、ダーリン、私服でな? 」
「わかっている。着替えて発進準備はしておく。」
 軌道ステーションで制服はいただけない。私服で、ぶらぶらと買い物するつもりで、ロックオンも起き上がる。基本、刹那の私服は民族衣装だ。それも同じ組み合わせときている。配色センスが皆無なので、ニールがいなくなって、それに固定したらしい。これからは、女房の俺のセンスで輝かせるぜ、と、うきうきとシャワールームへ脚を運んだ。




 二日の深夜から日付変更線越えで、はぴばをお祝いしてもらったニールのほうは、そのまま歌姫様の本宅に連行されて、そちらでドクターから定期検診を受けて、一日、ティエリアとアレルヤと、のんびりと過ごして、四日の午後から寺へ戻って来た。もちろん、あの騒動は坊主の記憶にはない。ただいま帰りました、と、挨拶したら、いつも通り、片手を上げただけだ。
 お祝いの貢物は、寺のほうへ配達されていて、居間の隅に、どかんと放置されている。大半はお菓子の箱だが、そうでないのも混じっている。
「どうしていいか、わかんなかったからさ。」
 整理するのも、どうかと思って悟空も放置していたらしい。誰からのものか判るように、ひとつずつに名前がシールで貼られている。ひとつずつ丁寧に包装を剥がして、ニールが確認する。
「三蔵さん、ペアのマグカップですって。」
「おう。」
「ああ、これ、悟空の好きなお菓子だ。さすが、アイシャさん。」
 じじいーずたちの贈り物は、基本、お菓子だ。これは、ほとんどが、寺に来る年少組によって消費されるので、そちらの好みそうなものになっている。
「おりぃにょは、これにゃ。そりぃから、しゃんじょーおみゃえにもにゃ。」
 自分の贈ったものをティエリアは持ち上げて、再度、ニールの手に渡し、それから新たな包みを三蔵の膝に置いた。
「おい、ちび、なんで俺のなんだ? 」
「おりぃのおきゃんがしぇわになっているからにゃ、しょのれいにゃ。ぺあにゃ。」
「僕のもそうです。はい。」
 アレルヤも、同じように三蔵の膝にブツを置く。どちらも柔らかいものではあるらしい。ペアって? と、思いつつ、寺の夫夫が、各人のを開いてみる。
「「はい?」」
 ごそごそと、包みを開いたら、ひとつはバスタオルだが、ひとつはエプロンだった。
「ペアルックっていうのがあるらしいから、それにしたんだ。夫夫なんだから、お揃いのがいいんでしょ? キラも、そう言ってたし。」
 どこかで、アレルヤは勘違いしているのだろうな、と、ニールはエプロンを手にして眉間に皺を寄せている亭主に、肩を震わせる。どちらも、手触りが良いし、包みは高級百貨店のものだから、値段もかなりするんだろう。
「アレハレルヤ、ティエリア、ありがとうな。バスタオルとかエプロンは消耗品だから、こんな高いのじゃなくていいからな。今度からは、そこのスーパーのにしてくれ。」
 もったいないから、と、ニールは、礼を言いつつ、そう頼む。それを聞きつつ、悟空は苦笑する。これでもまだ、高いという部類らしい。
「ママ、三蔵、俺のもペアルック。それ、もう捨てようよ、ママ。贈った俺が悲しくなるぜ。」
 大きな包みを渡して、悟空が、ニールの半纏を指差す。三年ほど前に、贈ったのだが、あっちこっち何度も繕い直しているので、かなり草臥れたものになっている。そして、三蔵のは、タバコの灰を落として、何箇所か穴が開いているのを、こちらも繕ってある。修理しているのは、ニールだ。悟空が贈ってくれた半纏は冬の必然アイテムとなっていて、大切に使っていた。
「でもさ、悟空、これ、着心地いいし、まだ使えるぞ。」
「ダメダメ。それは廃棄。これ、俺がバイトして買ったからな。前のより、いいヤツなんだ。ほら、チェンジしてっっ。」
 この短期バイトの稼ぎで、悟空は、それを買った。強引に、ニールの半纏を脱がせて、新しいのを着せる。三蔵のほうは、勝手に着替えている。色違いの半纏は、軽くて温かいもので、以前ほど、ごついものではない。
「じゃあ、僕のも。」
 アレルヤも、いそいそと包みから取り出して、ニールの背中からエプロンをかける。ついでに、三蔵にもかけてしまうのが、アレルヤの天然なところだ。エプロンをした三蔵なんて、悟空でも初めてだ。似合わないこと、この上もない。そして、可哀想な被害者が、廊下で窒息しそうになっていた。何の不幸か、ダコスタが、アイシャに頼まれてお使いに来ていたのだ。
「おまえ、何してんの? ダコスタ。」
 そして、被害者その二は、寺の居候だ。廊下で転がっているダコスタを横目に居間に入ったら、その場で窒息した。シンプルなエプロンと、アレルヤとティエリアは言っているが、それでもぴらぴらとしたものだったからだ。それも、小紫なんていう色を坊主がつけている。
作品名:こらぼでほすと 再来10 作家名:篠義