ラブ・プルーフ
その4
「これでようやく確信できた」
見上げたウサは、重いであろうトラの身体を支えたまま妙に清々しい顔をしている。
「…?」
「やっぱりオレは、お前に欲情してた」
ウサがとうとう壊れた。でなければ、さきほどのソフトがリンクしていたウサにも影響があったのだろうかと鈍った回路で思考していると、トラの目の前が陰って唇に何かが触れる。要するに、キスをされたのだ。
「お前が好きだ、トラ」
「……」
急展開に反応できず、呆然としていると再びキスされそうになって、トラは咄嗟にウサの口元を手のひらで押さえた。
「エラーが出ているんじゃないのか? だってお前は…」
虎徹が好きなんじゃないのかと続けようとする前に、あまり力の籠っていなかったトラの腕はウサに掴まれる。
「これはエラーじゃない。上書きだ」
「上書き…?」
「好きの感情がコテツからお前に上書きされたんだ。だからお前も、オレを好きになればいい」
随分と勝手な事を言った口が、今度はトラの手の甲に触れた。上目使いの瞳は自信に満ちていて、トラは目を逸らす。アンドロイドがアンドロイドを好きになるなんて。
「そんなの、無理だ」
「……ゆっくりでいい」
否定しても返る声は穏やかで、あやすように背中を撫でられたトラはそのまま身を委ねる。どうしていつもそう先に進んでいけるのか、また訊きそびれてしまった。