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欠ける

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「いいじゃん。ままごとで。ずっと俺とままごとしててよ」
「……俺たちには、それがお似合いかもな」
 笑いかけると神代の笑みが深くなって、手を握ったまま、またぽすっと肩に頭が預けられた。じわじわと染み透って馴染んでいく体温を感じながら、俺も黙って神代の肩に顔を埋める。
 神代につけた傷もいつか癒えて消えるし、絆創膏なんてどんなに大事にしたって薄っぺらくて脆い、取るに足らないものだから、俺たちはずっとままごとのままなんだって、きっとお互いにわかってた。
 俺たちの上を滑っていく誓いは二人の間でわだかまるだけでどこにも繋がらない。信じられないのもきっとずっと一緒にはいられないって思っているのも俺が思っていることに違いない。そう思ってしまうようになったのは、いつからだろう。
 気軽に相棒と呼んだ日々が今は痛い。ただの相棒で、親友だったら。ここまで複雑な関係にさえならなければきっとこんな想いをすることはなかった。……それ以上になったからこそ痛い想いをしてるんだってわかってる。そういえば、最近その言葉は使い難くなっちまった。神代からもずっと呼ばれてない。本当は呼びたい。最初は助けられた俺が一方的に呼んでただけだったのに、いつからかお前からも呼び返されるようになったとき、途方もなく嬉しかったんだ。それなのに、変わってしまった俺たちの関係はあんまりにも曖昧で、「相棒」という名前で呼ぶことだって躊躇するようになっちまった。どうしてこうなっちまったんだろう。なあ、神代。お前は本当はどう思ってんの。そう聞いたって、答えは絶対返って来ないって、知ってんだけどさ。
 ふと顔を上げた神代の銀のまなざしを、何かを確かめるように覗き込んだ。
何でこんなに痛いんだ。この痛みがもし神代にもあるんなら、もしかしたらこの恋は、……だめだ。何、考えてるんだろ。自分の気持ちさえわからない俺は、神代の痛みを取り除いてやることなんて到底できないってのに。
どこか悲しげな色を隠すようにゆっくりと閉ざされる瞼を見詰めながら、静かに唇にふれるだけのキスを落とす。ちゅ、というひそやかな音をきいてなめらかな頬を唇で辿ってたどりついた目元は、すこしだけ塩辛い味だった。
作品名:欠ける 作家名:もちねこ