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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 6

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第20章 誓


 ロビンの心に言葉が投げ掛けられた。
――貴様、オレの邪魔をしたな?――
 真っ暗な世界にロビンがただ一人立っている。
「誰かいるのか?」
 ロビンは声の主に訊ねた。
――分からぬか?オレはいつもお前の中にいる…――
 声の主は自分と同じ声色をしている。
「オレの、中に…だと?」
――分からぬならば、姿を見せよう…――
 ロビンの目の前に人の姿が現れた。しかしほとんど闇に包まれており、顔までは確認できない。目だけが赤く光っている。
 人影はエナジーを使った。エナジーの光が一瞬ロビン達を照らした。
「そんな…、バカな!」
 照らされた人影は金髪で身の丈ほどあるマフラーを身に着けている。髪型、服装ともにロビンと同じであった。
 ただ一つ、赤く光る目だけが違っている。
「お前は、オレ…なのか?」
 赤く光る目が歪んだ。エナジーの光は既に消え、相手の光る目しか見えない。――そうだ、オレはお前だ――
「…お前、さっき邪魔したな、って言ってたけど何のことだ?」
――貴様の体はオレのものだ。なのに貴様はオレがあの女を殺すのを邪魔した――
「オレの体はお前のものだって?一体何を言って…」
 影のロビンがロビンの首を掴んだ。
――貴様の命とオレの命は違う。貴様が死んでもオレは死なん。こうして殺してから貴様の体を貰ってもいいが、それではオレのものになった時、傷物の体を受け取る事になる。それはごめんだ…――
 影のロビンは手を離した。ロビンは咳き込んでうずくまった。
――貴様の命が危うくなるような時、オレはまた現れよう。死ぬことは許さぬ…――
 ふはは、と笑い声を残しながら影のロビンは消えていった。
「待て、待て――」
 辺りは再び完全なる闇に包まれた。
    ※※※
「…っは!?」
 ガバッとロビンは布団を払いのけ、体を起こした。
「…夢?」
 ロビンは辺りを見回した。立派な石造りの壁で部屋は造られている。更に壁には高級な絵画が掛けられている。
 ここがバビ宮殿だと分かるのに時間はかからなかった。
 ロビンはベッドの横を見た。するとジェラルド達が椅子に座り、眠りこけていた。
 ふと、柱時計を見た。時刻は朝の九時を指していた。
――オレはどうしてここで寝ていたんだろう?――
 何も思い出せない。コロッセオの二回戦が終わって、それ以降何をしていたのかまるで思い出せない。
「う…ん…?」
 横で椅子に座ったまま眠っていたメアリィが目を覚ました。
「あ、ロビン、目が覚めたのですか?」
「ああ、ついさっき」
 続けてイワン、ジェラルドが目を覚ました。
「ロビン、やっと起きましたね…」
 イワンは言い、欠伸をした。
 ロビンは少し思い出し、訊ねた。
「そういえば、コロッセオは?」
「んなもんとっくに終わったよ」 ジェラルドが答えた。
「え、じゃあ決勝は?」
「お前の勝ちだよ。何かお前、すんごく恐い奴になって、リョウカを圧倒したってのに、何にも覚えてないのか?」
 すごく恐い奴という言葉にロビンは気がかりだった。そういえば夢の人物も恐かった。彼のようになっていたとでもいうのか。
 話そうかと思ったが、それは夢の話、信じてはもらえないだろうと思い、話さなかった。
「ところでロビン、もう体は大丈夫ですか?」
 イワンは訊ねた。
「う〜ん、まだ少しだるいかな…」
「だるいだと!?」
 ジェラルドは怒鳴った。
「お前丸々二日間も寝てたから寝過ぎで体が重いだけだろ!」
 ロビンがきょとんとしているとメアリィがジェラルドに向かって首を横に振ると、ジェラルドはすまなそうにした。
「怒鳴ったりして悪かったな」
「いや、いいんだ。二日間も眠ってたってんじゃ心配かけただろう。そういえば、リョウカは?」 ジェラルドはロビンの隣のベッドを指差した。
 きちんと整えられた布団の中でリョウカはすやすやと眠っていた。
「リョウカも起きないのか?」
「ああ、ずっと眠ったままなんだ」
「やっぱり傷が酷いのか?」
「いや、すぐに治療したから体はもう大したことないんだ。でも、何かに怯えるようなうわごとを言ったりするんだ」
 ロビンはジェラルドの言葉が気にかかった。また、ロビンが恐ろしい者のような事を言っている。
 ロビンの心に気付いたのか、ジェラルドは訊ねてきた。
「なあロビン、お前決勝戦のこと本当に覚えてないのか?」
「決勝戦…」
 ロビンは記憶を遡ってみる。
 最後の競走でリョウカに敗れ、その後すぐに戦った。何度も刃をぶつけ合い、エナジーの撃ち合いになった辺りまでは思い出せた。
 しかしそれ以降、リョウカに強力な技を受けた後は定かではない。
「ここまでしか思い出せない…」 あっ、とロビンはさらに何かを思い出した。
「確かオレはリョウカの技を受けた後に光の剣で串刺しになったリョウカを巨大な剣で貫こうとしていた。空中じゃ動けなかったけど、どうにか体をひねって直撃を避けたんだ」
 その時はまさにロビンが正気を取り戻した時である。
「そうでしたか、だからあれほどの攻撃を受けたのに傷が意外と浅かったのですね」
 メアリィは納得したように言った。
 ロビンは誰にともなく訊ねた。
「オレ、本当にそれまでの間どうなっていたんだ?」
「さっきも言ったけど、恐ろしい奴になっていた。まるで別人だったぜ。あの赤い目に睨まれたら怖くて足が竦んで動けなくなる」
 赤い目、ジェラルドの言っているのはやはりあの人物のようだった。
 ロビンは先ほど見た夢を話すことにした。
「みんな、聞いてくれ」
 ロビンは改まって話し出した。
「どうやらオレの中に、オレの知らない自分がいるみたいなんだ…」
 真っ暗な世界で、自分と瓜二つの人物と出会い、自分の中にいると告げられたこと。
 自分の体を狙っているということ。そして、ロビンの命が危うくなった時、また現れると。全てを伝えたつもりだった。
「ジェラルドの話を聞いてから、どうもただの夢とは思えないんだ」
「けど、どうするんだよ。その話が本当だとして、これから先また奴が出て来るかもしれないんだろ?どうやって防ぐつもりなんだ」
「分からない、でも奴はオレの命が危なくなったときに出て来ると言っている。命を危機に晒さなければ…」
 ロビンは言い換えた。
「逆に言えばオレは奴がいるかぎり死ぬようなことはないってことだ」
 ロビンは不謹慎な事を言ったのか、ジェラルド達が怯え始めた。それもそうだ、彼らはロビンの恐ろしい姿を見て、ジェラルドに至ってはリョウカの次に殺すとまで言われたのだ。彼らの反応は実に正しかった。
「大丈夫だよ。奴にオレの体は自由にさせない。また奴が現れる事があっても必ずオレ自身の心を取り戻す」
 ロビンは自身の胸に触れた。そして誓いを立てる。
――オレは、お前なんかに負けない!――
 ロビンはベッドから降りた。
「もう起きて大丈夫なんですか?」
 イワンが訊ねた。
「ああ、二日も寝たらもうこの通り!」 ロビンは体を伸ばし、体操までやってみせた。
「さあ、後はリョウカが起きるのを待って、旅の準備をしよう」
 ジェラルドはふと、思い出したように言った。
「そういえばよ、バビがコロッセオが終わったら会いに来てくれって言ってたよな?」