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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 7

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第24章 悲運の戦士達と新たな旅立ち


 激しい血戦が終わり、辺りは静まり返っていた。
 微かな風が吹き抜ける、風はヴィーナスの灯火を揺らした。
 緑色の灯火は燃え続けている。世界を破滅に導くという錬金術の種火たる火が静かに燃えている。
 沈黙を破るようにジェラルドは口を開いた。
「勝ったんだな、オレ達」
 ロビンは俯いた。
「確かに、勝負には勝った。しかし…」
 その続きをイワンがした。
「灯台が灯ってしまっては、ボク達の負けに等しいですよ…」
「何を言ってるんだよ!」
 ジェラルドが大声を上げた。
「オレ達精一杯頑張ったじゃないか、頑張って戦ったじゃないか!」
 ジェラルドは灯火を一瞥した。
「確かに、灯台は守れなかったけど、奴らは死んだ。もう戦いは終わったんだ」
「いや、まだだ…」
 リョウカが言い放った。
「まだ奴がいる」
 奴って誰だよ、ジェラルドが言いかけた瞬間、リョウカは大声でそれを呼んだ。
「シン、出てこい!」
 リョウカの向かいにある階段を上って、シンが現れた。
「やれやれ、お前にはかなわねえな」
 シンは観念したように苦笑し、溜め息をついて後頭部を掻いた。
「忍のお前が気配を隠さんとは、よほど私が心配だったか?」
「まあな、出来の悪い妹だからな」
 妹という言葉にロビン達は驚いた。シンとリョウカが兄妹だった事を初めて知ったからだ。血が繋がっていない事までは知り得なかったが。
「ふん、妹か、あの日以来お前とはそういう縁は切れているはずだ」
「それもそうだな、今のオレはただの反逆者、そしてリョウカはそれを討つ討滅者、か…」
 シンは上空を眺めた。妙に開き直っている。
「で、やっぱりオレを殺すんだろ?」
「当然、と言いたいところだが、もういい。逃げろ」
 シンは驚いて目を丸くした。それは何故か、問うとリョウカは答えた。
「地の灯台が灯り、恐らく魔龍は復活する。しかし、同時にあまくもの剣も手に入った。だからもう、オロチが復活しても再び封印する事ができる。もうお前は死ぬ必要はない、村外追放で償いは十分だ」
 二度と私の前に現れるな、と付け足し、リョウカが背を向けた瞬間、シンが武器を取った。
 リョウカは殺気を感じてシンに向き直った。
「…何の真似だ?」
「悪いが、オレはそんな半端で終わる気はねえ。そもそも、オレは半端な事が嫌いなんだよ。分かってんだろ?」
 シンは二本の短剣を手中で回し、構えた。
「オレは村を守るため全てを、命さえも捨てて反逆した。もう、オレに失うものは何もない」
「シン…!?」
 リョウカはとっさに抜刀した。鋭い金属音が辺りに響いた。
 シンは刃越しに言う。
「リョウカ、オレはお前を殺すことも恐くない」
 シンの目つきが変わった。全てを捨てたと言うのは強ち嘘ではない、人とは思えない恐ろしいものに変化した。
「お互いにもう鬼ごっこは終わりにしようじゃねえか。どちらかの死を以て終わりにするんだ」
 リョウカは刃を押し返した。
「そうまで言うなら私ももう容赦しない、討滅者として、シン、貴様を討つ!」
「おい、リョウカ!」
 ロビンは引き止めようとした。
「みんな、これは私の戦いであり、使命なんだ。だから、手出ししないでくれ…」
 リョウカは振り向かず言った。
「シン、覚悟はいいな…」
 風がリョウカの真紅の髪を揺らす、それは揺らめく炎のようだった。
「ふ、覚悟なんざ村を出た時とっくにしてるぜ」
 シンは両手にそれぞれ持った短剣をリョウカに向けた。
 お互いに構えたまま一歩も動かない、間合いを取って様子を窺っていた。どちらもどんな技を使い、どんなエナジーを持っているのか知り尽くしている。故になかなか手出しできずにいた。
 途端に強い風が吹き付けた、二人は動かない。
 上空を鳥が飛んでいた。強風に当てられ、沢山の羽根を撒き散らした。その内の一つがリョウカとシンの間に落ちていく。
 羽根が両断された。シンの剣か、リョウカの剣か、見ることはできなかった。しかし、それが新たな血戦の始まりとなった。
「うおおお!」
「やあああ!」
 二人は叫びを上げ、激しくぶつかり合った。
 二人の剣は凄まじい速さである。お互いに刃で攻撃を受け止め、隙を突き反撃している。しかしその反撃さえも防ぎ、新たな攻撃の糸口としている。
 二人の刃がぶつかり合う度に火花が散る。同時に発せられるエナジーの波動が風を巻き起こし、二人の戦いの激しさを物語っていた。
 二人は刃を滑らせ距離を取った。
『フレアストーム!』
『爆浸の術!』
 互いの炎が轟音を立てて爆発を起こした。煙が二人の視界を塞いだ、しかし、彼らには視界などなくても相手の動きは分かる。
 シンが煙の中から飛び出した。
 バカめ、心中で呟くとリョウカの姿が残像を残し、攻撃を空振りして隙を晒したシンの背後へ回った。
「転影刃!」
 リョウカは抜刀し、シンの背中を斬ったかに思えた。しかし、リョウカの刀には風を斬るように手応えを感じない。
「まさか!?」
 シンの姿が残像を残し、上空へ伸びていった。そして、リョウカの背後で何かが着地するような音がした。
 シンが長い黒髪を揺らし、着地する音だった。
「転影刃」
 リョウカはシンの放つ殺気を感知して一瞬で振り返り、シンの刃を受け止めた。シンの力にリョウカは後ろに吹き飛ばされ一回転して着地した。
 二人の視線が交じり合う。
「まさか、あのような方法で転影刃を返すとはな…」
 リョウカは言った。
「へ、転影刃を使えるのはお前だけじゃねえんだぜ」
 シンは笑っていたが、内心驚いていた。
 幼い頃、二人で剣の練習をしているとき、この技を使う度にリョウカは防ぐことができず文句を言っていた。
 そんな彼女が今、転影刃を防げるようになっている。何が彼女を強くしたのか、シンは驚く反面、感慨深かった。
「どうした、かかって来ないのか?」
 リョウカが言った。
「そう焦るな、勝負はまだ始まったばかりだろう!」
 シンはリョウカ目掛けて駆け出した。その瞬間、リョウカは刀に力を込め、抜き放つと同時に刃からエイヤを放った。
「飛鳥刃!」
 エイヤは真空の刃となってシンに襲いかかった。
「なっ!?」
 間合いの外からの予期しない攻撃だったが、シンは両手の短剣をクロスさせて防いだ。
 受け止めきれなかった真空の刃がシンの肩を切り裂いた。
 これは見たことのない技だ、シンは流れる血を手で拭いながら思った。もちろん、幼い頃二人で練習した剣技にこんな技はない。となると自分で編み出したのか。
 シンは手に付いた血を舐めた。
「不用意に飛び出すと痛い目にあうぞ、間合いの外でも油断するな」
 シンは言葉にはっとなった。この言葉は昔シン本人がむやみに立ち向かってくるリョウカにエナジーで返り討ちにした時に言った事と全く同じだった。
 技を自分で編み出すだけでなく、説教までできるようになったとは。
 シンは何かを確信した。
「お前に教えられるようじゃ、終わりだな」
 何故か表情は穏やかだった。一瞬、目つきが優しくなった
 シンがふ、と笑みをこぼすと再び打ち合いが始まった。
 シンの攻撃をリョウカは的確に防ぎ、または回避して反撃してくる。それは段々と速さを増していく。