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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 7

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第22章 怒り


 様々な思いが交錯する中で、ロビンは遺跡を進んだ。
 さすがに古代の遺跡というだけあって、施された仕掛けは複雑だった。しかし、そんなものはどうでも良かった。
 今回は絶対に会うことになる。そんな気がしてならないのだ。
 旧友のガルシアに、である。マーキュリー灯台では見ただけで、会って言葉を交わすという事はできなかった。
 何故ガルシアはサテュロス達の味方をしているのか、何故ハイディアの民である彼が灯台の解放に加担するのか。そして、どうしてジャスミンもスクレータも止めようとしないのだろうか。
 様々な思いが募る。
 もしも今回、ガルシアに会うことになったらどうなるだろう。やはり、灯台を灯そうとしている以上戦いは避けられない。その時は倒せるのか、幼い頃連れ添った親友と戦うことなどできるのだろうか。
 ロビンにはまだその覚悟は出来ていなかった。むしろ、そんな覚悟をする事の方がよっぽど恐ろしい。戦う事になるというのは親友を殺す事に他ならないのだ。
 ロビンは不安に押しつぶされそうだった。出来れば今度もガルシアには会いたくない、もちろん敵としてである。
 友として、親友としてならば会いたい。三年前に死んだと思っていた親友が生きていたのだ。それが今、言葉を交わすことさえできない。
 言葉一つ交わせず、ガルシアが灯台の解放に加担する理由も分からず敵対し続けるのは嫌だった。
 ガルシアがもしもサテュロス達のようになっていたとしたら、それならば倒さなければならない。しかし、あの時、マーキュリー灯台ですれ違った時、ガルシアがそんな悪人になっているようには見えなかった。むしろ、仕方なしにやっているようにも思えた。
 ヴィーナス灯台で会うことになったならば、ガルシアは話してくれるだろうか。彼が灯台を灯さなければならない理由を。そして、まだ自分を友達と思っていてくれているのかを。
 地下遺跡を進んでいき、やがて螺旋状の上り階段に辿り着いた。
 これまでの道で階段などなかった。ということは必然的にこの階段で地上へ上がる事で、その先のヴィーナス灯台に辿り着くのだと、ロビンは確信した。
 ロビン達は階段を上った。
見た目以上に長い階段である、上り終えると軽く息切れをするほどだった。
 階段を上り、出た所は部屋である。薄紫の壁は見覚えがあり、部屋の中心の床には自然を象徴するする樹木の絵が描かれていた。
「ここが、本当のヴィーナス灯台…」
 ロビン達は進み出した。地の灯台だけあって、仕掛けは流砂など砂でできたものがほとんどだった。砂を足場として向こう側へ渡ったり、流れる砂の中から道を探し出すなど砂ばかりだった。
 レリーフから発せられる地のエナジーが扉の鍵となっている仕掛けなどもあり、床のエナジーが流れるケーブルが途切れている所を直して流してやるなど変わったものも多かった。
 そして、灯台も奥に差し掛かると、宙に浮く台があった。
 台は人がちょうど五人ほど乗れそうな広さであった。
 ロビン達は迷わずその台に乗った。ロビンは全員が乗ったのを確認すると、念じた。
 台がロビンのエナジーに呼応し、光の粉を発すると、その粉を散らしながら上へと動き出した。
    ※※※
 エナジーが発動された。
『ムーブ』
 ガルシアの手の動きに合わせてレリーフが動かされ、壁に施されたスイッチに重なった。
 壁と壁の間に発生していた結界が消失した。
「これでよし、ジャスミン、スクレータ、シン、早く出島へ行くんだ」
 ガルシアは側の階段で上へ戻ろうとした。
「待って兄さん、本当に行くの?」
 ジャスミンは引き止めた。
「当然だ。シバが捕らわれているんだ、このまま行くことなどできない」
 ガルシア達はサテュロス達に命じられ、山脈を越えた先の出島の船へ行く所だった。
 しかし、サテュロス達はシバだけを自分達で連れると言い出し、シバだけ灯台の頂上に残っている。
 サテュロスはシバは必ず守るなどと言っていたが、ガルシアは信用できず、頂上へ戻り、シバを連れ戻すと言い出したのだった。
「しかし、行くにしても一人で行くことはないじゃろ」
 スクレータは言った。
「いや、俺一人でいい。みんなは早く出島へ行くんだ」
「待て、オレも行くぜ」
 シンまでもが戻ると言い出した。
「何を言うんだ、お前にはジャスミン達を守ってもらわなければ…」
「大丈夫だ、そういう役はあいつがぴったりだ」
 シンは何も、誰もいない所を見て言った。
「アレクス、そこにいるんだろ?」 すると、水泡が集まり、人の形をなしていった。それは苦笑いである。
「私の術を見破るとは、驚きましたね」
「へっ、忍者をなめるなってんだ!」
 シンは得意そうに鼻を人差し指で擦った。
「アレクス、オレ達の話は聞いてたんだろ?」
「ええ、残念ながら全て聞かせてもらいました」
「立ち聞きなんて悪趣味な事しやがるな。だが、特別サテュロス達にチクろうって気もないようだな?」
「ええ、こうなるような気はしていましたから」
 アレクスは不敵な笑みを浮かべる。
「ガルシア、シン。行くならば急ぎなさい。彼らはシバを人質にしているのです」
 なんだと、とガルシアは驚いた。
「彼らもそこまで馬鹿ではなかったようで、ガルシア、あなたがだんだん自分達に反抗し始めているのが分かっていたんです。だからあなたに言うことを聞かせるため、シバを人質にしたのですよ」
 シンは拳を固く握った。
「なんて奴らだ…」
 ガルシアは急いで階段を上っていった。
「お、おい、ガルシア!」
 シンが制止するのも聞かず、ガルシアは上の階へ行ってしまった。
「シン、あなたも早く追いかけた方がいい」
「ち、じゃあアレクス、ジャスミン達は任せたぞ!」
 シンも階段を駆け上っていった。
「兄さん達、大丈夫かなあ…」
 ガルシア達が戻っていった後、ジャスミンが呟いた。
「シンが付いとるんじゃ、きっと大丈夫じゃろ」
 スクレータは宥めた。
「何だか胸騒ぎがするのよ。何か良くない事が起こるような…」
「ジャスミンらしくない…」
 アレクスがひっそりと呟いた。
 本当に小さな声だったというのにジャスミンは聞き取った。
「どういう意味?アレクス、私らしくないって」
 アレクスは苦笑しつつ答えた。
「いえ、意外だっただけですよ。あなたから胸騒ぎなんて言葉が出たのが」
 ジャスミンはむっとした。
「何よ、私が気が強いとでも言いたいの?」
「いえ、決してそんな事は…」
「じゃあ何だって言うのよ!」
 ジャスミンは尚も食い下がる。
「まあまあ、ジャスミン、ガルシアが心配なのも分かるが、そんなにアレクスに突っかかる事もないじゃろう」
 スクレータに宥められ、ジャスミンはひとまず黙った。
「そういう意味に取られたのであれば言い方が良くありませんでしたね。この通り、謝りましょう」
 アレクスは頭を下げた。
「…もういいわよ」
 アレクスは微笑んだ。
「良かったです、許してもらえて」
 アレクスは身を翻した。
「さあ、間もなく灯台が灯るでしょう。急いでここを離れるのです」
 ジャスミンとスクレータはアレクスに連れられ、灯台を出る事にした。出島の船を目指して。
    ※※※