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昼食ランデブー

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「グリム童話のヘンゼル君は、妹のグレーテルが助けてくれたけどぉ〜。兄と妹を《一人二役》でこなしてた竜ヶ峰さんちの帝人君は、それから一体どんな物語を展開させたのかしらぁ?」

 にやにやと人の悪い笑みを浮かべて、「やっぱり原作と筋書きは一緒で、みかプーがもう少し育つまで、我慢が出来なかったのかなぁ〜シズシズは?」と、軽いおふざけ口調で狩沢が鎌を掛けてみれば、面白い位に激しく動揺した帝人が、耳まで真っ赤に染まった顔を恥ずかしそうに俯けた。

(ああ…食べられちゃったんだ…。)
(食べられちゃったんっスね〜、とうとう…。)

 成熟するまで待ち切れず、果実がまだ青いうちに食べてしまった困った男に、一同の生ぬるい視線が集中する。

「な、何だよ。一応《食べ頃サイン》が出るまでは、ちゃんと辛抱したぞ」

 やっと“中身”が年相応の思春期レベルに到達してくれたのに、このうえ生熟れの身体が成長し終えるまでなんて、悠長に『お預け生活』続けてられっか!と、静雄は恥も外聞も無くぶっちゃける。
 開き直りの態度を見せる男に、「食べ頃サインって、どんなだよ!」と突っ込みたい衝動に駆られたが、何だかヤブヘビになりそうだったので、興奮する狩沢を抑えて口を噤ませた男性陣だった。

「どうやら、あまり肉付きが良くならない体質みてぇなんでな。こいつの体重増やすのは諦めた」

 その代わり、せめてスタミナくらいは付けさせてやろうと、最近は、滋養強壮に留意して、なるべく精が付きそうな物を摂らせる様にしてるのだと、門田らに近況を伝える静雄の腕の中で、もぞもぞと帝人が身動いで、やおら後ろを振り仰ぐ。

「僕が太りにくい体質なのは、本当かも知れませんけどね?前より食べてる割には、ちっとも体重が増えないのは、半分くらい静雄さんにも原因があるんですよ〜」

 拗ねた眼差しで軽く睨みながら、意味深なセリフを唇に乗せた帝人に、あらぬ妄想を掻き立てられた狩沢が、遊馬崎の制止を振り切ってはしゃいだ声を甲高く上げる。

「ちょっ…それ!みかプーが太れない原因が、シズシズにあるって、どぉいう事っ!?」

 もっと詳しく教えてっ!と、目を輝かせて詰め寄る狩沢の気迫に、ちょっぴり怯えて縮こまりつつも、帝人は先を促されるままに、おずおずと口を開いて理由を述べた。

「え、え〜っと…要は、単純な計算なんです。摂取したエネルギーより、消費させられるカロリーの方が大きかったら、どんなに頑張って食べたって、体重なんか増えっこないと思いませんか?」

 せめて、静雄さんがもう少し控えてくれたら…と紡ぎかけた告白は、帝人の口を慌てて覆った静雄の手が途中で遮って押し止めた。が、同棲生活の“お盛ん”な実態は、既に暴露されたも同然だった。

 ――何とも言えない微妙な空気が、再び彼等を包み込む。

 暫しの沈黙の後、最初にリアクションを起こしたのは、感極まって完全に弾けた狩沢だった。

「ふっ、深読み発言だけで、この私をここまで萌えさせるなんて。みかプー…恐ろしい子!!」

 月影千草になりきって、いきなり『ガラスの仮面』ごっこを始めた、狩沢の突拍子もない奇行にぎょっとして、静雄は威嚇モード全開で、抱きかかえた帝人の口を片手で塞いだ体勢のまま、じりじりと後ずさって距離を取る。
 どう見ても、追い詰められて少年を人質に取った《逃走中の凶悪犯》にしか見えない男と、はぁはぁと荒い息を切らしながら、陶然たる面持ちで不気味な忍び笑いを漏らす《危ない女》と――果たして、どちらがより一層、世間の目には《怪しい人物》に映るのだろうか…。

 事態を混乱に陥れた張本人のお子様が、つぶらな瞳をぱちくりさせて門田ら三人に視線を寄越す。

(ああ…盛大な“お惚気”ぶちかましてくれた自覚、まるっきり無ぇな。きょとんとしたあの顔は…。)

 目と目が合った帝人に、虚ろな作り笑いを車内から覗かせて、渡草はぼんやりと独り言めいた呟きを落とした。

「別に、他人の幸せをやっかむ程、今の生活に不満がある訳じゃないけどよ〜」

 どこか羨ましげな眼差しで、夜な夜なハッスルしてるらしい男を眺め遣る渡草に続いて、遊馬崎も緩慢な動作で帝人に軽く手を振ってやってから、しんみりした口調で小さく零す。

「まさか、札付きの《自動喧嘩人形》相手に、あの常套句を使う日が来るとは、思わなかったっスねぇ〜」

 遊馬崎が持ち出した戯れ言の後を引き取り、最後に門田が、慈しむように帝人のあどけない瞳と絡ませた視線をそっと和らげながら、「とりあえず、あの果報者には、野次の一つも飛ばしてやるか」と、苦笑混じりに低く漏らした。
 あんな、食べちゃいたいくらい可愛い恋人と、夜毎よろしくやってるような《幸せ野郎》は、すべからく仲睦まじさを当てられた者の非難を受けるべし!!

 互いに目配せして渋く頷き合ってから、門田ら三人は口を揃えて“お約束”を吐き捨てた。

「「「リア充爆発しろ!!」」」

   * * *

 ワゴン組の皆は、年下の帝人を《末っ子》扱いで、兄(姉)として猫っ可愛がりしてれば良い。
作品名:昼食ランデブー 作家名:KON