こらぼでほすと ずっと先の話あれてぃえ編
待っている、と、約束した。ただし、待っている時間は、いつとは断定できない曖昧なものだった。あれから、いろいろと考えて、傍に居たマリーに相談したら、提案をひとつされた。
「ねぇ、アレルヤ。待っていたいのなら、そうすればいいわ。私は、それでいいと思うの。ひとつだけ、私の願いを聞き届けてくれるなら、許してあげる。」
僕にとって、それは大したことではなかったから、マリーの言う通りにした。そして、ヴェーダに向かった。リジェネのほうも、「なんとかしてあげるよ。そうでないと、ティエが寂しいだろうからね。」 と、僕の願うようにしてくれた。
ロックオンは、待つとは言ったものの、僕と同じ方法は使わないと言った。自然のままに待つのだと言った。
「別にいいんだよ。間に合わなくても、俺は転生して戻ってくるつもりだからさ。ぐふふふふ・・・・ピチピチの若者で刹那とアレやコレやとやったら楽しそうだ。」
ロックオンの死生観というのは、輪廻転生という考え方であるらしい。だから、そんなふうに考える。たぶん、それもあるのだろうけど、気にしていたのは、残っている実兄のこともあったのだろう。待っている、と、約束したニールは、本当に待っているからだ。そのニールとの時間も大切にしたいから、ロックオンは、そのまま残った。
・
・・・・・・そういう意味では、僕は自分勝手なのかな・・・・・・
・
眠る瞬間に、ふと考えた。
・
・・・・・・おまえと、あいつらとは違うってことだ。気にするな。おやすみ、アレルヤ・・・・・
・
僕の片割れが、そう言って笑った気配がした。待っている、という約束が、僕にとって一番大切なものだった。他のどんなものよりも、優先した。だから、待つために、この選択を選んだ。
もし、会えなくても、このまま眠っているだけなら、心は穏やかだ。会える時まで、僕は眠っていればいいのだから。
・
・
・
アレルヤ、と、声をかけられた。そこにはホログラフではない実体の相手がいた。離れた時と寸分変わらない姿の相手は苦笑している。
「・・・・やあ、おかえり・・・・・」
「きみはバカか? 職務放棄して優雅なことだ。」
「・・・・うん・・・・でも、待っていたかったんだ。きみと、もう一度、旅行がしたかったから。」
あのまま、時間の流れに乗って待っていたら、以前のようなことはできなくなっていただろう。下手をすれば、待っていられなかったかもしれない。だから、一番可能性の高い方法を選択した。他のシガラミなんてものを全部、不義理にしても、確実に待っていたかったのだ。それだけが、僕の望みだった。
「リジェネから、それは聞いた。・・・・・ただいま、アレルヤ。待たせてすまなかった。ようやく、エルスのことは片付いた
。これで、地球に被害はなくなったから、僕も、しばらくはゆっくりできるだろう。」
「・・・刹那は? 」
「アザディスタンに降りた。たぶん、それから、ロックオンのところだろう。」
「え? ロックオン、生きてるの? それとも転生したの? 」
「生きてるぞ。まあ、老人という年齢ではあるがな。」
ティエリアは、エルスの本星から帰還してヴェーダ本体に戻った。地球時間で五十年という時間が経過していた。地球は、いろいろと様変わりしていた。それを把握するために、しばらくデータの吸収を優先した。そして、その過程で、アレルヤのことも把握した。
そういう選択肢があったか、と、驚いたが、当時のアレルヤのことをリジェネから聞いて納得もしたし、アレルヤが愛しくも感じられた。抱きしめたい、一緒に生きていたい、そのために必要な体力を温存しておきたい、というアレルヤの考えに、誰も反対はしなかった。やりたいようにやれ、と、背中を押したのは、ロックオンとニールだ。どんな待ち方をするかは、おまえの考え次第だと言ってくれたのだ。
イノベイドは長命だ。アレルヤが待っていたとしても、同じように年老いていくわけではない。だが、それでも、アレルヤは、出来る限りの時間を確保しようとしてくれたのだ。
アレルヤは、離れた時より少し年を取っていた。十年ほどは、組織の仕事をしていたのだ。次のマイスターたちの育成を終えて、自分の願うようにしたのだという。
「間に合ったんだね、よかった。それが、少し心配だったんだ。」
「あの男は、悪運のあるヤツだ。・・・・・おまえこそ、マリーを放置するなんて。」
「マリーは、最初から諦めていたよ。きみのことが一番だと知っていたからね。」
だから、マリーは子供が欲しい、と、条件を出した。何かあれば、アレルヤがいなくても生きていけるから、と、それだけはねだったのだ。双子の子供が生まれて、マリーは、「好きになさい。」 と、許してくれた。それから、すぐに僕はヴェーダで冷凍睡眠に入った。このままの姿で、ティエリアを待っていたかったからだ。
「マリーも双子も元気に生きている。」
「そう、よかった。・・・・・ティエリアは元気? 」
「当たり前だ。きみが、こんなことをしているとは思わなくて驚いた。」
エルスでの仕事が忙しくて、十年ほど音信不通になった。そのあとで、通信を繋いだら、アレルヤは眠っている、と、リジェネに言われたのだ。待つために時間を止めたと説明されて、ほっとしたのも事実だ。間に合わないかもしれない、もう二度と会えないかもしれない、と、寂しく思っていたからだ。
「ごめんね? どうしても、きみを、もう一度、抱きしめたかったんだ。」
「僕も、きみと会いたかった。マリーには申し訳ないが、きみが時間を止めてくれたことは嬉しかった。」
ゆっくりと起き上がったアレルヤを抱き締めた。この温もりを、もう一度、感じられたことに感謝した。世界は恒久的平和の許で落ち着いている。これから、この体温を感じていても許されるだろう。
「愛してるよ? ティエリア。ようやく、きみを抱き締められた。」
「待っていてくれて、ありがとう、アレルヤ。僕には、きみが必要だ。」
五十年という時間が流れたのに、そこには、ほとんど変わらない恋人がいる。他は変わってしまっただろうが、これだけは変わらない。それだけで満足だ。体温を感じる抱擁が、それ以上に変わっても、そのまま受け入れた。こうやって肌を合わせることも待ち焦がれていたことだった。
・
「ねぇ、ティエリア。変わってしまった世界を眺めに行こうよ。」
一息ついて、アレルヤが、そう言いだした。同じように横に転がっていたティエリアは眠そうに眼を擦る。
「・・・・その前に・・・・ニールのところだ。刹那が、おかんを独占するのは認めない。」
「ああ、そうだね。ん? 刹那は、ロックオンのところじゃないの? 」
「ロックオンは、ニールと同居している。」
「え? 」
「今、ニールは特区の西に住んでいて、引退したロックオンも、そちらに移り住んだ。だから、刹那は、おかんと嫁と対面したはずだ。」
「ああ、そうなんだ。」
「ちなみに、マリーは欧州だ。双子も、近くにいる。」
「ねぇ、アレルヤ。待っていたいのなら、そうすればいいわ。私は、それでいいと思うの。ひとつだけ、私の願いを聞き届けてくれるなら、許してあげる。」
僕にとって、それは大したことではなかったから、マリーの言う通りにした。そして、ヴェーダに向かった。リジェネのほうも、「なんとかしてあげるよ。そうでないと、ティエが寂しいだろうからね。」 と、僕の願うようにしてくれた。
ロックオンは、待つとは言ったものの、僕と同じ方法は使わないと言った。自然のままに待つのだと言った。
「別にいいんだよ。間に合わなくても、俺は転生して戻ってくるつもりだからさ。ぐふふふふ・・・・ピチピチの若者で刹那とアレやコレやとやったら楽しそうだ。」
ロックオンの死生観というのは、輪廻転生という考え方であるらしい。だから、そんなふうに考える。たぶん、それもあるのだろうけど、気にしていたのは、残っている実兄のこともあったのだろう。待っている、と、約束したニールは、本当に待っているからだ。そのニールとの時間も大切にしたいから、ロックオンは、そのまま残った。
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・・・・・・そういう意味では、僕は自分勝手なのかな・・・・・・
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眠る瞬間に、ふと考えた。
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・・・・・・おまえと、あいつらとは違うってことだ。気にするな。おやすみ、アレルヤ・・・・・
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僕の片割れが、そう言って笑った気配がした。待っている、という約束が、僕にとって一番大切なものだった。他のどんなものよりも、優先した。だから、待つために、この選択を選んだ。
もし、会えなくても、このまま眠っているだけなら、心は穏やかだ。会える時まで、僕は眠っていればいいのだから。
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アレルヤ、と、声をかけられた。そこにはホログラフではない実体の相手がいた。離れた時と寸分変わらない姿の相手は苦笑している。
「・・・・やあ、おかえり・・・・・」
「きみはバカか? 職務放棄して優雅なことだ。」
「・・・・うん・・・・でも、待っていたかったんだ。きみと、もう一度、旅行がしたかったから。」
あのまま、時間の流れに乗って待っていたら、以前のようなことはできなくなっていただろう。下手をすれば、待っていられなかったかもしれない。だから、一番可能性の高い方法を選択した。他のシガラミなんてものを全部、不義理にしても、確実に待っていたかったのだ。それだけが、僕の望みだった。
「リジェネから、それは聞いた。・・・・・ただいま、アレルヤ。待たせてすまなかった。ようやく、エルスのことは片付いた
。これで、地球に被害はなくなったから、僕も、しばらくはゆっくりできるだろう。」
「・・・刹那は? 」
「アザディスタンに降りた。たぶん、それから、ロックオンのところだろう。」
「え? ロックオン、生きてるの? それとも転生したの? 」
「生きてるぞ。まあ、老人という年齢ではあるがな。」
ティエリアは、エルスの本星から帰還してヴェーダ本体に戻った。地球時間で五十年という時間が経過していた。地球は、いろいろと様変わりしていた。それを把握するために、しばらくデータの吸収を優先した。そして、その過程で、アレルヤのことも把握した。
そういう選択肢があったか、と、驚いたが、当時のアレルヤのことをリジェネから聞いて納得もしたし、アレルヤが愛しくも感じられた。抱きしめたい、一緒に生きていたい、そのために必要な体力を温存しておきたい、というアレルヤの考えに、誰も反対はしなかった。やりたいようにやれ、と、背中を押したのは、ロックオンとニールだ。どんな待ち方をするかは、おまえの考え次第だと言ってくれたのだ。
イノベイドは長命だ。アレルヤが待っていたとしても、同じように年老いていくわけではない。だが、それでも、アレルヤは、出来る限りの時間を確保しようとしてくれたのだ。
アレルヤは、離れた時より少し年を取っていた。十年ほどは、組織の仕事をしていたのだ。次のマイスターたちの育成を終えて、自分の願うようにしたのだという。
「間に合ったんだね、よかった。それが、少し心配だったんだ。」
「あの男は、悪運のあるヤツだ。・・・・・おまえこそ、マリーを放置するなんて。」
「マリーは、最初から諦めていたよ。きみのことが一番だと知っていたからね。」
だから、マリーは子供が欲しい、と、条件を出した。何かあれば、アレルヤがいなくても生きていけるから、と、それだけはねだったのだ。双子の子供が生まれて、マリーは、「好きになさい。」 と、許してくれた。それから、すぐに僕はヴェーダで冷凍睡眠に入った。このままの姿で、ティエリアを待っていたかったからだ。
「マリーも双子も元気に生きている。」
「そう、よかった。・・・・・ティエリアは元気? 」
「当たり前だ。きみが、こんなことをしているとは思わなくて驚いた。」
エルスでの仕事が忙しくて、十年ほど音信不通になった。そのあとで、通信を繋いだら、アレルヤは眠っている、と、リジェネに言われたのだ。待つために時間を止めたと説明されて、ほっとしたのも事実だ。間に合わないかもしれない、もう二度と会えないかもしれない、と、寂しく思っていたからだ。
「ごめんね? どうしても、きみを、もう一度、抱きしめたかったんだ。」
「僕も、きみと会いたかった。マリーには申し訳ないが、きみが時間を止めてくれたことは嬉しかった。」
ゆっくりと起き上がったアレルヤを抱き締めた。この温もりを、もう一度、感じられたことに感謝した。世界は恒久的平和の許で落ち着いている。これから、この体温を感じていても許されるだろう。
「愛してるよ? ティエリア。ようやく、きみを抱き締められた。」
「待っていてくれて、ありがとう、アレルヤ。僕には、きみが必要だ。」
五十年という時間が流れたのに、そこには、ほとんど変わらない恋人がいる。他は変わってしまっただろうが、これだけは変わらない。それだけで満足だ。体温を感じる抱擁が、それ以上に変わっても、そのまま受け入れた。こうやって肌を合わせることも待ち焦がれていたことだった。
・
「ねぇ、ティエリア。変わってしまった世界を眺めに行こうよ。」
一息ついて、アレルヤが、そう言いだした。同じように横に転がっていたティエリアは眠そうに眼を擦る。
「・・・・その前に・・・・ニールのところだ。刹那が、おかんを独占するのは認めない。」
「ああ、そうだね。ん? 刹那は、ロックオンのところじゃないの? 」
「ロックオンは、ニールと同居している。」
「え? 」
「今、ニールは特区の西に住んでいて、引退したロックオンも、そちらに移り住んだ。だから、刹那は、おかんと嫁と対面したはずだ。」
「ああ、そうなんだ。」
「ちなみに、マリーは欧州だ。双子も、近くにいる。」
作品名:こらぼでほすと ずっと先の話あれてぃえ編 作家名:篠義