こんな私に、
何だかのどかな光景だった。
久々に日本はイタリアを訪れ、二人で料理なんて作りながらニコニコと笑っている。
いつかの戦争は息を潜め、アメリカが起こす我が侭にみんなで付き合ってやったり、やらなかったりするくらいだ。
俺もクラウツ・・・ドイツとの長年の確執を一応脇においといて、イタリア主催のホームパーティに来ていた。
「アメリカさん、ほらこれ。おいしいですよ」
「うん、おいしいよー!!イタリア、これって何なんだい!?」
「ニョッキって言うんだよ、おいしいでしょ!」
あぁ、クソ、日本の指をしゃぶるな。
俺と日本は、俺は経済力、日本は占領、という形でアメリカに弱味を握られており、
あいつの起こす我が侭に、仕方なく頷いてやっている。
仕方なく、だ。
俺達はやろうと思えばアメリカをたしなめることだってできる。
ただ、日本はくすくすと、儚げに笑って・・・アメリカを許してやる。
言うことを聞いてやり、甘やかす。
俺はまずいと思うんだ、なぁ日本。
何で最近のお前はそんなに、アメリカにべったりなんだ?
「へへ〜おいしかったよさっきの!楽しみだなぁ!」
「あぁ・・・良かったな。」
満面の笑みを浮かべるアメリカに、俺と同じく微妙な顔をしているのが、隣に座るドイツだ。
フランスはと言えば、ロシアに捕まってウォッカを飲まされている。
近寄らない方が良さそうだ、ロシアはフランスがよほどお気に入りらしい。
「・・・俺は気に入らないんだ」
アメリカが席を立ち、またキッチンへ向かった途端に、ドイツが小さく呟いた。
「・・・アメリカか?」
「よく判ったな、属国」
「殺されたいのか・・・?まぁいい、何が気に入らない」
いちいち気に入らないことを言う男だ。
痛いところを突きやがって、せっかく作った連合をもぶち壊し殴りつけたいところだが、
そんなことをするほど俺はガキではないのだ。
「日本が・・・奴とばかりいることだ。
やはり、手を離すべきではなかった。側に置いておくべきだったな・・・」
戦争をしていた頃、日本はドイツ、イタリアと同盟を組んでいた。
頼りない、愛嬌だけのイタリアと、
儚げで幼い印象の日本を両肩に抱え、
ドイツは正に鬼のような強さで。
隣で物憂げにキッチンを見つめる奴は、その頃が忘れられないのだろう。
「勘違いするな、クラウツ。日本はイタリアとは違うんだぞ
「お前は永遠に独りでいろ」
「何だと貴様ぁ!!」
馬鹿みたいに仲が良さそうだった、枢軸の連中が羨ましくないことなど、なかった。
しかし認めたくない事実で、
俺はあの時も、今も、結局独りだ。
俺の出した大きな声に、キッチンの中から日本が、俺達を注意した。
「こらー、ケンカしないんですよ。ドイツさん、イギリスさん。」
「お腹空いたからイライラしてるんじゃないかい?
イギリス、良くないぞ。ドイツが呆れてるじゃないか。本当にケンカっ早いな君は」
「じゃあじゃあ味見!はいドイツ、あ〜ん☆」
アメリカ・・・てめぇは食い過ぎだ。
コラ、イタリア。
何だこの待遇の違いは。
ドイツの分を持って味見、と抜かすくせに、俺の分はないらしい。
「お待たせしてしまって、すみません。さぁどうぞ」
・・・待て。
日本。
イタリアの真似をしなくていい。
俺は目の前につきつけられたニョッキに、日本の可愛い仕草に、真っ赤になってしまう。
「・・・イギリスさん?」
「・・・・・・うまいぞ」
「あぁ〜イギリス真っ赤になってるよぉドイツぅ!
ねぇねぇイギリス、やっぱりまだ日本のこと、すきなふぎゃっ「バカ、おまっ、イタリア!」
慌ててドイツがイタリアの口を塞ぐが、もう遅い。
畜生、脳天気なお前らカップルとは違うんだよ、馬鹿野郎。
「い、イギリス?君、しつこくない、かい・・・?」
アメリカのドン引き具合、
日本が笑顔を引き攣らせて、俺から少しずつ離れていく。
「わあぁっ!」
止められなかった。
これ以上関係なくなっちまうの、俺はきっと、耐えられなかったんだろう。
いつかフランスが言った言葉を思い出した。
「恋愛は、綺麗だからいいんだ。だから俺は後悔しないし、引きずらない。」
嘘つけ、偽善者。
てめぇは結局、あの女を忘れられないじゃないか。
「イギ、イギリスさんっ!」
日本を抱えたまま、俺は走って、どこだかの麦畑にいた。
風が吹く。
乾燥した柔らかい風が青い麦を撫でていく。
綺麗だな。
こんなところに、きっと来たかったんだ。
お前を連れて。
二人きりで。
「・・・もう、離してください・・・恥ずかしいです・・・」
目を伏せて、赤い顔をして、日本が俺から距離を取る。
黒いショートカットを、風が撫でていく。
「好きだぞ、日本。お前のことが」
「・・・知ってます」
俺は逃がさないように、日本を抱き締めた。
家の近所の奴らに比べると小柄な俺の、腕にすっぽりと収まる、小さな体。
アメリカが抱き締めようものなら、日本は潰されてしまいそうだ。
「俺の気持ちに答えてくれないのか」
「・・・ごめんなさい」
「何故だ」
予想通りの答えが返ってきた。
苛立ちを抑えきれずに、俺は日本を更に強く抱き締める。
「私は、アメリカさんに一生ついていくつもりですから。
一歩後ろで、彼を支えていくつもりです。彼が死ぬまで。
彼が死ぬ日が私の死ぬ日です」
「何故そこまで、あいつにこだわる」
日本は俺を見ない。
黒い、ガラス玉のような瞳が、ぼんやりと空を映す。
「アメリカさんは、ずっと私の側にいてくれましたから。」
「いてくれと言うなら、俺は「何も言わなくても側にいてくれましたから」
俺の背中に腕を回して、日本の顔が見えなくなる。
俺の肩に首を置いて、日本は俺を見ない。
「彼を愛してます。
我が侭で、お気楽で、言うこと聞けない子ですけど・・・私は彼がいなければ、生きていけません。」
あなただってそうでしょう?
そう呟いて、やっと俺を見つめた、距離を再び取った。
不愉快にも程がある。
涙に濡れた日本の目が俺を見て、悲しそうに歪んだ。
「あなたが、私を離したからいけないんですよ。」
ぽろぽろ、と、日本が俺の前で泣く。
見ていられなくて、俺はまた日本を抱き締めた。
「あの子があぁなのは、あなたが全部悪いんですよ。
あの子は、カケラも悪くないんだから・・・」
「わ、判った・・・俺が悪かった、だ、だから・・・泣かないでくれ・・・」
ヤバい、連中がこっちに向かってくる。
イタリア、ドイツ。
フランスとロシアは置いてけぼりか、・・・アメリカは?
「お、俺のために泣きやめ日本!俺を悪者にするな!」
俺の発言に日本が目を丸くする、それから笑った。
「あなたらしい言葉ですね、久しぶりに聞きました。」
「日本ー!大丈夫ぅ〜!?」
イタリアが日本に走り寄って、抱きついた、バランスを崩して、尻餅をついた。
「イギリスに酷いことされなかった〜!?」
「ふふ、大丈夫ですよ。」
ドイツが俺を睨みつけてから、日本を見て抱きついて離れないイタリアを外す。
日本はドイツを手を引かれ起き上がって、また笑った。
「アメリカは?」
久々に日本はイタリアを訪れ、二人で料理なんて作りながらニコニコと笑っている。
いつかの戦争は息を潜め、アメリカが起こす我が侭にみんなで付き合ってやったり、やらなかったりするくらいだ。
俺もクラウツ・・・ドイツとの長年の確執を一応脇においといて、イタリア主催のホームパーティに来ていた。
「アメリカさん、ほらこれ。おいしいですよ」
「うん、おいしいよー!!イタリア、これって何なんだい!?」
「ニョッキって言うんだよ、おいしいでしょ!」
あぁ、クソ、日本の指をしゃぶるな。
俺と日本は、俺は経済力、日本は占領、という形でアメリカに弱味を握られており、
あいつの起こす我が侭に、仕方なく頷いてやっている。
仕方なく、だ。
俺達はやろうと思えばアメリカをたしなめることだってできる。
ただ、日本はくすくすと、儚げに笑って・・・アメリカを許してやる。
言うことを聞いてやり、甘やかす。
俺はまずいと思うんだ、なぁ日本。
何で最近のお前はそんなに、アメリカにべったりなんだ?
「へへ〜おいしかったよさっきの!楽しみだなぁ!」
「あぁ・・・良かったな。」
満面の笑みを浮かべるアメリカに、俺と同じく微妙な顔をしているのが、隣に座るドイツだ。
フランスはと言えば、ロシアに捕まってウォッカを飲まされている。
近寄らない方が良さそうだ、ロシアはフランスがよほどお気に入りらしい。
「・・・俺は気に入らないんだ」
アメリカが席を立ち、またキッチンへ向かった途端に、ドイツが小さく呟いた。
「・・・アメリカか?」
「よく判ったな、属国」
「殺されたいのか・・・?まぁいい、何が気に入らない」
いちいち気に入らないことを言う男だ。
痛いところを突きやがって、せっかく作った連合をもぶち壊し殴りつけたいところだが、
そんなことをするほど俺はガキではないのだ。
「日本が・・・奴とばかりいることだ。
やはり、手を離すべきではなかった。側に置いておくべきだったな・・・」
戦争をしていた頃、日本はドイツ、イタリアと同盟を組んでいた。
頼りない、愛嬌だけのイタリアと、
儚げで幼い印象の日本を両肩に抱え、
ドイツは正に鬼のような強さで。
隣で物憂げにキッチンを見つめる奴は、その頃が忘れられないのだろう。
「勘違いするな、クラウツ。日本はイタリアとは違うんだぞ
「お前は永遠に独りでいろ」
「何だと貴様ぁ!!」
馬鹿みたいに仲が良さそうだった、枢軸の連中が羨ましくないことなど、なかった。
しかし認めたくない事実で、
俺はあの時も、今も、結局独りだ。
俺の出した大きな声に、キッチンの中から日本が、俺達を注意した。
「こらー、ケンカしないんですよ。ドイツさん、イギリスさん。」
「お腹空いたからイライラしてるんじゃないかい?
イギリス、良くないぞ。ドイツが呆れてるじゃないか。本当にケンカっ早いな君は」
「じゃあじゃあ味見!はいドイツ、あ〜ん☆」
アメリカ・・・てめぇは食い過ぎだ。
コラ、イタリア。
何だこの待遇の違いは。
ドイツの分を持って味見、と抜かすくせに、俺の分はないらしい。
「お待たせしてしまって、すみません。さぁどうぞ」
・・・待て。
日本。
イタリアの真似をしなくていい。
俺は目の前につきつけられたニョッキに、日本の可愛い仕草に、真っ赤になってしまう。
「・・・イギリスさん?」
「・・・・・・うまいぞ」
「あぁ〜イギリス真っ赤になってるよぉドイツぅ!
ねぇねぇイギリス、やっぱりまだ日本のこと、すきなふぎゃっ「バカ、おまっ、イタリア!」
慌ててドイツがイタリアの口を塞ぐが、もう遅い。
畜生、脳天気なお前らカップルとは違うんだよ、馬鹿野郎。
「い、イギリス?君、しつこくない、かい・・・?」
アメリカのドン引き具合、
日本が笑顔を引き攣らせて、俺から少しずつ離れていく。
「わあぁっ!」
止められなかった。
これ以上関係なくなっちまうの、俺はきっと、耐えられなかったんだろう。
いつかフランスが言った言葉を思い出した。
「恋愛は、綺麗だからいいんだ。だから俺は後悔しないし、引きずらない。」
嘘つけ、偽善者。
てめぇは結局、あの女を忘れられないじゃないか。
「イギ、イギリスさんっ!」
日本を抱えたまま、俺は走って、どこだかの麦畑にいた。
風が吹く。
乾燥した柔らかい風が青い麦を撫でていく。
綺麗だな。
こんなところに、きっと来たかったんだ。
お前を連れて。
二人きりで。
「・・・もう、離してください・・・恥ずかしいです・・・」
目を伏せて、赤い顔をして、日本が俺から距離を取る。
黒いショートカットを、風が撫でていく。
「好きだぞ、日本。お前のことが」
「・・・知ってます」
俺は逃がさないように、日本を抱き締めた。
家の近所の奴らに比べると小柄な俺の、腕にすっぽりと収まる、小さな体。
アメリカが抱き締めようものなら、日本は潰されてしまいそうだ。
「俺の気持ちに答えてくれないのか」
「・・・ごめんなさい」
「何故だ」
予想通りの答えが返ってきた。
苛立ちを抑えきれずに、俺は日本を更に強く抱き締める。
「私は、アメリカさんに一生ついていくつもりですから。
一歩後ろで、彼を支えていくつもりです。彼が死ぬまで。
彼が死ぬ日が私の死ぬ日です」
「何故そこまで、あいつにこだわる」
日本は俺を見ない。
黒い、ガラス玉のような瞳が、ぼんやりと空を映す。
「アメリカさんは、ずっと私の側にいてくれましたから。」
「いてくれと言うなら、俺は「何も言わなくても側にいてくれましたから」
俺の背中に腕を回して、日本の顔が見えなくなる。
俺の肩に首を置いて、日本は俺を見ない。
「彼を愛してます。
我が侭で、お気楽で、言うこと聞けない子ですけど・・・私は彼がいなければ、生きていけません。」
あなただってそうでしょう?
そう呟いて、やっと俺を見つめた、距離を再び取った。
不愉快にも程がある。
涙に濡れた日本の目が俺を見て、悲しそうに歪んだ。
「あなたが、私を離したからいけないんですよ。」
ぽろぽろ、と、日本が俺の前で泣く。
見ていられなくて、俺はまた日本を抱き締めた。
「あの子があぁなのは、あなたが全部悪いんですよ。
あの子は、カケラも悪くないんだから・・・」
「わ、判った・・・俺が悪かった、だ、だから・・・泣かないでくれ・・・」
ヤバい、連中がこっちに向かってくる。
イタリア、ドイツ。
フランスとロシアは置いてけぼりか、・・・アメリカは?
「お、俺のために泣きやめ日本!俺を悪者にするな!」
俺の発言に日本が目を丸くする、それから笑った。
「あなたらしい言葉ですね、久しぶりに聞きました。」
「日本ー!大丈夫ぅ〜!?」
イタリアが日本に走り寄って、抱きついた、バランスを崩して、尻餅をついた。
「イギリスに酷いことされなかった〜!?」
「ふふ、大丈夫ですよ。」
ドイツが俺を睨みつけてから、日本を見て抱きついて離れないイタリアを外す。
日本はドイツを手を引かれ起き上がって、また笑った。
「アメリカは?」