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こらぼでほすと ちょい先の話にるらい編2

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ニールが戻って来て、すぐにリジェネも帰ってきた。悟空は、運動系のクラブの助っ人で帰りは遅いのだと言う。卓袱台代わりのこたつの上には、特区の料理が並んでいる。
「ライル、あっちで暮らすのはいいけど、住居とかは、どうするつもり? 」
「適当に住む場所は考えるさ。一人だし、ワンルームなら、どっかあるだろ? 」
「それなら、僕が選定してあげるよ。どうせ、ママも遊びに行くんだろうし、僕らもついていくから、ワンルームなんて狭すぎる。」
「え? リジェネ、俺、組織から外れてるからさ。」
「そっちからのリクエストじゃなくて、ママが泊れることが前提。僕だって、組織からのオーダーなんて、ほとんど受けてないよ。・・・・ね、ママ、どこがいい? 」
「いや、ライルの希望するとこにしてやってくれ、リジェネ。俺が遊びに行くのなんて、年に一度くらいなんだからさ。」
「じゃあ、場所だけは選ばせてあげるよ、ライル。建物は、僕が選ぶ。」
「ちょっと待て。俺しかいないのに、大きな建物なんか面倒なだけだぞ。それに、そんなの家賃が怖すぎるだろ? 」
 今の物価が、どうなっているかわからないが、都市部で、それなりの建物を借りるとなれば、家賃だって相当なことになる。ある程度の蓄えは、ライルにもあるが、贅沢しようとは思っていない。
「それは、俺が用意してやるよ、ライル。おまえの仕送りが、ほとんど残ってるからな。」
「そんなのいいよ、兄さん。あんたが使えって言っただろ? 」
「使う用事がないんだ。生活費は、三蔵さんから貰ってるから。」
 ついでを言えば、二十年ほど前に、『吉祥富貴』を正式に解散する時に退職金ということで、かなりの金額をオーナーからも振り込まれている。それに、特区の資産のいくつかもニールの名義にしてくれてある。万が一、資金が必要な時は換金してください、と、オーナーは、今後の生活を考えてくれたので、生活に困ることはないのだ。さらに、それらの資産はリジェネが運用してくれるているから、適宜、収入まである始末だ。
「ママの名義にしておけばいいね。」
「そうしてくれるか? リジェネ。なんなら、おまえのにしてくれてもいい。」
「僕の名義だと、後々、ヴェーダのものになっちゃうからね。ママのにしておくよ。ああ、刹那のでもいいかな。」
「ああ、そうだな。刹那の名義にしておけばいい。」
 食事しながら、どんどん話は進められていく。ライルの考えていた生活は、こじんまりしたものだった。これでは、とんでもないことになりそうだ。
「いや、待て。俺はダウンタウンの、こじんまりした部屋でいいんだって。」
「だから、そういう場所で、僕らも滞在できる程度の部屋ならいいんでしょ? いくつか候補を出して選ばせてあげるから。」
 リジェネも、ほとんど姿に変化はない。相変わらず、十代後半か二十代前半の容姿だ。だが、人間界での生活が長くなって、そういう知識もすっかりと身につけている。一年に何度かは、メンテナンスも兼ねてヴェーダに戻っているが、それ以外は、ニールの傍に居座っている。
「刹那も連れて行こう。」
「それは無理だろ? 俺が留守の時は、八戒さんに世話は頼むさ。猫って環境が変わるとストレスになるんだ。」
「え? 八戒さんたち、こっちにいるのか? 」
 ニールの言葉に、ライルが反応した。あちらの夫夫も人外だとは聞いていたが、同じところにいるとは思わなかった。
「ああ、先に、こっちに移住したのが、八戒さんたちなんだ。こっちでも、店をやってる。後で顔出すか? 雰囲気のいいバーなんだ。」
「おい、悟空のメシは? 」
 女房の言葉に、亭主の頬がピキリと動いた。勝手に出かけたら、悟空の食事の準備をするものがいなくなるからだ。
「ああ、そうか。今日は無理だな。明日以降にしよう。・・・まだ呑みますか? それとも、ごはん? 」
「お代わり。メシは茶漬けだ。」
 空になったコップに、新しいお湯割が作られる。リジェネのほうは、晩酌には興味がないから、すでに食べ終わりそうだ。子猫は、こたつの傍のバスケットで、すやすやと眠っている。エサを食べさせたら、こてんと寝てしまった。それに目を細めつつ、ニールがライルのほうにも尋ねてくる。軽く酔っているので、ごはんを貰う。
「パジャマ、俺のでいいだろ? 」
「なんでもいいよ。・・・・このフリカケ、いいな。」
 ここでの和食は、いつものことだが、ごはんのフリカケは知らないものだった。さっぱりとした清涼感がある。特区の西でしか作られていないものだという。
「三蔵さん、ライルのことは、あちらに届けておくほうがいいんですかね? 」
「もう、把握してやがるだろ。狐が来てたんだろ? あいつらから報告はされてるはずだ。」
「それならいいか。明日、お弁当でもいいですか? それとも外食します? 」
「外食する。夕方には戻れ。」
「はいはい、鐘はつきます。それほど遠くじゃないから。ほら、あんたと行った神社の梅が見ごろでしょ? あれをライルにも見せてやろうと思って。」
「それなら、あそこのヤツに声をかけておけ。それで伝わる。」
「そうですね。」
 夫夫ふたりで、何やら相談しているので、ライルは顔を上げた。何かしら、自分のことを報せておく必要があるらしい。一応、テロリストなので、そういうことなら偽造したIDカードが必要かな、と、声をかけようとして、リジェネに先に説明された。
「ここらへんは、人外の結界があるんだ。だから、人間は、あまり入れないように調整してるんだよ。だから、ライルが新しく住むなら報告しとかないと、ここに帰り着けなくなっちゃうんだ。」
「え? 俺、迷わなかったけど。」
「そりゃそうだよ。僕が、事前に連絡しておいたもの。だから、すんなり来られたでしょ? 」
「ライル、あのねーさんたちも様子を見に来てくれてたんだ。もし、迷ったら道を調整してくれるつもりでさ。・・・・関係のある人間は入れるんだけど、そうじゃないのは入れなくしてあるんだ。」
 この古い都には、そういう仕掛けがいくつもある。人間と人外が共存するために、適当に出入りも調整しているのだ。
「あ、だから、延々と住んでられるってことか? 」
「そうそう。きちんとした決まりがあるから、ここは住みやすいんだってさ。八戒さんたちも、それがあって、こっちに移り住んだんだ。・・・うちは、本山のほうに帰ったり、他の用事があったから特区の東で、適当にしてたんだ。」
 おもに、『吉祥富貴』の面々との関係があって、しばらくは特区の東で住居の移動をしていた。完全に、コーディネーター組がプラントに移り、トダカのことも片付いてから、一度、本山に戻って、こちらに降りて来た。沙・猪家夫夫は、そのまま、こちらに移動したので、そこいらが違う。本山のほうへ帰る必要はなかったから、こちらに住んでいた。お陰で、三蔵たちが降りて来た時も、スムーズに寺を用意してもらえたのだという。
「じゃあ、また本山へ帰ったりするのか? 」
「三蔵さんと悟空は、毎年、夏に一ヶ月くらいは出張してる。俺は、呼ばれたら戻るけど、今のところは留守番だ。」