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こらぼでほすと ちょい先の話にるらい編2

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 憤慨して、亭主を叱っている実兄の言葉に、ライルも苦笑する。本当に、そうだったからだ。多少、若い頃は遊んでいたが、それでも亭主を忘れたことはないし、亭主以外と本気で想いをぶつけるようなことはしたことがない。
 結局、待っている。いつ帰るともわからない亭主を。逢えなくても、それは運命だと諦めてはいるが、それでも逢えるなら逢いたいとは想っているのだ。それを実兄は、ちゃんと理解してくれている。



 たまには、一緒に寝よう、と、ライルから誘った。布団を二つ、客間に並べた。
「・・・久しぶりだよな・・・」
「・・・そうだな・・・あんた、身体のほうは、なんともないのか? あんまり筋肉とかついてないけど。」
 身体は健康な状態に戻っている。だが、以前のマイスターだった頃のように筋肉がついた様子はない。
「適当に、筋トレとかはやってるんだが、それほど真剣にやってないからさ。おまえこそ、体調はいいのか? 」
「年取って、若い頃みたいな瞬発力はないけど、健康だ。持病とかもないぜ。」
 確かに四十の声を聞いた頃から、体力は落ちてきた。視力も少しずつ低下している。マイスター候補の訓練に付き合うのも、最近では厳しくなってきていた。少しずつ、年老いていくのだと自覚したから、組織は退いた。
「それならいいさ。なんか商売でもするのか? 」
「あんま向かないんじゃないかなあ。・・・・適当にバイトぐらいでいいと思ってるんだ。身体が錆びない程度に動かしてるぐらいのことでさ。」
 健康な状態で生きていようとは考えている。もう少し身体の自由が利かなくなったら、こちらに戻ればいい。それまでは、ゆっくりと一人で暮らしたい。時間制限のない生活をしてみたいのだ。
「もう、俺のことは心配しなくてもいいぜ? 兄さん。」
「・・・そうだな・・・なんか、ほっとした。・・・・・本当にありがとう。長いこと、ロックオン・ストラトスを続けてくれて。」
「礼には及ばない。俺がやりたかっただけだ。・・・後は、あんたとダーリンを出迎えることだけはやるつもりだよ。」
 いつか戻って来るライルの亭主に、「おかえり。」 と、声だけは届けたい。どんな姿になっているのか、わからないが、たぶん、自分のダーリンは、「ただいま。」 と、返してくれるだろう。その時を待ち侘びるのは楽しい時間だ。
「そのうち帰ってくるよ。一緒に待ってような、ライル。」
「ああ、そうしよう。・・・・そうだ、いつ帰るか、わかんないんだからさ。もうちょっと身だしなみには気をつけようぜ? ボロボロの草臥れた格好で出迎えたら、俺のダーリンが心配する。」
「・・・俺、そんなに、ひどいかな? 」
「ひどいんじゃないか? ちょっと教育してやるよ。あんた、そういうとこは、全然、センスないからな。」
「うん、頼むよ。そういうとこに気が回らないみたいだ。」
 ニールは、そういうことに無頓着だ。世話するものに惜しみない愛情を注げるのに、自分のこととなると、わからない。それもニールらしいのだと、ライルも思う。
「愛してるよ? 兄さん。」
「俺も愛してるよ? ライル。」
 合言葉のように繋がる言葉を言い続けて、届いているのかいないのか、ライルにもわからない。ただ、実兄が選択した待つ方法は、実兄だからできたことだ。義兄は、いつも、あんな調子だが、実兄のことは大切にしてくれている。だから、待てなくて、実兄を遺すことになっても、それほど心配はしなくて良い。
 となりの布団から、あふっと言う欠伸が聞こえている。そろそろ、眠くなってきたのだろう。
「おやすみ、兄さん。」
「・・・・おやすみ、ライル。」
 寝息に変わったのを確認して、起き上がって、となりを覗く。月明かりが障子越しに届いているから、真っ暗ではない。双子だけど、生きる道は分かれている。それでいいのだろうと、ライルは、その寝姿に微笑んで、しばらく、眺めていた。