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Wizard//Magica Wish −10−

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夢…か。
一体、あの夢は何を意味しているのだろうか。
まぁ、それは置いといて…。
浜辺の防波堤で横になっていた俺は次第に近づいてくる魔女に備えて腰にベルトを出現させる。そう、俺は杏子ちゃんと待ち伏せ作戦をしている真っ最中だった。
次第に魔力の波動が大きくなる…今は深夜、波の音しか聞こえない浜辺が日中と違い不気味に耳に残り胸の心拍数が上がる。
そんな時でも傍に彼女がいるだけで安心感が持てる。
「なんだハルト、もしかしてビビってるのか?」
「杏子ちゃん、俺がそんなキャラに見える?」
「全然!もしかして興奮しているのか?」
「それも違う、別に俺は狂乱者って訳じゃない」
しかし、俺は杏子ちゃんがさりげなくいった事でも全て否定出来る訳じゃない。俺は、正直戦うことでしか自分を証明できない人間だ。今まで数え切れない程魔女と戦い、全てのグリーフシードをウィザードリングに変えてきた。それが、いつの間にか俺には日常となってきて、さらにはそれ自身が楽しいと思う時だって思ってしまう事もある。まぁそれが穢れが溜まっている証拠なんだが。

「近いな…もうすぐそこにいる!」

「『ドライバーオン』プリーズ!」
「まさかこんなところに魔女が現れるなんてね」
さて、ここからが本番だ。たまたま魔女の気配を探知できた俺と杏子ちゃんは周りに誰もいないことを確認し、一時間程待ち伏せをしていた。途中、俺は待ち疲れて仮眠をとっていたがぐっすり寝てしまったみたいだ。

杏子ちゃんは魔法少女に変身し、槍を構える。普段から勇ましい彼女に恐れる心は無いのか、たまにそんなことを考えてしまう。
「『フレイム』プリーズ!『ヒーヒー!ヒーヒーヒー!!』」
「『コネクト』プリーズ!」
俺はウィザードに変身し、ウィザーソードガンを別空間から取り出す。軽く一回しし、海の彼方を凝視した。すると遠くからどす黒い異様な魔力の波動を漂わせながら奴はこちらへと近づいてきた。

−Elsamaria−

どうやら、奴はメデューサによって生まれた幻影魔女−ファントム−ではなく、本物の魔女のようだ。見た目は何100メートルもありそうな大きな巨体、全身真っ黒、うようよと何本も木の枝のような触手を放ちながらゆっくりとこちらへ前進してくる。あの魔女には決められた形は存在しないらしい。まるでスライムのようだ。

「行くぞっハルト!!」
「さあ、ショータイムだ」

俺達は一気に魔女へ向かって走り、奴の大きな身体の上にのり頭部へと目指す。どうやらこの魔女のグリーフシードは頭部にあるみたいだ。しかし魔女は俺たちの進行を拒むかのように龍の頭をした触手が捕食しに襲ってきた。
「はっ!うらぁっ!へへっ、生温いな!」
「油断しちゃ駄目だよ?はぁっ!」
触手が杏子ちゃんの槍と俺のウィザーソードガンに無残に切断され空中を舞う。無限に現れる触手だが、俺たちの前には何の意味もない。
戦いの最中に杏子ちゃんを見る。二カっと笑いながら彼女は慣れた身体突きで乱舞をしているかのように触手を切り刻む。その姿がたまに美しく見えてしまうから不思議だ。

「スラッシュストライク!」
「はぁぁぁっ!!」

「ハルト、初っ端から飛ばしすぎじゃねぇか?」
「あんまり長引かせたくないからね、さっさと決めるよ!」

強力な魔法を使いながら俺は走るスピードを一気にあげる。その時に俺は左手の指輪を変え、ベルトを操作した。
「『ウォーター』プリーズ!『スィースィースィースィースィー!!』」
「『コピー』プリーズ!」
ウィザーソードガンを投影させ、空いていた片手に持つ。俺は杏子ちゃんに負けないように身体を普段以上に動かしながら沢山の触手を切り刻む。
杏子ちゃんが俺の後に続きながら進行し、俺たちはようやく魔女の頭部に到着した。魔女の頭から伸びる髪の毛がまるで木の枝のように変形し、数え切れない程の木の枝が一気に俺たちに押し寄せてきた!

「ぬあっ!ちょ、ちょっとタイム!」
「大丈夫、ここは俺に任せて!」
「チョーイイネ!『スティンガー』サイコー!!」

ウィザーソードガンを構え、一気に魔女に突っ込む。大量の木の枝は衝撃波によって全て砕かれ、剣の先が魔女に突き刺さる。
魔女は悲鳴を上げながら暴れ始め、俺たちを地面へと振り落とした。
俺と杏子ちゃんは砂浜に綺麗に着地し、魔女の隙を見逃さず俺は懐から指輪を取り出し右手の中指に装着した。

「『リボーン』プリーズ!」
「フィナーレだ」

右手を魔女に掲げる。魔女は断末魔を上げながら形を変え一つの指輪に変わった。ウィザードリングだ。俺はそれを拾い懐にしまった。それと同時に大きく広がる海原の先から一筋の光が俺たちを照らした。夜明けだ。

「ふぅ…今日の仕事もこれで終わりっと。なんだ、もう夜明けか」
「眠たい…ふあぁ…帰ろっか、杏子ちゃん」
「あぁ、あたしももうクタクタだ」

先ほどまで不気味だった波の音が太陽の輝きと同時に心地よい音楽へと変わる。俺は重たい瞼を無理やりこじ開けながら海に背を向ける。
そんな俺に隣りに杏子ちゃんが駆け寄ってきて懐からなにかを取り出し、俺に差し出した。
10円でかえるスティック状のスナック菓子だ。
「朝飯だ、食うかい?」
「ん、もらう」


作品名:Wizard//Magica Wish −10− 作家名:a-o-w