そらとうみの手前のお話
故国から遠く離れた東の国のさらに東の端に位置する場所で、エドワードは凝然と立ち尽くしていた。
目の前には大きな山が行く手を阻むようにそびえている。
ブリッグスほどではないが相当高い。そして険しく奥深く連なっている。
歩いて越えるには数日を要しそうだ。
この壁のように立ちはだかる山脈のすぐ向こうには、未だ絵や写真でしか見たことのない「海」というものが広がっていることをエドワードは知っていた。
だからここまで来たのだ。確かめてみたかったのだ。
いつか行くはずのその向こうが感じられる場所を。
けれど今その先に進む気はさらさらなかった。
目的を果たすべく情報を求めて旅をしていた頃と比べて未知なるものへの好奇心はいささかも衰えてはおらず、むしろ背負うもののない分留まることなく己の欲求のままにあちこち赴いている今日この頃ではあるのだが。
しばらくして頂きのその向こうの空を睨むように見上げたままだった目を閉じ、すぅと大きく深呼吸をするとくるりと背を向けて元の道を戻り始めた。
その心には少しの迷いも未練もなかった。
同行してくれたこの国の友人が、先へ行かなくてよいのかと驚いたように言ってきたが。
「いいんだ」
自分に言い聞かせるように呟く。
「一緒に行くって約束したから」
約束したとは言えない一方的に放った言葉だったけど。
あいつは覚えてないかもしれないけれど。
これはいつか叶えたい夢じゃなくて、確実な未来だと信じることができるから。
だからいいんだ。今は行かなくて。
あいつと一緒に必ず見に行くから。
それはいつになるかわからない、けれど確定事項。
目の前には大きな山が行く手を阻むようにそびえている。
ブリッグスほどではないが相当高い。そして険しく奥深く連なっている。
歩いて越えるには数日を要しそうだ。
この壁のように立ちはだかる山脈のすぐ向こうには、未だ絵や写真でしか見たことのない「海」というものが広がっていることをエドワードは知っていた。
だからここまで来たのだ。確かめてみたかったのだ。
いつか行くはずのその向こうが感じられる場所を。
けれど今その先に進む気はさらさらなかった。
目的を果たすべく情報を求めて旅をしていた頃と比べて未知なるものへの好奇心はいささかも衰えてはおらず、むしろ背負うもののない分留まることなく己の欲求のままにあちこち赴いている今日この頃ではあるのだが。
しばらくして頂きのその向こうの空を睨むように見上げたままだった目を閉じ、すぅと大きく深呼吸をするとくるりと背を向けて元の道を戻り始めた。
その心には少しの迷いも未練もなかった。
同行してくれたこの国の友人が、先へ行かなくてよいのかと驚いたように言ってきたが。
「いいんだ」
自分に言い聞かせるように呟く。
「一緒に行くって約束したから」
約束したとは言えない一方的に放った言葉だったけど。
あいつは覚えてないかもしれないけれど。
これはいつか叶えたい夢じゃなくて、確実な未来だと信じることができるから。
だからいいんだ。今は行かなくて。
あいつと一緒に必ず見に行くから。
それはいつになるかわからない、けれど確定事項。
作品名:そらとうみの手前のお話 作家名:はろ☆どき