serenade
郵便受けからその手紙を取り上げた時、その宛先を見た時、ロイは心臓が止まるかと思った。
「わたしの愛するエドワードを愛するあなたへ」
女性らしい流麗な文字で綴られたその宛名書きに絶句したのは、心当たりがあるからではなくてその逆で、思いもよらない内容だったからに他ならない。
しかも、だ。
エドワードという名前の知り合いは何人かいるが、いずれも男性である時点であまり外聞がよろしくない。差別するつもりはないが、その気はない。そしてさらに、一番最初に思いついた「エドワード」のことだった場合、この上なく問題だ。彼は少年だし、自分はそれを後見する…ような立場にあるのだから。
しかしとにかく中身を確認しないことにはらちがあかない。
息を飲み、覚悟を決めて手紙を手にとり、今度は息を止めるはめになる。…封筒の裏には、こう署名されていたのである。
「トリシャ・エルリック」
と――…