ストライクウィッチーズss集vol.3
芳佳(そして1949年8月6日。私が魔力を持っていればもうすぐ上がりを迎えてしまう頃。ネウロイは近畿、中部地方までを占領し、関東にまで勢力を伸ばそうとしてきていた)
1949年8月6日。明け方。
芳佳「ん…」
芳佳(何だか、目が覚めちゃった…)
芳佳「…」
窓を開け、外を見る。
芳佳「?」
見覚えのある赤い光線が、市街地へ発射される。
芳佳「あの光線…まさか!」
同時に空襲警報発令。
芳佳「ネウロイだ!」
無数のネウロイが街を破壊していく。
芳佳「ウィッチはまだなの!?」
芳佳(私が飛べたら…!)
芳佳(飛べさえしたら、皆を護れるのに…!)
芳佳「…もう一度、飛びたいよ!」
芳佳「私はあそこに、行かなくちゃいけない。私のいるべき場所は、空だから!」
その時、魔方陣が展開される。
芳佳「これって…!」
???「あの光…!」
芳佳「魔法力が…戻ってる!」
???「宮藤少尉ー!」
芳佳「え?…静夏ちゃん!」
静夏「少尉、受け取ってください!」
静夏が何かを投下する。
芳佳「震電…!」
静夏(宮藤少尉が上がってくるまで、私がネウロイの注意を引き付ける!)
静夏「こっちだ!」ダダダダダ!
芳佳「震電…お願い。もう一度私を飛ばせて。あの場所に、還りたいから!」
芳佳、ストライカーを装着して発進。
芳佳「」ダダダダダ!
芳佳、静夏の周囲のネウロイを一掃。
静夏「少尉!」
芳佳「私、また空へ還ってこられたよ。静夏ちゃん、ありがとう!」
静夏「も、もったいないお言葉です!」
ネウロイが芳佳へ光線を撃つ。
芳佳「っ!」
芳佳「良かった。まだシールドもちゃんと機能してる」
静夏「すごい…。上がり間近というのに」
芳佳「静夏ちゃん。二人でネウロイを迎撃するよ!」
静夏「っ、はい!」
芳佳と静夏。二人でネウロイを撃墜。
芳佳「よし、これで最後だね」
静夏「はい。そのようです」
芳佳「基地に戻ろう」
静夏「はいっ!」
その時だった。弾丸のようになったネウロイの光線が、静夏の身体を貫く。
静夏「…え?」
芳佳「静夏ちゃん!今のは…」
静夏「数年前…から、出現…するよう、になった…狙撃…型の…ネウロイ、で…かはっ!」
芳佳「静夏ちゃん、喋らないで!今治療するから」
だが、ネウロイの狙撃が続く。
芳佳「邪魔しないで!」
静夏「少尉…自分のことは…良いですから…退却して、ください…。今の…扶桑に…とって、少尉…は…貴重な、戦力…です。それこそ…私なんか、より…ずっと…」
芳佳「諦めちゃダメ!絶対に助けるから!」
静夏「ふふ…。最後に…少尉と…飛べて、光栄…でした…」
芳佳「静夏ちゃん?」
芳佳「ねぇ、静夏ちゃん。目を開けて。お願い、ねぇ!」
1949年8月6日。服部静夏曹長、戦死。
芳佳「ネウロイ…よくも、よくも静夏ちゃんをぉぉぉぉっ!」
芳佳、狙撃型ネウロイへ突貫。一撃で仕留める。
芳佳「はぁ、はぁ…。うぅっ、静夏ちゃん…」
芳佳、横須賀基地へ。
整備兵「み、宮藤さん!?」
整備兵2「魔力が戻ったんですか!?」
芳佳「はい。でも、静夏ちゃんが…」
整備兵3「服部曹長に、何か…?」
芳佳「戦死しました…。彼女は最後まで勇敢に、ネウロイと戦い抜きました」
整備兵「なっ…!?」
土方「宮藤さん、お久しぶりです」
芳佳「土方さん…。あの、坂本さんは…。静夏ちゃんのこと、報告しないと…」
土方「坂本大佐ですか…。今は会わない方がよろしいと思います」
芳佳「え…どうしてですか?」
土方「…欧州陥落のことはご存知ですね?」
芳佳「は、はい」
土方「坂本大佐は、欧州陥落に伴うかつての仲間達の死と、扶桑へのネウロイ侵攻を止められないご自身の無力さを嘆き、精神を病まれてしまっています。大佐に非は、何もないのですが…祖国を守りたい思いが強すぎたのでしょう」
芳佳「そんな…坂本さんが、そんなことに…」
土方「大佐には自分から…いえ、やはり宮藤さんから伝えていただく方がよろしいですね。また飛べるようになったことも報告して差し上げてください」
芳佳「はい」
・
芳佳(ここが坂本さんの病室…)
芳佳「失礼します…」
美緒「…」
芳佳「坂本さん、お久しぶりです」
美緒「宮藤…か?」
芳佳(坂本さん、こんなに痩せ干そって…)
芳佳「はい」
美緒「急に…どうした?」
芳佳「坂本さん。1つ報告があります。静夏ちゃんが…」
美緒「服部が…?」
芳佳「戦死、しました」
美緒「…そう、か。服部が…」
芳佳「…」
美緒「私はダメだな。祖国も守れず、下の者を使ってのうのうと生き延びている」
芳佳「そんなことありません!坂本さんがいなければ、もっと早くに扶桑も陥落していたかも知れません!」
美緒「魔法力も無い私に出来ることなど…たかが知れている」
芳佳「私、飛べるようになったんです」
美緒「何?魔法力を…取り戻した、のか?」
芳佳「はい。ネウロイが横須賀に侵攻してくるのを見たら、飛びたいっていう気持ちが一層強くなって…」
美緒「そうか。宮藤」
芳佳「はい」
美緒「お前は、死ぬなよ」
芳佳「はい!」
1949年8月15日。
ネウロイが大規模空襲を実行する。関東全域を狙ったものだ。
芳佳「発進!」
芳佳、次々とネウロイを撃墜。その獅子奮迅の働きにより、関東の空は守られた。
芳佳「こちら宮藤。最後の一機を撃墜。これより帰投します」
基地への帰投中。
芳佳(あんなところにネウロイが…?)
芳佳「こちら宮藤。ネウロイの一個小隊を目視で確認しました。これより行動に移ります」
芳佳(偵察かな?)
芳佳が近づくと、ネウロイが光線を撃つ。
芳佳「っ!」
しかし、シールドを貫通。
芳佳「そんな…このタイミングで、シールドが…?」
芳佳「坂本さん…ごめんなさい…。約束、守れなく、て…」
1949年8月15日。宮藤芳佳少尉、戦死。なお、発見された遺体は激しく損傷しており、ストライカーが無ければ彼女と見分けられなかったという。
土方「大佐、失礼します。宮藤少尉が…戦死、なされました」
美緒「…そう、か。報告ご苦労。下がっていいぞ」
土方「はっ。…失礼します」
美緒「これで、私一人になってしまった」
美緒(魔力を失い、後方で指示を出すだけの日々。そして、そうしてまで祖国を護ることは出来なかった)
美緒「私が、生きている意味など…もう、どこにも…」
1949年8月16日。坂本美緒大佐の遺体が病室にて発見される。死因は舌を噛みきったことによる失血死であった。これを以て、501JFWも壊滅。
同年9月。扶桑もついに陥落。
1950年。残った人類は、唯一侵攻を受けていないノース・リベリオンへと活動の幅を狭められた。
芳佳「…っていう最悪の未来が訪れないといいなぁ」
THE END
作品名:ストライクウィッチーズss集vol.3 作家名:Dakuto