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【腐女子向】パフェ【蛮銀】

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ホンキートンクの季節のパフェは現在ストロベリーパフェらしい。
銀次はいつものメニューの中に差し込まれている手書きのストロベリーパフェのメニューを見ていた。
去年、一昨年のこの手書きはパフェのイラストの他にかわいらしく花やウサギ、ネコなどのイラストが描かれていたが今年は黒や白のレース柄にバラやバラの花びらなどが散っている。
レナちゃんの趣味かな?
銀次は去年の夏に入ったホンキートンクのアルバイトの少女をカウンター席からチラリと見やった。店の客は現在常連の銀次がカウンターに一人だけだ。当のレナはカウンターの中でシンクの拭き掃除をしていて、もう一人、先輩アルバイトの夏実は先ほど作ってあるものとは別に予備としてのサンドイッチ用のパンを切り終ったところでラップに包んでしまっている。店主はのんびりカウンターのレジ横で小さな椅子に座り煙草をふかしながら新聞を読んでいる最中だ。時刻は11時。喫茶店が混んでくるにはあともう少し時間がいるだろう。

三月になると結構な飲食店がイチゴ推しになる。ストロベリーパフェ、ストロベリークレープ、ストロベリーアイス、ストロベリーケーキ、ストロベリーシェークetc、etc。
そういえばストロベリーティーなんてのもあるよね、どんな感じだろう?
言えばホンキートンクでも用意してくれるのだろうか。前々からちょっと気になってはいたけれど、相棒が完全にコーヒー党である銀次はなんとなく自分も飲み物は彼に合わせていつもコーヒーだ。だが、飲んではいけないなどと禁じられているわけではもちろんない。この機会にちょっと試してみたい気もしてくる。
でも今はダメだろうなあ。紅茶も、このパフェも。
ついしてしまった溜息をたまたま近くにいたレナが聞きつけて、小首をかしげて可愛らしく気遣ってきてくれた。
「なにかあったんですか?」
ここの借金以上の事が。
彼女の言葉にはいつもナイフが仕込まれている。思わずタレて泣き出した銀次に気が付き今度は先輩アルバイトの夏実が笑顔で声をかけてくれた。
「気にしないでください、あんまり溜め込まれたらそりゃ困りますけど、銀ちゃん達いつも返せる事になったらまず返してくれてるじゃないですか。信じてますから、食べるものに困ってるなら言ってくださいね」
「ただし連日はお断りだからな」
甘やかすと絶対こいつらつけ込んでくるぞ。店主の波児が釘を指す。この店の飴と鞭は中々絶妙だ。
「違うのです~」
銀次は慌てて店員達の誤解を解こうとタレて短くなった手足をジタバタさせて主張した。実際、先日依頼をこなして今食べるだけのお金ならあるのだ。どうにも今までの数々のせいか彼と相棒は常に一文無しで悩みといったらその日その日の食事だけだと思われているところがある。否定しきれないのが悲しいのだが。
「コレ、コレなのです」
銀次は先ほどから見ていたストロベリーパフェのメニューを三人に見せた。
「さすが銀次さん、これに目をつけて下さったんですね!」
やはりレナが作ったらしい。目を輝かせて得意げにがんばって描いたんですよと胸をはっている。
「だが高かないが安くもないぞ?大丈夫か、840円」
「うーん、お食事ならツケで融通してあげますけどおやつまではちょっと…」
残りの二人は少々微妙な顔だ。
「お金、お金ならあるのですっ」
「あ、この間のお仕事、ちゃんとお金になったんですね!」
「なんとかマイナスにならなかった、って所か?」
「どうしてお二人はそんなに上手くやれないんですか?」
もしかして組まない方がいいんじゃ…と続きそうだったレナの口は店主と先輩が彼女の左右に回り込んでふさいだ。
幸いレナのナイフが今度は刺さらずにすんだようで、銀次はそのまま溜息の原因を告げる。
「このイチゴがね、食べられるんだけどきっと蛮ちゃんはダメって言うだろうなーって」
肩を落としてしょんぼりと残念そうだが、店の人間たちにその理由は全く意味がわからない。
「今蛮さんいませんよね?」
まずレナが相棒の存在を問いかける。
「あいつは小銭が入るとすぐに無駄にしやがって、パチンコだな」
波児が苦々しそうに続き
「いない間に食べちゃいますか?」
最後に夏実がダイレクトに提案してみる。
「うーん…」
だが銀次はその提案に乗らない。
金はある、ダメだという相棒の蛮もいない、それなら
そうだね!蛮ちゃんいないんだもんね!食べちゃおうっと!
などといきそうなものなのだが。
困惑する店員達を他所に銀次は彼の相棒、美堂蛮の事を思っていた。
彼の相棒は非常にスタイルというものにこだわりがある。
スタイルといっても見かけの事では無く内側、彼なりの人生観というかマイルールとでもいうのか。とにかく彼には銀次からするとそれはそんなにこだわらないといけない事なのだろうか?というものを多々内面に抱えている。そのうちの一つにどうも彼はあるのだ
男が甘い可愛らしいものを好んではならない
というものが。もちろんそれは彼だけのこだわりで銀次がいくらそれを好んだところで否定もしないし、やめさせる事もない。勝手にしろ、だが俺は断る。それが彼、美堂蛮だ。
けれども、
蛮ちゃん、甘いもの絶対好きだと思うんだよねぇ
最初は銀次も彼は嫌いなのだと思っていた。しかしパフェやケーキを頼むと必ず一口二口横から食べてくる。仕方が無ぇからちょっと食ってやんよなどという風を装って。確かに銀次は自分だけ頼むと蛮にも少し勧めはするが、殊甘いものになると蛮はそもそもそれをじっと見てるのだ。気になってしょうがありません、という目で。
むしろ周囲が彼のあの目に気が付かないのが不思議なくらいの獣の目をしている気がする。パフェを前に鷹か獅子かのような目をしている蛮は正直異様だと思うのだが。
実際、周囲も異様だと思っていたが、それは嫌いだからだと解釈していた。銀次くらいなのだ、食べたくてしょうがないのを我慢しているのだとしたのは。
美堂蛮という人は、嫌いなものは何も考える事も無く切って捨てて忘れてハイお終い、なのだが好きとなるとかなりのこだわりを見せてくる。その彼が、以前この季節のイチゴ推しに釣られかけた銀次に言ったのだ
「今のイチゴなんざダメだ」
「えー?なんで?美味しそうだよ、食べたいよ蛮ちゃん」
「イチゴの旬はまだ先、五月から六月なんだよ。今の時期はハウス栽培のモンだ。ブランドもあるから悪か無ぇのは確かだろうが、本当に美味いイチゴを食いたいならもうちょっと待て」
そういって結局その時は銀次にチョコレートパフェを頼ませて、ちゃっかり自分も相伴していた。
どんな態度を見せようとも、こだわりを持っているものは好きなものだ。
銀次は蛮に対してそう解釈している。
その彼がいないスキにパフェを頼むなんてしたら態度に見せないまでもさぞガッカリするだろう。自分からは己の意地で頼むことができないだけに。
ダメだなんて言ってるけど三月のイチゴにだって実は興味があるかもしれない。
「銀ちゃんどうしたんですか、急にニヤニヤして」
夏実が不思議そうな顔で問いかける。
「蛮ちゃんの事考えてた。俺そんなにニヤニヤしてた?」
「やらしー顔してましたよー、蛮さんに言っちゃおう」
「ええーレナちゃんダメダメ、やめて」