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【腐女子向】花言葉【蛮銀】

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もう殺す、今殺す、絶対殺す、蛮は元々彼らが好きでは無かった。それでも、あの人形が彼らを気に入って、どんどんスキの無い硬い人形から間の抜けた花になっていったから。だから彼らを許していたのだ。この、己の隣に座りこむ小僧が、天野銀次が、彼らといるのを許したのだ。
自分にはできないとわかっていたから。
自分は何もできない子供だとわかっていたから、人形に命を吹き込む術を彼らに託していたのだ。
行くあての無いこの人形は、将来自分の命を、セカイを脅かす神になる。
幼い頃からそう言われていた。
会ってみれば空っぽの人形で。コレに自分がどうこうされるとも思えなければ、コレにどうこうされるセカイなぞ元から価値など無ぇんじゃねぇかと思わないではいられない。
こんな人形のせいで、自分は無力を思い知らされ、まともに生きていくことができなかったのか。誰も救えず生きてきたのか。
そう思ってしまえば何もかもが馬鹿馬鹿しく、どうにでもなれと、銀次を彼の城にそのまま置いて自分は出ていったのだが、何を思ったのか何も知らない人形は、自分のところに押しかけてきた。
ソレはそばに置いてみると思いのほかひなたの匂いがする。懐かしい、救えなかった匂い。

「落ち着いて!落ち着いてよ美堂君!!」

銀次が、今にも飛びかかろうとする蛮にしがみついて止めている。流石にもう泣いている場合ではない。
三人は笑っているが、蛮にかかればこの辺りなど簡単に滅茶苦茶にできるのだ。
彼の悪名も実力も知っていようになんて事を言うのか、お願いだからと必死に蛮に声をかけて暴れようとする体を抱きしめる。

なあ、お前ら、奪還屋を継がないか?

「「はあ?」」

子供達の声がそろって響く。
そろそろ引退時だと思っていてな。前から後を継がせそうな奴を探していたんだ
つまり銀次を手伝いと称してひっぱり回していたのは、元々後継として目をつけていたという事なのだろう。
三人もいて、なお仕事をこなすのに手伝いが必要だなどとどれだけ無能なのだと蛮は思っていたのだが。
「だったらこのカミナリ小僧一人に継がせりゃいいだろう。何で俺まで」
馬鹿じゃないのかこの三人はと蛮は言うが
何言ってんだ、いつもついていたくせに
全てお見通しですよと言わんばかりの顔で取り合わない。
けれど蛮からすればそれは仕方のない事なのだ。銀次は確かに常人とは全てが違う。なにもかも、存在がデタラメだ。だがそれがどうしたというのだろう。コレは結局ただの人形で、ただの行くあての無い子供たちのリーダーだっただけなのだ。
それがいきなり裏稼業始めます、などと言ってきたら誰だってできるわけ無ぇだろと言うはずなのだ。
馬鹿しかいないのか。裏稼業を勧めてくる奴も、それを聞き入れるのもどうかしてるしありえない。
だから、つまり、つい、心配で。
だけどそう思ってるとバレるのも業腹で。
そっとこっそり、銀次がお仕事だと出かけた日はついていっていただけなのだ。
まさか気づかれているだなんてそんな事。
で?どうするよ?邪眼の男?今ならなんと、このスバル360、てんとう虫君が無料でついてくるぜ?
己だけの秘密だと思っていた事がすっかりバレていた羞恥で言葉をつまらせている蛮に、ウニが悪魔の顔で話を続ける。
お前ら住むところ無くなっちまったんだろう?とりあえず仮の住まいにこの車で暮らせばいいじゃ無ぇか
ナニ、きっとすぐ住処を手に入れられる程度の収入はあるさ
うさんくさすぎる勧誘に、蛮はともかく銀次はすっかり目を輝かせている。
「本当ですか!?でもおじさん達はどうするの?」
おじさんと言われて三人がそろって嫌な顔をした。
お 兄 さ ん 達の事は心配いら無ぇ、これからだってまだまだ他にやること、できる事があんだよ。だが

奪還屋は、もう、潮時なんだ

どういう事かと銀次が首をかしげるが。その言葉の意味を彼らは言うつもりが無いようで、たださあどうする?と二人を見ている。
銀次がどうしよう?という顔で蛮を見た。
蛮はそれまで立っていたものをズルズルと座り込んで、最初と逆に銀次が立って蛮が座っている状態だ。
結局、自分は誰も救えないのか
裏稼業だなどと言ってはみても、三人からは自分の良く知る、自分も纏っているだろう醜い臭いはしてこない。だから最終的に蛮は銀次が奪還屋を手伝う事に文句を言うのをやめたのだ。
自分では無理だ。
ひなたを連れて、ひなたと共に。自分が思いつく生きてきたセカイは歩けない。悪か無い時もあったが、それは自分だからだ。誰も救えない、救われたくて仕方のない、自分の生きるセカイだったからだ。
人をずっと救ってきた、ひなたに見せていいセカイなど知らない。見せられるセカイなど知らない。
泣いている萎れたチューリップみたいな子供を泣き止ます方法も知らない

「美堂君、一緒に奪還屋、やろうよ」

何で銀次が自分を誘うのかわからない。もしかしたら銀次もわからないのかもしれない。
けれどわかるのは、自分は、美堂蛮は、天野銀次と始めたい。何をと言われたら答えられないが、彼と始めたい。それが奪還屋という形でできるというなら受けてみようか。
このひなたを、いつか必ず救いたい。いつか必ず泣き止ませたい。
過去のひなたを思い出す。
彼女は、かなわぬ恋に捕まった。
高架下脇の歩道、日陰に座る蛮を見下ろして、ひなたの黄色いチューリップが笑っている。