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祝福と宣言

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高校3年生、受験も終わりみんなが無事に志望校への進学が決まって『卒業旅行』を!!って話です。








先週、俺達は3年間過ごしてきた学び舎を無事卒業した。
彼女も同じ日に卒業式を無事に迎え、今日は現在自分の彼女である『水谷 雫』を争ってきた男『吉田 春』が来週渡米する事になって、その前にいつもの仲間たちで集まり卒業旅行と銘打って旅行する初日である。
行先は蓼科。以前この仲間たちで来た事のある、マーボこと綾小路家の別荘である。
今回は約3日間の旅で、オレとトミオが運転する2台の車で移動することが決まっている。
オレの車には彼女である雫、マーボ、バカ女。
トミオの車にはハル、ジョージ、佐々原、メガネ女、チビ、伊代の同情が決定していた。
ハルの居候先であるバッティングセンターが待ち合わせ場所で、先日父親から合格祝いに買って貰った車に伊代を乗せ、向かう。
約10ヶ月前に習得した運転免許。学校では卒業前まで実は運転することは禁止されていたが、オレも含めてそんな校則を守っていた奴は1人もいない。
彼女である雫も何度も乗っているし、友人達も既に何度も乗っている。
待ち合わせの場所には既に全員揃っていて、一通り道の確認が終わった後に全員車に乗り込む。

『カーナビあって良かった、安心する。でも、賢二君がこの旅行を言いだしたのには驚いた。』
無機質な彼女の声が助手席から聞こえてきた。
バカ女『本当ですよねぇ~』
マーボ『確かにヤマケンからってのは珍しいよな』
『まぁーな。なんだかんだこのメンバーでいっつも遊んでたし、ハルが向こうに行く前に旅行でもしないと次に全員揃うのは多分俺達の結婚式あたりだろ?』
マーボ『なんか、この3年間でヤマケンが一番変わったよな。丸くなったし、ガリ勉以外の女には全く興味示さないしさ』
『俺たちゃもう、ただ恋人って訳じゃないしな。この間結納も交わして、お互い婚約者って立場になったんだから色々しっかりやってかねぇと雫の親に会わす顔がねぇんだよ』
卒業した3日後の日曜日の大安の日に雫と俺は結納を交わした。
大学も学部も一緒で、オレと彼女の両親は医学生は忙しいから一緒に住んではどうだろうか?、それなら入籍は一人前の医者になってからにしろ、先に結納を交わして婚約者となり一緒に住んだ方が世間体が良いと言う理由で結納の日を迎えたのだ。
この話題に乗ってくれた両家の親たちにオレは、深く感謝した。
医学生が忙しいのは知っていたし、その忙しさでまともな会話を持てず泣く泣く破局していくと言う悲惨な結果を迎えて行く医者を何人も知っていたからだ。
彼女との関係が深い、と思いつつもやはりどこか不安だった。
だが、婚約者・同棲と言うキーワードによって色々な事が解消された。
この件が決まった時、オレは長年ライバルだったハルに1番に報告した。
ヤツは俺達が付き合いだしてからも彼女を想っていたし(何故か他の人間は気付いてなかったが)、何よりオレと張る程色んな女にアプローチされても高校時代の3年間に付き合ったのが彼女のみで、それが益々不安だった。彼女はハルからのアプローチを無視していたが、正直こちらは気が気でなかった。
だが、いつもヤツは己の幸せより彼女の幸せを1番に願っていた。
彼女を安心させるのが俺なら、彼女を笑顔にするのは(頻度の違いもあるが)アイツだった。
オレはこの旅行中にアイツが他の女に目を向けて行くように、アイツが自分の幸せを1番に考えるように、彼女を幸せにする男が別にいると自覚してほしくて企画したのだ。
この気持は嫉妬や妬みなんかではなく、長年ライバルだった男への俺なりの気遣いだった。
(『アイツもそろそろ自分の幸せのために生きて欲しい』)

道中、動物園や道の駅に寄り道しながら休憩を入れつつ別荘に到着したのが午後18:00。
完全に空腹状態だった俺達は旅行前に決めていた振り分け通り防犯面の確認、夕飯作り、軽い掃除をして夕飯にありついたのは19:00すぎ。今夜のメニューはハヤシライス。
全員で居間に座り、彼女たちが作った料理を女共が装って各自に配られていく。
『賢二君、受け取って』
彼女がオレに皿を渡しながら、オレの横に座ってくる。
全員に皿が配られ、いつものガヤガヤとした談笑しながらの食事が始まる。
明日は何をするか?と皆で相談してたところにハルが近くにある花畑の高原に行く事を提案してきた。
それなら誰かが運転しなくても良いし、そこでかくれんぼをしようと。
オレと雫以外の全員が賛成で、結果多数決で明日の予定が決まった。

深夜3:00頃.中々眠りに着けないオレが彼女と付き合う前に『力のモーメント』を話題に気を引こうとしバルコニーへ移動する。
そこにはオレが長年ライバルだった男が先客として星空を眺めていた。
男と二人きりで星空・・・、少し微妙な気もしたがどうせ眠れないし、たまにはこの男とゆっくり話すのも悪くないと思った。
『眠れないのか?』
ハル『おぉ、ヤマケン。お疲れな。運転で疲れてないのか?』
『んー、そこまで疲れてねえな。おまえこそ散々騒いでて疲れてないのか?』
ハル『全然疲れてねぇ・・・星ってこんなにキレイだったんだな』
『お前さ、むこう行っても頑張れよ。
ガラじゃねぇがよ・・・伊代を無視して考えるとこのなかで1番付き合いが長いのはお前だし、自分の幸せを考えて生きてけよ』
ハル『おー・・・ってお前が今回この旅行を企画してくれたんだよな。ありがてぇな。』
『それで感謝してるつもりかよ?まっ、良いけどさ』
ハル『お前さ、その、なんだ  シズクを頼んだぞ。』
『なんだそれ。お前に言われなくても絶対幸せにするよ。
惚れた女くらいお前に心配されなくても幸せにするに決まってんだろが』
ハル『だよな、まぁ なんだ 色々お前にも感謝してる。
俺にはシズクを幸せにする事なんて無理だったと思うしさ。最初、シズクから付き合いだしたって聞いたときは凹んだけど、お前がシズクを幸せにしてると思ったから、向こうに行く覚悟もできたしさ』
『バカか、お前は。いい加減自分も幸せになる事考えろよ』
ハル『んー』
『じゃ、オレはそろそろ戻るわ』
オレは部屋に戻り、早くもこの旅行を企画して良かったと実感した。
長年ライバルだった、普段は意味不明な男と少ない時間だったがちゃんと話せた気がする。
こうして、俺達の初日は過ぎて行った。


2日目.朝から女性たちが朝食の準備をしている。
ハルはもっぱら名古屋と言う地名の鶏の世話をしていて気持ちのよい天気の中、今朝は和食で朝食を迎えることになった。
朝食を終えて、少しの間は自由時間。
女性たちが昼食用の弁当を作ってる中、彼女が朝食の準備をほとんどしたたらしく1人仲間達から外されて読書をしているオレの傍で彼女より30cm程高いところに本棚の本を取ろうとして、オレが取ってやるとフランス語で描かれた物語を読み始めた。
前に来た時は少しだけ読めると言ってたフランス語のも現在は日常会話程度なら読み書き出来るほどまでレベルを上げていた。
彼女の勤勉さには本当に驚く。
元々賢い女性だが、普段の努力故に彼女はこの春通いだすT大で主席合格をオレと共に果たしていた。
作品名:祝福と宣言 作家名:石井恵