笠松先輩CP詰め
笠日
目の前の光景に日向はため息を漏らす。
「迷惑かけて悪ぃな」
「いえ、大丈夫です」
何が、と言われずとも目の前の光景を指していることは分かった。自分の後輩に会いに来た、笠松の後輩のことだろう。
長身のキラキラした男に絡まれている一般身長の後輩の様子を見て、苦しそうなどと単純な感想を抱しかなかった。
日向は呆れた様子の笠松を横目で見やる。保護者のように振舞っているが、その理由はもともとの面倒見の良さかダメな奴を放っておけない質なのか日向には判断が付かない。
無言も気まずいとかける言葉を探す。
「笠松さんまで来るなんて珍しいですね」
「ああ、丁度休みでこっちのほうまで出る用事があったんだが、誠凛の近くだから寄ってくっつって聞かなくて」
面倒くさいと顔に書いてあった。
「ほんと、黄瀬って黒子に懐いてますよね」
「おー、見たことねぇくらいに嬉しそうだしな」
普段、黄瀬を見慣れている笠松がそういうのなら、黄瀬のテンションが高い理由もそうだろう。
「まぁ、俺も偵察がてら大人しく付いてきたわけだが」
先ほどと替わらない口調で放たれた言葉に、思わず目を見開いて笠松に顔を向ける。
目線の高さの変わらない男は横目で日向を見ると、にやりと笑った。
「そんな警戒すんなよ。別にどんな練習をしようが、俺らは俺らなりに全力を尽くすだけだ」
「えっと……」
戸惑う様子の日向に、笠松はくつくつと笑った。
「良い面構えになってきたと思うぜ?」
キャプテンとして。
そう付け加えて、日向の肩にポンと手を置いた。
「その調子で、もっと追いかけて来いよ。じゃないとつまらねぇだろ」
煽るような目つきに、思わず息が詰まりそうになる。
黄瀬を呼ぶために離れた笠松の手が置かれた場所が、まるで熱を持ったように熱く広がっていく。
これじゃ、少しでもよそ見すると追いつけなくなりそうだ、と日向は笠松から視線を外せなかった。