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確かに元は銀次たちと無限城で仲間だったし元四天王という肩書きはそれぞれ意味合いが違っていようとも全員誇りに思っているのも知っている。けれどそれとこれとはまた別ものだろう、彼らは銀次を筆頭に相当の頑固者揃いだ。もともとの彼らの矜持はいくら仲間の説得だろうと簡単に曲がる事は無いように見える。まして男女間の事となると、当人同士の問題でもあるから余計なお世話感も強い。いくらリーダーだった銀次の言葉だろうと聞き入れるものなのだろうか。
「あっさりじゃなかったですよ」
大変でしたー。全然聞いてくれなくて。
銀次がセットドリンクで頼んだアイスコーヒーにガムシロップとミルクを入れながら答える。
「俺達には言葉が無くても通じているものがある、の一点張りで」
言いそうなことだな、と波児は苦笑した。確かに通じてる部分もあるだろうが、通じていない事もあるからこちらはこうして大変な目にあっているのだ、それで済まされるのは少々納得がいかない。
「でもね、俺思ったから言ったんです」
そこまで銀次が言うのを聞いて蛮が溜息をつくと自分のセットドリンクに口をつける。ホットコーヒーだ。

「でもね柾、柾が俺に言わなくてもわかると思っていた事も、柾が俺から聞かなくてもわかってると思っていた事も、何一つ通じて無かったから俺はきっと無限城を出たんだよって。言わなくても大丈夫だったって、言わないだけでダメになることってきっとたくさんあると思うって」

銀次の言葉を聞いて波児は先ほどの蛮と同じような顔になる。
「そしたら柾はすぐにヘヴンさんに電話をしてくれたみたいで、良かった、二人がもっとうまく仲良くなれるといいですよね」
心底仲間を思って笑う銀次の笑顔を見ながら波児は黙って溜息をつくと自分用のコーヒーを淹れる。
なるべく苦いものが飲みたい。LINEで一部始終を見ていただろう四天王達の胸の痛みが伝染った気がした。
すぐ近くで今日のセットメニュー、ペペロンチーノのいい匂いがする。
「もうすぐできますよー」
夏美が明るい声をかけ、レナが盛り付けの為に皿を並べていた。