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「ヘタリア」【プロイセンの一日】

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「プロイセンの一日」


西暦2222年1月×日。ギルベルト・バイルシュミットは「国」に復活した。
その国の名は、「ケーニヒスベルク共和国」と言った。

***********************

ベルの音に急いで玄関に向かったギルベルトの目の前に、両手に花束を抱えたフェリシアーノが現れた。
「おめでとう!プロイセン!また「国」に復帰したんだねぇ。俺、きっとプロイセンは「国」に戻れると思ってたよ〜!」
「おお!ありがとうな!イタリアちゃん!おっと、今は『イタリア・総代表国』「ヴェネチア共和国」ちゃんだったな!」
「ヴェ、どっちでもいいよぉ。呼びやすい方で。とにかくおめでとう!あれ?そういえば、ドイツはどこ?」
「あー、ヴェストは俺の復帰のお祝いに、どでかいク―ヘン焼いてて・・」
「兄さん!今日の主役が何をしているんだ!?さっさと正装に着替えてきてくれ!もうそろそろみんなが集まる時間だ」
「あー、わかったぜ!でもよう、おとといチューリンゲンが「国」になった祝いをやったばかりだろ?俺のお祝いに、みんなちゃんときてくれんのか?」
「何を言ってるんだ!今月は兄さんの「国」成立祝いの後、まだ20以上の「国家成立祝典」が控えてるんだぞ。さっさと兄さんの祝いを終わらせないとみんなの祝いが出来ん!」
エプロン姿で、ドイツことルートヴィッヒが忙しそうにボールの中身をかき回している。
「ヴェー・・・。ねえドイツ、お前の兄弟、いったい何人「国」になるの?」
「・・・多分・・・後は・・・150くらいだと思うぞ」
「うわあ、150か・・・・。すごいねえ。さすが兄弟多いドイツらしいや」
「お前のところだって、20や30は分裂して「国」宣言しただろうが。んったくどこのどいつもみんな「国」になりたがってばかりで・・・!これではますます問題が片付かん!」
「まあ、堅い事言うなよ、ヴェスト!そのおかげで俺も「国」に戻れたんだろうがよ」
「兄さんが「国」の戻れたのは俺も嬉しい。だが、そのせいでもう国連はパンク状態だ!昨日の会議も元「国」だったと主張するものの陳情を聞いて終わってしまったし・・・」

今、世界は分裂している。
猛烈に。


最初はちょっとしたきっかけだった。
その始まりは、21世紀初頭、多分日本とドイツとイギリスとベルギーと・・・・・その他もろもろ。
日本で二つ目の「都」を主張するものが現れたり、ドイツである州が「我々はドイツではなくバイ0ルン」であると言ったり、欧州の島国の北の方が独立すると言ったり、どケチな兄国に経済的に遅れてる地域を分断しようと言われてるチョコの国とか・・・国別れの機運が、世界のあちこちで高まったりした。
世界には民族問題や移民問題、宗教の違い貧富の差やら紛争や小競り合いやらもろもろあったが一応「国」はまとまっていた。
それが22世紀になって変わった。
ある一つの発明。
安価で安全で、無尽蔵のエネルギーを簡単な装置一つで生みだせるもの。
それにより環境破壊と飢饉と貧富の差から人類は永遠に解放されたのだった。
まず変わったのは物流と交通。
車ではなく道路が動き、飛行機ではなく空に車が走り、海は高速チューブで大陸とつながった。人々は国境を感じることなく、どこにでも安価に短時間で移動が可能になった。エネルギーが使いたい放題という事は、コストが大幅に削減されるという事だ。産業と農業のないところに開発の手と新たな労働者を求めて拡大する経済。またたく間に貧困と飢饉がなくなった。一部の大富豪を除いて、どこの国の国民もおなじような生活水準になった。各国の首脳と国連が呆れる速さで。
世界中均一化された工業と農業。飛躍的に進む医療と長い寿命。もはや世界のどこへ行っても同じような都市、同じような農地、同じような生活基準。特別区になったサバンナやジャングルや世界遺産や自然遺産のある都市だけが、観光地として個別化されている。
豊かになったことで、さらに豊かな土地を欲しがり紛争が起きるものと踏んだ国連だったが一部の紛争がおこっただけであっけなく解決してしまった。
そう、「人」はある一定レベルの生活で満ち足りると、それ以上を苦労して命をかけてまで欲しがるものなどいなくなったのだ。独裁者が現れても、誰もそれに従わない。だって、そいつについてたって、命の危険はあるし、そんな危ないことしなくたってちょっと隣に逃げればいい生活できるし。亡命するものをさっさと受け入れる余裕のある国ばかりの現状で独裁者が生まれるはずもない。
そんなわけで、紛争地帯と独裁国家は綺麗に地球上から無くなった。
後残るは人種と宗教問題。しかし国境が意味をなさなくなり誰でもすぐにどこにでも行ける今、猛烈に進んだ混血と文化の希薄化がそれすらも問題ではなくした。
そんな時、誰もが気がついた。
自分達の国の独自の「民族」がもはや少数派であることを悟り、各国でマイノリティとマジョリティは入れ替わり、混血でない純血種は貴重になっていることに。
こうして人類は一つにまとまる、と誰もが思っている全く正反対の事がおき始めた。
経済も産業も人種すら均一化した世界で、自らの文化や人種としての価値こそが、他と差別化する唯一の道だと。
そうして注目されたのが小さな国々・ミクロネーションだった。
独立宣言をしているが、「国」自体は小さく「宗主国」の元で静かに主張しながら「国」を「運営」している。国土こそ狭かったり海の上だったりのミクロネーション。しかし彼らは強烈な「個性」を打ち出して暮らしている。
そこに人々は飛び付いた。
もとからあるミクロネーションは「国」の「独立の仕方」の公演にひっぱりだこになっていた。独自のルール作り。元々の「宗主国」との兼ね合いなど。
シーランドやネイは立派な「国」・ミクロネーションの星として、大いにもてはやされた。

まず日本で「阪神共和国」が宣言を挙げた。そして日本の中にありながらも独自のルールで暮らし始めた。
そして普通に連合国だったところが次々と独立を果たす。ある欧州の島国は「兄達」が独立した。そして、元々別の国だったが一つになった国々・・・・欧州の南の方とか真ん中寄りの北の方の国とか。最も多い時「国」の数が300以上あったドイツなどは特に大変だった。
皆が皆、独立したがった。独自の民族・習慣・風習を失わないうちに。
小競り合いや新たな「国境」争いが起きるかと思われたが、県境や州境があっさりと「国境」として受け入れられた。
あっと言う間に国連に「国」を申請する国は2000を超えた・・・・・。


なぜ人類は一つになろうとせずに分裂を始めたのか?
それはわからない。
数少なくなった純血種を守ろうとするのか、何もかも満ち足りた生活の中、「個」としての差別化こそが生きる目的になったものか。

あわてたのは国連だった。
なにせ、分裂し続ける「国々」は増え続け、独立を求めてくる。
ドイツとイタリアだけで500を超える申請があった頃、あっさりと分裂と独立を終えた国もあった。それは日本だった。
日本は88の独立国家を擁して分裂を終えた。それも代表・主権は「日本」にあり、それぞれの文化・産物・風習を守りながらも団結する、という形で。