Wizard//Magica Wish −11−
「…はっ…」
「ハルト!!」
「この世界に…希望なんていらない!!愛なんていらない!!人と人の繋がりなんていらない!!全て、消え去ってしまえぇぇぇぇ!!!」
その瞬間、フェニックスの背中から大きな炎の翼が広がり、コンクリートの筈の地面を燃やし始めた。するとビルを支える鉄筋が現れ、溶かしていった…。
「二人とも!そこは危ないよ!!このままじゃビルが壊れちゃう!!」
「まどかちゃん!…駄目だ、ここは撤退だ。まどかちゃんの言うとおり…このまま戦い続けてもビルが持たない…杏子ちゃんも…」
「いい加減にしろ!メデューサァァァ!!」
「杏子ちゃん!?」
駄目だ…ついに痺れを切らした杏子ちゃんが後ずさるどころかまたフェニックスに突っ込んでいった。杏子ちゃんだって傷を負っている。長くは持たないだろう。ここは、無理やりでも杏子ちゃんを捕まえてビルから降りないと…。
「杏子ちゃ…あっ…ぐ…う…」
「ハルトくん!どうしたの!?」
「魔法…使い過ぎた…やばっ…あ…」
身体の神経が麻痺して立つことさえ厳しくなる。まどかちゃんに肩を借してもらい、なんとか立っている状態だ。
「ぐっ…あぁっ!!」
「あなたは一体何度斬れば倒れるの!?」
「お前を…止めるまでだ!!」
「いい加減に、しなっさい!!!!」
杏子ちゃんがボロボロになっていく…俺はまた何も出来ないのか…
「ぐう…くそっ…」
「ハルトくん…」
「キョーコ!!ハルト!!」
「えっ…この声ってまさか…」
「ゆ、ゆまちゃん!!?」
後ろの入口から聞き覚えのある声が響き渡った。
まさか…そんな筈がない…
なんで…
何故ここに!?
「ハルト!ゆま、助けにきた!!」
「ば、バカ!!動くなっていっただろ!!」
「ゆまちゃん!!今すぐここから離れて!!」
「はぁ…はぁ…う、嘘だろ…ゆ、ゆま?」
「あの子も…魔法少女?…ふんっ……目障りよっ!!」
「ま、待て!!」
「ハァァァっ!!」
「えっ…」
「避けろ、ゆまちゃぁぁぁぁん!!」
フェニックスから放たれた豪炎弾。
ものすごい速さでそれは ゆまちゃんへと放たれた。
俺は手を伸ばす。
けど、もう遅かった。
フェニックスから放たれた豪炎弾は…
「きゃぁぁぁぁっ!!!!」
ゆまちゃんに、直撃した。
「ゆまちゃぁぁぁぁん!!!!」
「ゆまちゃんっ!!?くそぉぉぉ!!!!」
俺と まどかちゃんは急いでゆまちゃんの元へと駆け寄った。
酷い…全身大火傷だ。
「しっかりしろゆまちゃん!!おい!ゆまちゃん!!」
「はぁ…っ!はぁ…っ!」
「っっっっっ!!!!お…お前ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
「ぐあぁぁぁっ!!!こ、この女!!どこからそんな力がっ!!?」
「嘘だよ…こんなのってあんまりだよぉ!!」
「駄目だ…死んじゃだめだ ゆまちゃん!!」
「ハ…ハル……ト…ゆま…死んじゃうの?」
「死ぬわけないだろ!!諦めるな!!」
「ひっぐ…ゆまちゃん!!ゆまちゃぁぁぁん!!」
「ね、ねぇ…はぁ…はぁ…ハルト……」
「喋っちゃ駄目だ!!おとなしくしてろ!!」
「ゆま…ね……ちょっとだったけど……うっ……」
「え…?」
「ゆまは…ハルトと…キョーコと…一緒に過ごせて…とっても嬉しかったよ……」
「何言ってるんだ!これからもずっと一緒だ!!」
「うぅ…あぁぁぁぁぁぁん!!!!」
まどかちゃんは察したらしい。
そう、ゆまちゃんのソウルジェムがとてつもない速さで穢れが溜まっている。
これは…以前のさやかちゃんと同じ現象だ。
「だからね…これからも…一緒に居たいんだ…だから…これを…」
ゆまちゃんは両手を震えさせながら自分のソウルジェムを俺に見せた。
何だ…何を言っているんだ…。
「ゆまのソウルジェムを…使って……そして…キョーコを助けてあげて…うっ…ゆま、キョーコの役に…たちた……あぁぁ…」
「っ…そ、そんな…」
「大丈夫…ゆまはね……指輪になっても……ゆま は ゆま だから…へへっ……」
胸の鼓動が高鳴る…
駄目だ…このままでは ゆまちゃんが魔女に…
でも…何か手段があるかも知れない。
けど、このままにする訳には…。
「うっ…ぐあぁぁっ!!!!」
「きょ、杏子ちゃん!!」
「なっ…」
杏子ちゃんも限界だ…。
どうすれば良い?
俺は、ゆまちゃんと、杏子ちゃん…どっちを選べば良い!!?
頼む…だれか教えてくれ…
頼む…頼む…頼むっ!!
俺は…俺はぁぁぁぁぁぁ!!!!
作品名:Wizard//Magica Wish −11− 作家名:a-o-w