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【かいねこ】モノクロ/カラー

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「モノクロ/カラー」



あそこだと示され、カイトは物憂げに視線を上げる。
目の前にそびえ立つ塔は、外壁を蔓に覆われ、明らかに修繕が必要なひび割れがいくつも目に付いた。

「放っておけば、いずれ倒れるんじゃないですか?」

投げやりな言葉に、傍らにいる異形の魔物は不明瞭な音を漏らす。

『いずれ、では困るな。そこまで気長に待てん』
「どうせ、時間はたっぷりあるでしょう」
『お前が口出しすることじゃない』

ずるり、と音がして、異形が向きを変えた。どちらが正面かは判別できないが。

『最上階に閉じこめられた人形を連れてこい』
「自分で行かないんですか?」
『浄化の術が掛かっている。魔界に戻されるのは不味い』
「たかが人間の掛けた術、回避するくらい簡単でしょう?」

視線すら動かさずにカイトが問うと、魔物はまた不明瞭な音を漏らす。

『ただ連れてくるだけでは駄目だ。きちんと契約を結べ。契約なしで手を出すと、面倒だからな』

相手のの言葉に、カイトはやっと視線を降ろすと、肩を竦めた。

「この前の魔道士では、満足できなかったのですか」
『ああ、あいつは上物だった』

魔物がぐねぐねと体を歪め、突き出た先端で塔を指し示す。

『塔に閉じこめられているのは、そいつの残した人形だ』