青い光
雷蔵の涙が好きだ。泣いてほしいわけじゃないけれど、雷蔵の涙を見るのが好きだ。
雷蔵の頬を両手で包むように触れた。
雷蔵も同じように俺に触れた。
額を付けたが、触れたかどうかわからなかった。まるで溶け合うような感覚だった。
「僕はわかってるよ、三郎」
額をつけたまま、雷蔵がくれる言葉は、俺の体に震えるように響く。
「何をわかってるって?」
涙は止まらない、けれど雷蔵が一緒に泣いてくれるのが嬉しい。俺は悪態をつくような言い方で問うた。
「お前が誰より泣き虫で、僕がいなくちゃ何もできないこと」
「…やっぱり君はわかってない」
まだふてくされた返事しか返さない俺に、雷蔵は笑う。
「おや」
「私がどれだけ君なしではどうしようもないか、わかってないんだ」
「わかってるったら」
くすくすと雷蔵が笑う。こんな間近で笑う雷蔵をみていると、また切なくなってくる。
「…絶対分かってない」
目の前の男がどんな劣情を君に持っているか、知っているっていうのか?
「もー、お前もしつこいね」
やっぱり雷蔵は笑う。どうして君はこんな俺にそんなに優しいの?
「しつこいさ」
君が私をとても好きだと思ってくれているのを私は知ってる。
でも、絶対に私のほうが、絶対に君を好きだ。
口付けたい。
そう頭の中に文字を並べれば、声に出さなくても君に悟られる。
君は笑うのをやめる。
俺は額を離さずに、君に口付ける。
部屋に吹き込む風が俺の背中を冷やしていく。
冷やされれば冷やされるほど、体の熱はよりくっきりと輪郭を濃くなりこそすれ、熱を冷ましてくれはしないのだと、前に自覚していたはずなのに。
いつか青い空はくすんでいく。冬が来る。
その気温に熱を誤魔化されていた季節が去り、いよいよもって雷蔵から目を離せなくなる冬が来る。
雷蔵がそばにいてくれるなら、それが辛くても俺は幸せだと思いながら、雷蔵の柔らかな唇を、さらに深く貪る。