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キ○レツ大百科に関するとある考察

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「そう!! 意図的に歌詞が省かれたのよ!! いや、正確には伏せられたと考えるのが自然かしらね!!」
 伏せられた!? どういうことなんだ!? 誰が、なんのために!? そんな困惑する俺の表情を読み取ったのか、その口元に悪戯っぽい微笑を浮かべながらも、彼女は威勢よく続ける。
「つまり、『炒めようミンチ』という段階では、歌詞こそ自主規制されてはいるものの、その裏で『ミンチとタマネギ』が炒められている筈なのよっ! その上で、振りかけられた『塩コショウ』の意味する物は……」
 俺は頭の中でコロッケのピースを一つ一つ符合させていく……。
 『炒めようミンチ。塩コショウで』
 本来の行程とは異なった歌詞……。省かれたタマネギの存在……。意図的にタマネギという単語を避けたのだとすれば、それは作詞者にとって何か都合の悪い事があったと考えるのが自然……。テレビを放映するサイドの人間が怖れること。それは……!
「放送禁止コードか……!」
「ふふん」
 気づいたかと言わんばかりに、彼女はこめかみをトントンとつついた。
「そ、そうだ……!! 『塩コショウ』!! 愛情深まった二人には、より刺激の強いスパイスが投入されていくという訳だな!!」
「ご名答!! ここに来て愛は熱く激しい物となってきていたのよ!! 作詞者が敢えて『タマネギ』という隠語を伏字にした理由も頷けるわ! なにせ、ただでさえ『炒めようミンチとタマネギ』なんてギリギリなのに、そこに『塩コショウ』が乱舞だなんて、さすがにモロだからね!!!」
「そ、そうだったのか……っ!」
 既に興奮状態の俺には最早、一体何が『モロ』だというのか、その人類の進化の一歩先をゆく下ネタにツッコミを入れるという概念すら存在しなかった。
「さて、ここに来て大人の愛を育んでいく二人だが……ここで問題が起こる訳だ」
 彼女の口調もいよいよ何を意識しているのかわかったものではない不自然極まった物となっていたが、今の俺には謎を解き明かしてくれるようなその声が不思議と心地よかった。
「問題……? それは一体!?」
「炒めて放置されたタマネギとミンチは、次第にその余熱が冷めていく……。幾らその相手が、かつて熱烈に慕い、憧れた意中の女子だとしても、ね。所詮彼らは恋に恋していただけ。大人になった二人はやがて気づいていくのさ」
「そ、そんな! 二人はどうなってしまうというんだ!?」
 頭を抱えて悶絶する俺に、彼女は目を瞑って怪しく囁く。
「二人には掻き消えてしまったコンロの火を付ける起爆剤が必要になるのよ。それは、強火でなくたって構わない。弱火だっていいの……。ただ、二人の熱が冷め切らない程度に維持できれば……。この均衡が辛うじて保たれる程度の熱さえあるのなら……ね」
 先ほどとは打って変わって、どこか憂いを汲み取れるその言葉を聞いた瞬間。俺の中で一つの仮説が不意に浮かび上がった。
「ま、まさか……! まさか……!! 俺は今、とても恐ろしい想像をしているッ!!」
 それを『想像した』、と認識した瞬間、俺の体には即座に冷や汗が濁流のように流れだし、身体がガタガタと震えだした……!
「残念だけど……。大人の汚らわしい恋愛などそんなものよ……。恐らくは、アンタの想像しているとおりだわ」
「まさか……! その起爆剤と言うのはッ!!」
 瞬間。
『覚悟を決めろ……』そう言いたげな視線を俺に突き刺した彼女は、縮こまり丸くなる俺を蹴飛ばさん勢いで立ち上がる……!!
「『混ぜたならッ!! ポテトッ!! 丸く握れィッ!!!!』」
「かつて雑巾のように投げ捨てたじゃがいもと、3Pだとぉぉぉぉッ!!!??」
 ありえない!!!! 信じられない!!!!? それが人間の所業なのか!!?!!? あ、人間じゃなかった……。
「そう、奴らはミンチの事をさぞ恨んでいることでしょうね。かつて茹でられ皮を剥かれ、用が済んだらグニグニと潰されて放置だったのだから……。でも、心のどこかで……短い間ではあったものの、芋女なんかを愛してくれたあの人の微笑み。そして、いつか味わった、甘酸っぱくて淡い幻の日々を、忘れられないでいるのよ……。例えそれが、芝居だったとしても」
「その弱みを利用して……『丸く握れ』……。うまく丸め込もうとしている訳か……。そんなの、そんなのって……!! じゃがいもは都合のいい女なんかじゃないわ!!!」
「落ち着きなさい。じゃがいもの気持ちに立つんじゃない」
 彼女の紡ぐ言の葉を聞き、ますます他人という物が信じられなくなる……。狂ってる……。ミンチだけじゃない……。じゃがいももだ……!
「しかもそこからは酷いもんだ!!」
 俺は居ても立ってもいられず、思わず立ち上がると、天を仰ぐように手を振り上げて嘆く。
「酒池肉林と呼ぶべきか阿鼻叫喚と形容すべきか!! 『小麦粉、卵に、パン粉をまぶして』だって!? 揉みくちゃ状態じゃないか!! ぶちまけられる物は全部ぶちまけられて、汚れに汚れを重ねるだけとなってしまった営み……! 快楽に身を委ねるだけの日々!! 大人って……。大人の恋愛って!!!!」
 そこまで言って俺は、不意に脱力し、腰が抜けるようにその場に崩れ落ちてしまった。疲労から? 大人の愛に嫌気がさしたから? 理由はひどくぼんやりとしていた……。ただ、何もかもが嫌になっている……。それだけだ……。
 そんな中彼女だけは、憂いに満ちた瞳を変えず、現実を説く大人のように淡々と語るのだった。
「そして、最後は『揚げれば、コロッケ』だよ……。ハッ。それで全てフィニッシュなのよ……。結局、二言目には揚げる揚げないの世界なのよ……。終着点なんて、パスタだフレンチだなんて優雅なもんじゃない……。合挽きの、ぐっちゃぐちゃな混沌しかないってこと……」
「そんな…………」
「…………」
「…………」
「…………」


 気まずい空気が部屋を支配する。コロッケの話なんてしなければよかった……。そうすれば、無垢なまま平穏な日常を過ごすことができたのに。



 ああ……。俺は……俺って奴は本当に……。






「………………てゆーか」
「ん?」
「怒られるぞっ!!!!?」
「何に?」
「何かしらにだよ!!!!!」
 興奮が収まることで、すんでの所で我に帰った俺。うおお危ないところだった……!! あと一歩で帰ってこれなくなる所だったんじゃないだろうか!?
 そんなツッコミ気質を取り戻した俺を、この女はつまらなそうに一瞥しやがった。
「しょうがないでしょ。時に現実は残酷な物よ。そんな俗世の実体を、明るい歌詞と曲調に乗せてかつて幼かった私たちに言い聞かせていた。それがこの魔物の正体な訳で……」
「そんな訳あるか!!! お前が魔の者だよ!! お前静岡県民にタコ殴りにされるぞ!!」
「あーーー!!! やっぱアンタサイレントヒルの刺客だったわね!! 道理で詳しいはずよ!!!」
 参考までに言っておくと、静岡はキテレツ大百科の再放送率が尋常じゃないくらい多く、『静岡県民はドラえもんよりキテレツに詳しい』なんてよく皮肉られるものです。