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声(仮面ライダーW SS)

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(Cyclone!!!)

(Joker!!!)

・・・・・・かのように思えた。

"・・・???"

突然の声に怪人の手が止まる。

先ほどと同じ、機械の電子音のような声。

「やっと見つけたぜ、この通り魔野郎」

「やはり犯行は月齢の周期に合わせて、場所を変えて行っていたみたいだね」

続いて聞こえた別の声。

この場に不釣合いな、なんとも落ち着いた二つの声。

目をこらすと路地の入り口のところに人影がみえる。

「しっかし、園崎家も財団Xの加頭も倒したってのにどうしてドーパントがいなくならねぇんだ?」

ただし、影は一つだけ。

「ふむ。
この前のEXEの一件もあるが、、今回のケースはおそらく別口ではないかな。
たぶんミュージアムの残党がまだガイアメモリの売買を続けているのだろう。
あるいは、まだ僕たちの知らない第三勢力がいる、とも考えられる。
もし、そうだとするならば。
・・・・・・実に興味深いね」

影は一つだけのはずなのに、その声たちは確かにその人影から聞こえた。

"■■■■ーーーー!!!"

突然の来訪者に怪人が吠える。

しかし、その咆哮はさっきのように勝ち誇ったものではなく、"自分を無視するな"というアピールまじりの威嚇のようにみえた。

びゅうううっ!!

"・・・っ!??"

その怪人に「黙れ!」と言わんばかりに、さらに強い風が吹く。

まるでその人影を取り巻く竜巻のような強い風。

"・・・・・・・っ!"

怪人は驚いている。

というよりかは、怯えているかのようにみえた。

あの得体の知れない人影に、未知への不安を抱いているのか。それとも、

実はある程度あの影の正体を理解していて、出会ってしまった自分はここで破綻するかもしれないということを予期しているのか。

雲が晴れ、月の光がいっそう濃くなる。

その月明かりで、一連の声の主の正体が明らかになった。

つまるところ、その声の主も怪人だった。

ただ、このエビの化け物とはまったく違う姿をしていた。

右が緑、左が黒のアシンメトリーの怪人。

顔もマスクで覆われており、その両目で光る赤い複眼が印象的だった。

「まぁともあれ。
こいつはウォッチャマンに感謝だな。あいつの情報がなかったら、犯行現場の特定にはもっと時間がかかっていただろうぜ」

「ふむ、確かに。
しかし、いいのかい?
情報料をかなりふんだくられてしまった。 僕の記憶違いでなければ今月も赤字は確実だと思うのだが?」

「ふ、男が細かいことを気にすんな。
いいか、男の仕事の八割は決断。 そこから先はおまけみたいなもんだ。
報酬なんざ二の次。
それが、ハードボイルドってやつなのさ」

「・・・・・・ふむ、なるほど。
その考えは全く理解はできないが、君の考えはよく分かった。
それじゃあ、所長に怒られる役は君に一任するとするよ。
あのスリッパはかなりの攻撃力を持っている、僕向きじゃない。」

「ぅおいっ!?」

「それに僕は、一刻も早く片付けて「とうふ」の検索を続けたいからね」

「・・・・・・とうふって、お前な」

・・・・・・・。

私はあっけを取られてしまった。

その奇妙な一体の人影は、この緊迫した状況の中でも全くショックを受けた様子もなく、あまつさえ自分の職業理念(?)みたいなものについて語り始めてしまったのだ。

しかも、もう一つの声に至っては、とうふの検索がどうとかと言い出している。

内容はまったく意味不明で、まるで理解不能だった。

でも。

それはまるで、友人同士が話すような下らない会話の一幕だった。

私が愛した、とりとめのないささやかな日々。

どこにでもある、かけがえのない大切なもの。

もう二度と聞くことはできないと覚悟した日常の声が、そこにはあった。

ぱたり。

そう思ったら私は、突然体から力が抜けてしまった。

今まで張り詰めていた心の糸が切れてしまったらしい。

いけない、意識、が、遠く、なる。

「・・・っと、
ま、早く終わらすってことに関しては俺も賛成だ。
あのか弱い女の子をいつまでもこんな暗い路地に寝かしておくわけにはいかねぇ。
―――半分力貸せよ、相棒」

「やれやれ、相変わらず君は甘いな。
そんなことだから、いつまでたってもハーフボイルドを卒業できないのだよ。
まぁしかし、それが君の良いところでもあるのだがね。
いいだろう。力はいつだって貸してやるさ。
なんたって、
―――僕たちは二人で一人の探偵だからね」

ハーフボイルドっていうな!という声が遠くに聞こえる。

「・・・・・・・。」

ああ、そうか。

思い出した。

落ちてゆく意識のなか、私はある噂を思い出した。

「さぁて、覚悟はできてるか? 通り魔野郎!」

この街には伝説がある。

「君の犯行原理には実に興味がある。倒したあとでじっくり調べさせてもらうよ?」

曰く、街のどこかで誰かが悲しい涙を流したとき、必ず吹く一陣の風があるという。

「「さあ、」」

その風の名を、人々は親愛と敬意と畏怖を込めて、こう呼んだ。

「「お前の罪を数えろ!」」

"仮面ライダー"、と。

作品名:声(仮面ライダーW SS) 作家名:ケイス