声(仮面ライダーW SS)
05
"・・・・・・・"
怪人は私の心情なんか気にせず、ただこちらを見ている。
"・・・・・・・"
気のせいか、その顔は笑っているようにみえた。
弱い者をただ弱いというだけで見下すような、気持ちの悪い笑顔。
そいつは手を振り上げる。
その腕の先には、金属をも簡単に断ち切れそうな鋭い爪。
そのありったけの狂気を詰め込んだような凶器を、月光が怪しく照らしている。
・・・・・・月光?
おかしい。
本日は雲が厚くて月はおろか星ですらみえないはずなのだが?
くるくるくるくる・・・・・
下のほうから音がする。
足元をみると、かざぐるまが勢いよく回っていた。
この街はとても強い風が吹くことで有名であり、そのためか街の至るところには様々な形状の風車が設置してあった。
風こそがこの街の象徴なのだ。
空を見上げると、綺麗な満月が顔を出していた。
きっとこの街の風が、あの厚くて不気味な雲を吹き飛ばしてくれたのだろう。
"■■■■ーーーー!!!"
怪人は顔をしかめた。
いや。実際のところはどうか分からないが、少なくとも私にはそういうふうにみえた。
どうやらこの怪人は、さっきの暗くて不気味な雰囲気が好ましかったようだ。
突然吹いたこの爽やかな風とすべての希望を照らし出すようなあの月光が、思いのほかうざったらしかったらしい。
まるで、楽しく遊んでいる最中に親にケチをつけられたときの子供ようなしかめっつら。
どこにその苛立ちを発散したらいいのか、よく分からないといった風情だった。
"■■■■ーーーー!!!"
しかし。
"■■■■ーーーー!!!"
その理不尽な怒りの矛先が私にかわるのに数秒とかからなかった。
"■■■■ーーーー!!!"
怪人、は、こちらを、みる。
"■■■■ーーーー!!!"
怪人、は、爪を、ふり、あげる。
"■■■■ーーーー!!!"
しかして、その、怪人の、爪は。
びゅんっ!!
と、音を立てて、私の胴体を真っ二つにした。
作品名:声(仮面ライダーW SS) 作家名:ケイス