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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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「ぞう゛ざ。 ・・・・・・ゴホン。あー、それよりも柏木さん? 大事なことに気づいたんだ。ここには美味しい弁当はあるが、その食事の友になってくれる飲み物がない」
「え? ああ! 私ったら、うっかりしていましたわ!」
「悪いんだが、どこかで飲み物を買ってきてくれないかな?」
「あ、はい。それじゃちょっと行ってきます!」
柏木は、たったっ、と駆けて行く。
それを見届けると翔太郎は真倉の体を擦る。
「おい、おいマッキー! 生きているか?」
さっきの気さくな調子からうって変わって必死な形相の翔太郎。
突っ伏して動かなくなっていた真倉はその翔太郎の必死な呼びかけに応えるようにして体を起こす。
「・・・・・・うぅ、・・・・・・・ううう、ああ。・・・・・・あ、あれ? お、じいちゃんは? あの大きな河の向こう岸で手を振っていた、死んだはずのおじいちゃんは?」
ブツブツ呟いている真倉の目はどこか虚ろだった。
「おい、そっちは行っちゃダメだ! 帰って来れなくなるぞマッキー!」
「・・・・・・あ、あれ、探偵? お、俺は一体何を? ・・・・・・おじいちゃんは? 河の向こう側で『お前はもうダメだから、こっち側へ来なさい』とか言って誘ってくれたおじいちゃんは・・・・・・?」
「・・・・・・お前、そこまでイチかバチかな状態だったのか・・・・・・」
戦慄の冷や汗が流れる翔太郎。
「しかし、お前のその状態をみると、たまたま俺の玉子焼きがハズレだったわけじゃなさそうだな」
翔太郎はあらためて重箱をみる。
さっきまで家庭的でキラキラ輝いていた重箱が、今は毒々しい殺気でギラギラと黒く輝いて見える。
「ひ、ひと口食べただけでこの破壊力・・・・・・っ!」
意識がはっきりしてきた真倉は自分の置かれていた状況を思い出したのか、その顔は恐怖で歪んでいた。
二人の脳内にあるキーワードが浮上する。
「ああ、間違いない。マッキー、この弁当は、」
「そうだな、探偵。この料理は、」
"―――本物だっ!!"
共同捜査を開始して、初めて二人の理解が一致した瞬間だった。
「って、どうすんだよ、これ!? まだこんなにいっぱいあるぞ!?」
自称ハードボイルド探偵は人目を憚らず慌てる。
「ど、どうするとか言われてもだな!」
街の秩序を守る刑事は目の前の強大な無秩序にうろたえる。
「と、とにかく、この弁当がゲロ不味いってことだけは、柏木さんに知られちゃならねぇ!」
知れば柏木はきっと、がっかりしてしまう。
「ああ、そのとおりだ。これは俺達が秘密裏に処理をしなければならん!」
翔太郎の発言に真倉は首肯する。
誰の悲しみの涙はみたくない。
彼らはこの街を守るヒーローだった。
「問題は、」
「ああ、問題は、」
「「誰がこのお弁当(劇薬)を処理するかってことだよなぁぁ!?」」
・・・・・・しかし、彼ら自身の仲が良いかというのは、また別問題だった。
「こ、こら! おとなしく口を開けろマッキー! お前柏木さんの弁当食えるって喜んでいたじゃねーか!」
「貴様こそ、諦めてこのハンバーグを食らえ! これは絶品だったぞ、食った俺が言うんだから間違いない! まさに天にも昇る感覚だった!」
「お前それシャレになってねーから!」
二人は柏木の弁当を押し付け合う。
誰の悲しみの涙はみたくないヒーロー。
それは自分の涙も例外ではなかったらしい。
「・・・・・・みなさん、何をされているんですか?」
突然、女性の声が聞こえた。
必死に弁当を押し付け合っていた二人。
柏木が帰ってきていたことも、全く気づいてはいなかった。
「げぇ! 柏木さん!」
「お、お早いお戻りで・・・・・・」
二人は醜い押し付け合いを止め、取り繕うように笑顔をつくる。
「えっと、お二人とも、その、ケンカ、ですか?」
柏木は少し二人を咎めるような声色で問う。
どうやら、弁当の押し付け合いをケンカか何かと勘違いしたらしい。
「あの、その、そういうのは、その、良くないと思います・・・・・・」
少しビクビクしながらも二人に注意を促す柏木。
「せっかく、みんなで楽しくお食事をしようと思っていたのに・・・・・・」
言っているうちに悲しくなってきたのか、目に涙を溜める柏木。
「ちょ、違う違う! 誤解だって、柏木さん! 俺達は別にケンカなんかしてねーよ! な、なぁ、マッキー?」
翔太郎は慌てて真倉に話をふる。
「そ、そうですよ! その、弁当があまりにも絶品だったのでテンションが上がってしまったんです! そ、そうだな、探偵!」
二人は、ねー、と顔を見合わせて肩を組む。
本当は半分柏木は正解だったのだが、彼女の涙をみたくないがために、翔太郎と真倉は嘘をつくことにした。
「そ、そうだったんですかぁ。よかったぁ」
それを素直に信じる柏木。
二人はふう、と一安心する。
「それじゃ、改めてお昼にしましょう。まだまだいっぱいありますから、たんと召し上がって下さいね!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
そして安心できたのは一瞬でありつかの間だった。
目の前に並べられた刺激的な料理の数々。
それを、さぁたんと召し上がれ、と促す美女。
柏木のその死亡通知にも似た促しは、二人の顔から一気に血の気を抜く。
(・・・・・・マジでどうする、探偵?)
真倉は目で訴えかけてくる。
(どうする、ってどうにかするしかないだろ!)
それにアイコンタクトで返す翔太郎。
(ただ、その前に一つ確認しなきゃいけねぇことがある)
翔太郎は柏木のほうへ向く。
「な、なぁ、柏木さん。アンタは食べないのかい?」
「あ、ごめんなさい。私はもうお昼済ませてきちゃって」
「え!? まさか、この弁当を!?」
「いえ、その、最近太ってきちゃったから、私スーパーで買った簡単なお野菜のサラダとかで我慢しているんです・・・・・・だから、その、これ以上は・・・・・・」
そう言いながら、柏木は恥ずかしそうに体を抱き縮こまる。
縮こまった小さい体とは対照的にボリュームのある胸元が強調される。
(お、おお〜・・・・・・)
(こ、これは・・・・・・)
男の哀しい性のせいなのか、二人の目線は柏木の胸元に集中する。
(・・・・・・って、違う! おい正気に戻れマッキー!)
ぱこん、と真倉の頭を小突く翔太郎。あ痛い!と軽く悲鳴を上げる真倉。
(でも、これでいくらか安心したぜ。これで柏木さんがこの弁当に手を出すことはねぇ)
(ああ。ではそうなると、)
(そうだ、ということは、)
(お前が)(貴様が)((食えーーー!!))
「きゃあー!? ち、ちょっと、みなさん、どうしていきなり暴れ出すんですか!?」
結局、弁当を押し付け合う二人。
「本当にどうしちゃったんですか、みなさん!?」
「いやなに、マッキーが俺に食べさせてほしいっていうからさ!ってオイオイ、マッキー小声で、ヤバい、マジでヤバい、って俺に訴えかけたって状況は変わらないんだぜ?」
翔太郎が真倉の口に卵焼きを突っ込む。
口に含んだ途端にブルブルと痙攣し出す真倉。
しかし今度は隙をついて真倉が翔太郎の口にハンバーグを突っ込む。
「ちょ、探偵さん、なんだか苦しそうなんですが・・・・・・?」
翔太郎は白目を向き、まるで心臓が停止したみたいに動きが止まる。