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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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eX)エピローグ




ここは風都のとある刑務所。
そこに一人の囚人の男がいた。
男の名前は宮部総一。
彼のなかには今、途轍もない不安と戸惑いが渦巻いていた。
自分のやってきたことは間違いだった。
とても褒められたものではない。
今まで自分の実験に付き合わせてしまった人々のために、自分はイチから出直さなければならない。
そのこと自体は理解している。
ここでしっかり刑期を真っ当し、自分の罪を数える覚悟も出来ている。
(・・・・・・しかし)

しかし自分なんかに、今さら更正することはできるだろうか。

半分強制されたとはいえ、数々の非人道的な実験をこの手で行ってしまった狂気のマッドサイエンティスト。
この世界の平穏を守るのだ、と勘違いに突っ走ってしまった、大量誘拐犯。
あの若い刑事は自分でも出直すことができるといっていたが、本当にそんな事は可能なのだろうか。
宮部は自分の手のひらを見る。
この、血塗られた手で一体誰を救うことが出来るというのだろうか。
ガチャリ。
いろいろ考えすぎてすっかり気持ちの沈んでしまった宮部の耳に、不意に部屋のドアを開く音が聞こえる。
みるとあのときの若い刑事だった。
刑事はまだ闘いのときの負傷が回復しきっていないようで左腕にはギブスがつけられていた。
(・・・・・・私が、傷つけた腕、だったな・・・・・・)
「宮部、面会だ。出ろ」
若い刑事は特に気にしている様子もなく、宮部に部屋の外に出るように促す。
(・・・・・・面会?)
宮部は首を傾げる。
捨て子の境遇で親などいなく、風都の孤児院で育ち卒園してからも長年ミュージアムの研究施設にいて、世間に出てもあまり人付き合いをしなかった自分に一体だれが?
心当たりのない面会者のことを考えながらも宮部は刑事に連れられて面会室まで歩く。
ガチャリ。
面会室のドアを開ける。

そこにいたのは、いつかの母子だった。

突然の悲劇で目を覚まさなくなってしまった子供。
それを助けてほしいと神に祈り続けた母親。
宮部が助けたくても助けられなかったあの子供が、なんと意識を取り戻して彼の前に立っていたのだ。
「・・・・・・な? え??」
理解が追いつかない宮部に真倉がしゃべり出す。
「あー、詳しいことは俺にもよく分からないのだが、知り合いにお前とこの親子とを面会させてくれ、と頼まれてな」
そう言うと真倉はポケットから折りたたんであった紙を取り出す。
「その知り合いからメッセージがある」
え〜っと、と真倉はかさかさとそのメモを開き中に書いてある文字を読み出す。
「う〜んと、『子どもの意識のほうは君が過去に行った施術のおかげであと一歩のところまで回復していた』」
「!?」
(これはまさか、あの探偵の相棒の・・・・・・?)
「あー、『僕がコネクタを通してこの子の意識にダイブすることでこの子の意識は完全に呼び覚ますことができた』。えー、『あとは簡単なリハビリときちんとした栄養を採れば、すぐにでも元の生活に戻れるだろう。施術の後遺症はなかったし、案外簡単な仕事だったよ』」
「・・・・・・」
宮部は全てを理解した。
『彼』が、この子を治したのだ。
「うー、『僕の見立てでは肉体的、精神的に異常はない。極めて健康な10歳児なので安心したまえ。"キミの嫌いなMr.ヒーローマンより"』だとさ」
「・・・・・・」
「うーん、何度読み直してもさっぱり意味が分からないぞ。なんだこのメッセージ??」
おい、これは一体どういう意味だ、と言ったところで真倉は口を閉じた。

宮部の顔から大粒の涙が溢れていたのだ。

「・・・・・・う、ぐぅ・・・・・」
そのまま泣き崩れる宮部。
彼は先ほどまで、自分が本当に真っ当な道に戻れるか心底疑問だった。

"当ったり前だろう! 気持ちがあれば、何でも出来るに決まっているっ!!"

ふいに。
元気よく自分の背中を押してくれた刑事の言葉がフラッシュバックする。
(・・・・・・きっと、やり直せる)
宮部は泣きながら、心に誓う。
彼らが、この光り輝く優しさを持つ彼らがこの街にいる限り、自分だって何度でも立ち上がることがきっと出来る。
そんな、根拠のない奇妙な確信を胸に抱きながら。
「?? ・・・・・ふん、やはり意味が分からんな」
宮部の心に光を与えた張本人の一人であるはず若い刑事は頭をぽりぽりと掻きながらも、小さく笑みを浮かべる。
若い刑事は格子越しの窓の外に目を向ける。
外では今日も爽やかな風が吹いていた。

この街にはさまざまな人間がいる。
ある者は法の立場からこの街の治安を守り。
ある者は純粋な心からその平和を無邪気に享受し。
ある者は傷ついた過去からその笑顔に癒され。
ある者はこの街の影となってその在り方を守る。
この街にある、さまざまな人間模様。
そんななかで、彼らが伝えたいことは、表現の仕方は違えど、同訓異音でたった一つだけなのだろう。

"どうか今日も、この街とそこに住む人々が平和でありますように"