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【くらちと】さすらい人に捧ぐ、王子様の愛のうた

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 意外なことに、謙也は自分たちの仲を知らなかったらしい。今更、と言えるようなことを千歳に聞く。
「ああ、あかんて謙也」
「は、」
「千歳は、意地っ張りの恥ずかしがり屋やから、正直には答えんよ。なあ?」
「え、っ……」
「はは、ほらな、照れよって」
 戸惑った目をして恥じらう千歳の代わりに、白石は謙也に教えてやる。
 去年の西日本大会から惹かれ合っていたこと(千歳の気持ちを聞かなくても分かる。何故なら、その時から何度となく目が合っていたのだから)。彼がここに転校してきたのは、自分がいるからだと言うこと(これも、わざわざ彼に聞くまでもない)。千歳が自分に向ける笑顔は、他人に向けるものよりずっと愛らしくて暖かく、何より回数も多いから、彼の分かりやすい気持ちになんてすぐに気付いてしまったこと。
「白石は格好良かばってん、彼女はおらんの?」
 なんて見え見えな駆け引きをしてくるものだから、
「千歳が俺の彼女んなったら良えやんか」
 と一世一代の告白をしたら、笑ってくれたこと。そうだ、あの日から自分たちは、恋人同士となったのだ。その事実がひたすら照れ臭いらしい彼は、それ以来中々二人きりにはなりたがらなかったけれど。
「……白、石」
「ん?」
 ここに来て、ようやっと黙りこくっていた千歳が口を開いた。盗聴器越しのくぐもったものでない彼の声を聞くのは、久しぶりだ。自然と白石の唇も綻んだ。
「白石、は……俺ンこつ、好いとうとや?」
「何や突然……」
 が、暖かな気持ちになったのも束の間、いきなり大胆なことを聞いてくる恋人に流石に驚いてしまう。呆然とする白石に、一言口を突いたことで勢いづいたのか、千歳がギッと音の立つ程鋭い眼差しでこちらを睨み付けた。

「好いとうなら、なしてハッキリ言わんとや!」
「「え?」」

 思わず白石と謙也の声が被る。

「は……ハッキリて……せやけど、千歳が恥ずかしがり屋さんやから、」
「いやいやいやいや待て待て千歳、ハッキリ言わせたら大変なことんなるで主に自分の尻事情が」
「陰でコソコソコソコソ、白石はいっちょん男らしく無か!」
「ち……千歳……」
 よもや、彼がもっと自分に積極的に動いて欲しいと思っていたなどと、白石知る由もなかった。けれどそれも、考えてみれば当然かもしれない。彼は今、ストーカーの恐怖に晒されている。そんな状態で陰から見護るばかりでは、確かに千歳も心細いのだろう。こんな風に怒り出すのも仕方のないことなのかもしれない。
「は……ちょ、千歳、今はそんなん言うとる場合やなくてやな、自分のストーカーは白石で、」
「ストーカーでもスカートでも何でも良かっ!どっちにしても白石が女々しかこつには何も変わらん!」
「いや変わるやろストーカーとスカートは」
「こぎゃんコソコソ女々しかこつしとる白石なんざ、俺は見たくなかっ!西日本大会ん時、俺んこつば叱りつけたあの男らしか部長さんはどこ行ったとや!」
「千歳……」
 ああ、すまん。不安がらせてすまん。そればかりが白石の中で渦巻いて、情けない気持ちになる。聖書だなんて、名ばかりだ。大切な人の気持ちに、全く気付くことが出来なかった。
「俺も男ばい!」
「いや確かに自分が女の子や言うたら俺ショック死するわ」
「全部受け入れちゃるから、白石!正々堂々、正面から俺に想いをぶつけんねっ!」
「え、」
「えええええええええええ男らしすぎやろ!けど自分で自分の首締めとる!気付いて千歳!逃げて千歳!」
「何ね謙也くん、さっきっから横でごちょごちょごちょごちょうるしゃーばい!」
「いやあかん!ほんまにあかんのやって千歳!」
「うるしゃーばいっ!」

 千歳と謙也の騒がしい遣り取りがシンとした部室にこだまする。常ならば、それを「喧しい」と柳眉を寄せて一刀両断するところだが、白石は、千歳の放った言葉に思考を止めていた。
「千歳……!」
「何ね!」
「伝えて良えの……?俺の気持ち、受け入れてくれんの……?」
「男に二言は無か!」
 ふん、と顎を上げ睨んでくる彼に、白石の背を電流のような「何か」がぞくりと駆け巡る。
(エクスタシーや……千歳……!)
「ほ、ほな!」
「おう!」
 いつの間にやらからからになった喉を唾液を飲み込むことで潤して、乾いた唇をぺろりと舐める。
「千歳と、一緒に並んで帰りたい……!」
「いつでも帰っちゃるばい!」
「て、手ぇも繋ぎたい!」
「繋げば良か!」
「キスもしたい!」
「どこにでもせんね!来んね!ぶちゅっと!」
「セックスしたい!」
「優しくすったい!」
「いや違うねん、俺が突っ込みたいねん」
「えっ」
 白石が、千歳と付き合い始めてから今まで一番夢見ていたことを素直に口にしてみれば、それまでの威勢の良い声が、嘘のようにぴたりと止まる。ここに来て躊躇されるのは悲しすぎると、白石は千歳を強く見据えた。
「男に二言は」
 グッ、と千歳が息を詰める。
「な、無か……!」
「ほな、俺な」
「お、おう!」
「自分の手首縛ってな、ベッドに括り付けてな、脚もM字で固定して、後ろは時間かけて指とか舌使って解したって、俺のモン突っ込んだら何遍も中出ししたってな、そんで、なーんも出なくなっても半日ぐらいずーっと挿れっ放しにしてな、ずーっと抱き締めとって、一日中撫でて、舐めて、触って、噛んで、とにかくひたっすら可愛がりたいねん」
「…………」
 想像をしながら彼に語りかければ、自然とうっとりとした声音になってしまうのは致し方ない。
(ああ、流石に俺に惚れ込んどる千歳も、驚いてしまったんやろか、俺の想いに。せやけど安心してな。全部全部、嘘やないで。全部全部、千歳にしてやりたいことや)
「なあ、男に二言は?」
「な……無か……」
「全部、受け入れてくれる言うたよな?」
「お……おう」
 千歳はそれきり、再び無言になって、俯いてしまった。
 ああ、自分から言っておいて、そうやってすぐ恥ずかしがる。何といじらしく照れ屋なのだろう。可愛らしい。
「……俺はあかんて言うたからな、千歳」
「っ……わ、分かっ、とる」
「千歳」
「ひっ」
 高い位置にある、意外にも滑らかで細い顎を掴み自分の方へ向かせる。
「好きや……」
 喜びで震える千歳に、愛を囁く。
「離さんから。二度と離さん」
「っ……!ん、っ!」
 感激に戦慄く唇に、自分のそれを押し付ける。

「いつだって、一緒に居ったるから。これから先、ずぅーっと。いつだって、いつだって、いつだって、いつだって、いつだって、いつだって、いつだっていつだって、いつだって、いつだって、いつだって、いつだって、いつだって」

 白石は謳う。愛を謳う。自由な心を持つさすらい人を繋ぎ止めるため、白石は、愛を謳い続ける事を誓う。
「ずぅーーーーーっと、一緒に居ような?」
 永遠に、彼の傍で愛を謳う。