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【ひかちと】ピーターパン・シンドローム

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「っ、」
「アンタが好きや」

(おんなじやったんや。俺も、あんたも)

 彼も頑是ない子供だったというのなら、子供同士、もっと、もっと子供らしく、感じたままを口に出していけば良かったのだと、財前はほんの少し後悔する。

「好きや」
「っ……れ、も、」
「うん」
「俺、も……」
「うん」
「……っ光んこつ、」
「……、うん、」
「好いとう……」

(慌てん。我慢せん。ちゃあんと、気持ち伝えたって、良かったんや)

 もっと、互いが互いらしくなれたらと、思う。

 二人で、ゆっくり大人になっていきたい。

「なあ」
「ん……」
「キス、しても良え?」
「……して欲しか」
「うん」
「っ……んっ……!」

(俺はまだまだガキだけど、この人もまだまだしょーもないくらいガキやった。大人やないこの人に、俺が、「子供」が置いてきぼりをくらう事は、ない。)
(一緒に、歩いていける。一緒に。)

 一緒に大人になっていけば、それで良い。





 互いに感情を吐露しきった後、乱雑な部屋に満ちた甘やかな空気の中。さてポケットに入っているピアスをどう切り出そうか、今の千歳はもう笑って許してくれることは無いのだろうと、嬉しくもあり恐怖も感じる財前は、思い悩むことになる。
 どうにも様子のおかしい財前に、鋭い千歳が気付かぬ筈も無く、結局ちょっとした喧嘩になるのだが、それはまた、別の話。