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年の始めのためしとて

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「……は。なに、自分、杏ちゃんのお相手さん会うたことあるんか」
 予想外の千歳の言葉に、聞いてへんでと問えば、言ってなかもん、と平然と答えられ、謙也は脱力する。
「この前、旅行っち言ってこっち来とったけん」
「あー、なるほどなあ」
「殴らんよー、ち言ったら、目に見えてホッとしとったけん、何だかむぞらしかったばい、神尾くん」
「って、神尾!?神尾て、あの神尾アキラか!?関東最速の!」
 何とも懐かしい名前に、謙也は驚きで千里の肩に乗せていた頭を上げる。
 神尾アキラといえば、中学最後の全国ベスト4入りが決まる試合で戦った、後にも先にも謙也が唯一スピード対決で冷や汗をかかされた相手だった。高校に行ってからも彼とは何度かぶつかることがあって、その度に磨かれていくテクニックとスピードに、テニスに関することでは何気にプライド高い謙也が認めた、数少ないプレーヤーである。
「あー……でも、そうか不動峰やもんなあ、同級生か……」
「そうそう、神尾くんね、謙也くんによろしくーっち言っとった」
「おま、そういうんは言われたその日の内にやな……!あーもう良えわ……」
 何年経っても変わらぬ千里のマイペースっぷり、謙也は、(まあそういうとこが良くて結婚したんやしな)と嘆息する。
「どぎゃんしたと?」
「何でもない。……まあ、何や、学生時代て随分昔のことやと思っとったけど、まだまだ皆色んなところで繋がるモンやな」
「そうたいね……」
 何だか少しばかりセンチメンタルな気持ちになって、今まで顎を乗せていた薄い肩に、今度は顔を埋めて甘えるように擦り寄った。シャンプーと千里の体臭が混ざり合った、柔らかい香りを思い切り吸い込む。
「ん……ところで謙也くん、そろそろ離してくれんと、お雑煮も出来上がったけん、お餅焼けんばい」
「んー」
 千里が優しく嗜めてくるが、甘やかな温もりからは中々に離れ難く、普段の「スピードスター」っぷりも何処へやら、謙也は緩慢な動きで渋々腕を解こうとした。
 と、肩越しに視界に飛び込む 、細い身体にアンバランスな、豊満で形の良い胸。

 解いた腕、しかし謙也の不埒な手指は、千里の脇の辺り、エプロンの下に素早く侵入すると、その柔らかな膨らみを服の上から思い切り鷲掴んだ。
「ひゃっ!」
 びくりと大袈裟に揺れる、腕の中の身体。
「け、謙也くん、ちょ、何っ……」
「だって千里あったかいし良え匂いすんねんもん」
 慌てる彼女に、謙也は率直に、離れたくない、と甘えた。同時に、手に余る程に大きなそれをやわやわと揉むと、弾力のあるそれは手の中で奔放に弾み形を変えていく。
「んっ、謙、也くん……っ、待っ、」
 謙也の骨張った指の形が、ふにふにと揺れながら形を変えていく乳房のラインが、薄いエプロンの生地にくっきりと浮かんで、見た目に酷くいやらしい。
「あ、っ……ん、は、」
 甘い息を吐きながら、千里はますます困ったように眉を下げた。
「お、お雑煮っ」
「餅は後で俺が焼いたるし、準備も後片付けも俺がちゃんとやる」
「っ昨日も、いっぱいしたし……」
「昨日は千里の誕生日やったから、千里のしたいこと全部したやん?せやから今日は俺のわがまま聞いてほしいなあ」
「お……おれのしたいこと、って、」
「え、昨日千里めっちゃ色々言うてたやん、ぎゅーしてー、ちゅーしてー、ドコにちゅーしてー、ココにちゅーしてー、舐めてー、噛んでー、触ってー、摘まんでー、引っ掻いてー、挿れてー、突いてー、擦ってー、掻き回してー、出し、」
「わーーーーーーーーーーーっ!」
 真っ赤になった千里によって言葉を遮られる。肩越しに振り返り、ぱくぱくと金魚のように開いたり閉じたりして唇を戦慄かせる千里に、謙也はにっこりと笑いかけた。
「っ……あ、明後日の準備、まだ終わってないけん、謙也くん……やってくれっと?」
「おう、全部俺がやったるわ、任せとき」
「初詣、行けんくなっても良かと?」
「明日でも良えし、向こうで、お義父さんとお義母さんとミユキちゃんと、「家族皆」で行くんも良えかなと思うねん」
「……かぞく、みんな?」
「家族やろ?」
「……うん」
「……なあ、シても良え?」
「…………うん」
 ぷい、と顔を向こうにむけてしまった千里だが、そんな態度と裏腹に、耳を真っ赤にしてこくりと頷いてくれる。
「ばってん、台所は、いや」
「ん、そやな」
「ん……」
 ぽつりと拗ねたように呟く様子が、何だか幼くて可愛らしい。そんな彼女が、自分の我が儘を受け入れてくれたという事実、それから、今から始まる甘い一時を思って、謙也の顔がだらしなくやに下がった。
「千里ー……」
「うぁ、あっ……!ちょっ、ここじゃヤだって、」
「分かっとるって、ちょっとだけ」
「んっ、も、もおっ……!」
 未だエプロンの下で好き放題に乳房を揉みしだく手に甘い吐息を漏らしていた千里が、ふいに謙也に呼びかける。
「っ、ん、っ……ねえ、謙也くんっ……?」
「んー……何や」
「今年も……これからも、よろしくお願いします」
「せ、千里、」
 小さく囁かれた言葉に、謙也の心臓がどくりと跳ねた。

 これからも。
 これからも、千里と、千里の誕生日を、年の始まりを、共に過ごしていく。
 共に、生きていくのだ。

「…うん。こちらこそ、今年も、これからも、ずっとずっと、よろしくお願いします」
「ずっとずっと?」
「ずっとずっと」
「……嬉しかあ」
 ほっこりと暖かくこそばゆい気持ちで胸がいっぱいになって、緩みっぱなしの頬のまま千里の細く軽い身体を抱き上げた。同じ目線になって、自然と目が合って、笑い合う。そうして昨晩彼女を散々愛した寝室へ、再び彼女を飽きることなく愛すべく向かったのだった。



 さて、時はそこから数ヶ月後に飛躍する。
 めでたい事に、何と愛する妻の妊娠が発覚、謙也も周りもお祭り騒ぎとなった。(矢っ張り出張だとかでこちらに来た橘にそれを告げた時、今度は何故か男泣きに泣き出した彼に再び殴り飛ばされた。そして続く熱い抱擁に某後輩からの懐かしのキモイコール。見事に一年半前の場面が再現されたものの、謙也はちっとも嬉しくなかった。)
 更にそれから数ヶ月 、出産予定日が10月10日と知らされて、謙也は何の考えもなしに意気揚々と周囲に報告。 その結果、親兄弟、従兄弟に腐れ縁の友人たち、果ては未だ交流のある中学時代のテニス部顧問に至るまで、
「いくら新婚やからって年末年始にまでお前は我慢っちゅーもんを知らんのか」
 と総ツッコミを受けることになるのは、また別の話である。
作品名:年の始めのためしとて 作家名:のん