destin ②
翌朝。
乱暴に開かれた扉の音で、ゾロはようやく目を覚ました。
どうやらいつまでたっても起きてこないゾロを見たサンジは、いい加減怒り心頭に達したようだ。
けたたましい怒鳴り声と共に、布団が勢い良く引き剥がされる。
「いつまで寝てる気だ、クソ野郎!今日はテメェの試合だろうが!!」
「…るせぇ、今起きるところだ」
「たまには自分から起きて来やがれ、この万年寝マリモ!」
サンジの小言、もとい怒鳴り声を聞きながら、まったく朝から元気なものだと半分感心し、ゾロはまだ開ききっていない目蓋を擦った。
開かれた扉の奥からは美味しそうな匂いが漂ってくる。
「弁当か」
「おう。気合い入れたぜ」
匂いにつられる様にゾロはムクリと起き上がった。
サンジが直ぐ様口を尖らせる。
「朝飯もちゃんと作ってあっから、その寝汚ねー顔洗ってこい」
「…ついでにシャワー浴びてくる」
「あぁ?飯冷めんだろうが」
「すぐ上がる」
タオル片手に風呂場へと向かうゾロを見て、サンジは軽くため息をついた。
いつでも湯気の立つ料理を提供することは、料理人として最低限のマナーだと、サンジは思っている。
ゾロの風呂がいくら烏の行水だからといって、冷めた料理を出すわけにはいかないのだ。
我ながら呆れるほどプライドが高いとは思うが、料理に関しては、頑固な祖父に鍛えられたこともあり、簡単には妥協したくない。
ひとり苦笑すると、サンジはゾロが上がってくる頃合いを見計らい、鍋を火にかけた。
一方、新一もけたたましく鳴り響くインターホンの音で目を覚ました。
おそらく平次によって、既に20回近く呼び出し音が鳴らされている。
それでも止みそうにない呼び出し音のあまりの執拗さに、朝は低血圧の新一は苛ついてしょうがなかった。
仕方なく目を開き、玄関の扉を開けるべく、ムクリと起き上がる。
「くどお~、起きとれ言うたやろぉ。いい加減開けてくれへんかぁ?」
ドア越しに平次の情けない声が聞こえた。
新一は無言のまま鍵を外す。
そして、入ってきた平次をしこたま睨み付けた。
「な、なんやねん」
「……26回」
「は?」
開かれた口から出てくる、いつもより数段低い声にびびりながら、平次は予想外の言葉に首を傾げた。
「…26回って、何がや?」
「テメェがインターホン鳴らした回数だ」
「へ?」
これまた予想外の返答に、平次はすっとんきょうな声を上げる。
そんな平次の反応が気にくわなかったのか、新一は平次にも聞こえるよう、大袈裟に舌打ちをした。
「わざわざ数えとったんか」
「しつこすぎたからな。普通そんなに鳴らすか?」
「工藤が起きひんからや。昨日ちゃんと起きとれ言うとったのに」
機嫌悪いまま連れて行きとうないからな、と平次は肩を竦めた。
朝は低血圧のため、いくら演技の巧い新一でも機嫌の悪さを隠しきれない。
先輩に紹介するつもりなので、さすがにしかめっ面のままではまずいだろうと、平次は当たられることは百も承知で新一を起こしに来たのだ。
「ほれ、珈琲でもいれてやるさかい、はようその不機嫌そうな面直してくれや」
「誰がさせたと思ってる」
「インターホン。さ、ひとっ風呂浴びるとすっきりするで~」
「押すなっつの」
顔をしかめる新一の背中を押し、半ば無理矢理風呂場に押し込むと、平次はふっと息をついてキッチンへと向かった。
「まったく、朝の工藤はに手ェつけられへんわ。……まぁ、しゃあないんやろうけど」
以前は朝だってこんなに不機嫌になることはなかった。
もちろん、新一は故意にやっているわけではない。
どんなに頑張っても身体が言うことをきかなくなったのだ。
小学生の身体になってしまうという奇妙な体験から、元の姿に戻った、ある日を境に。
乱暴に開かれた扉の音で、ゾロはようやく目を覚ました。
どうやらいつまでたっても起きてこないゾロを見たサンジは、いい加減怒り心頭に達したようだ。
けたたましい怒鳴り声と共に、布団が勢い良く引き剥がされる。
「いつまで寝てる気だ、クソ野郎!今日はテメェの試合だろうが!!」
「…るせぇ、今起きるところだ」
「たまには自分から起きて来やがれ、この万年寝マリモ!」
サンジの小言、もとい怒鳴り声を聞きながら、まったく朝から元気なものだと半分感心し、ゾロはまだ開ききっていない目蓋を擦った。
開かれた扉の奥からは美味しそうな匂いが漂ってくる。
「弁当か」
「おう。気合い入れたぜ」
匂いにつられる様にゾロはムクリと起き上がった。
サンジが直ぐ様口を尖らせる。
「朝飯もちゃんと作ってあっから、その寝汚ねー顔洗ってこい」
「…ついでにシャワー浴びてくる」
「あぁ?飯冷めんだろうが」
「すぐ上がる」
タオル片手に風呂場へと向かうゾロを見て、サンジは軽くため息をついた。
いつでも湯気の立つ料理を提供することは、料理人として最低限のマナーだと、サンジは思っている。
ゾロの風呂がいくら烏の行水だからといって、冷めた料理を出すわけにはいかないのだ。
我ながら呆れるほどプライドが高いとは思うが、料理に関しては、頑固な祖父に鍛えられたこともあり、簡単には妥協したくない。
ひとり苦笑すると、サンジはゾロが上がってくる頃合いを見計らい、鍋を火にかけた。
一方、新一もけたたましく鳴り響くインターホンの音で目を覚ました。
おそらく平次によって、既に20回近く呼び出し音が鳴らされている。
それでも止みそうにない呼び出し音のあまりの執拗さに、朝は低血圧の新一は苛ついてしょうがなかった。
仕方なく目を開き、玄関の扉を開けるべく、ムクリと起き上がる。
「くどお~、起きとれ言うたやろぉ。いい加減開けてくれへんかぁ?」
ドア越しに平次の情けない声が聞こえた。
新一は無言のまま鍵を外す。
そして、入ってきた平次をしこたま睨み付けた。
「な、なんやねん」
「……26回」
「は?」
開かれた口から出てくる、いつもより数段低い声にびびりながら、平次は予想外の言葉に首を傾げた。
「…26回って、何がや?」
「テメェがインターホン鳴らした回数だ」
「へ?」
これまた予想外の返答に、平次はすっとんきょうな声を上げる。
そんな平次の反応が気にくわなかったのか、新一は平次にも聞こえるよう、大袈裟に舌打ちをした。
「わざわざ数えとったんか」
「しつこすぎたからな。普通そんなに鳴らすか?」
「工藤が起きひんからや。昨日ちゃんと起きとれ言うとったのに」
機嫌悪いまま連れて行きとうないからな、と平次は肩を竦めた。
朝は低血圧のため、いくら演技の巧い新一でも機嫌の悪さを隠しきれない。
先輩に紹介するつもりなので、さすがにしかめっ面のままではまずいだろうと、平次は当たられることは百も承知で新一を起こしに来たのだ。
「ほれ、珈琲でもいれてやるさかい、はようその不機嫌そうな面直してくれや」
「誰がさせたと思ってる」
「インターホン。さ、ひとっ風呂浴びるとすっきりするで~」
「押すなっつの」
顔をしかめる新一の背中を押し、半ば無理矢理風呂場に押し込むと、平次はふっと息をついてキッチンへと向かった。
「まったく、朝の工藤はに手ェつけられへんわ。……まぁ、しゃあないんやろうけど」
以前は朝だってこんなに不機嫌になることはなかった。
もちろん、新一は故意にやっているわけではない。
どんなに頑張っても身体が言うことをきかなくなったのだ。
小学生の身体になってしまうという奇妙な体験から、元の姿に戻った、ある日を境に。