二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 8

INDEX|13ページ/25ページ|

次のページ前のページ
 

 土の槍が発生して海賊目掛けて飛んだ。
「うお!?」
 海賊は横によけた。土の槍が床にぶつかり、粉々に砕けた。
「何だ今のは?」
 ガルシアは答えの代わりに剣を振るった。海賊は受け止める。これ以降も攻撃、応戦の合間にエナジーが続くのだった。
 海賊に杖が襲い掛かる海賊はそれを剣で受け止めるが、背後からまた別の杖での一撃を受ける。
「いてて…くっそ〜、二人掛かりとは卑怯な…」
 海賊は後頭部をさすりながら言った。
「卑怯?」
 ジャスミンは不適な笑みを浮かべる。
「ふふ、集団戦法と言って欲しいわね」
 シバはパヤヤームの言っていた事をそのまま返した。言い返されて海賊は言葉に詰まった。それもそのはずである、先ほど自分達はこれよりも遥かに多い人数で袋叩きにしようとしたのだ。今更どうこう言える立場ではない。
 しかし、二人掛かりとは言っても相手は女二人である。力に任せれば一ひねりできるはずだ。
 海賊はシバに掴みかかった。足を掛けてそのまま押し倒してやろうというつもりだった。
「あら、私に触るなんていい度胸じゃない」
 シバは余裕の表情を見せた。そして念じると体からエナジーを放った。
 バチンと海賊の手を弾いた。
「っ!いって〜!な、何なんだ今の!?」
 海賊は手を振り回した。
「エナジーよ」
 耳慣れぬ言葉に海賊は戸惑った。
「エナジーだと…!?」
 言葉は磁気嵐に阻まれた。
『レイ!』
 磁気嵐の起こす電撃に包まれ海賊は叫びを上げて気を失った。
「シバ、やりすぎよ!」
 ジャスミンは海賊が死んだのではないかと思った。しかし、シバは平然としている。
「大丈夫よ、ちゃんと手加減しておいたわ」
 海賊はよく見るとちゃんと息をしていた。
 シバはいたずらっぽく舌を出すのだった。
 シンは床に手を付いた。
『竹槍の術!』
 床から竹が伸びていく、パヤヤームは慌てることなく竹を両断した。
 シンは続けざまに手中で風を刃に変えた。そしてそれを手を合わせるような形で撃った。
『風魔手裏剣!』
 いくつかの風の刃がパヤヤームに襲い掛かった。パヤヤームは側転した、すると風の刃は音を立てて船の壁に突き刺さった。
「シンとか言ったか、ずいぶん不思議な技を使うな」
「へ、てめえこそいい動きだな!」
 お互いにニッと笑うと剣での打ち合いが始まった。シンは左手に持つ短剣一本で、パヤヤームは刃が大きく湾曲した軽めの剣とリーチはパヤヤームの方がある。しかもシンの左手は利き手ではない、それだけでもシンの方が不利に思われた。しかし、シンも負けない。彼の持ち前の身軽さで空中を跳び回り、上手く間合いを詰めて攻撃に転ずる。
 シンは懐に潜り込み、短剣を振った。パヤヤームは首を捻ったが頬を掠めた。
 パヤヤームが飛び退き、二人の間に距離が開く。
 パヤヤームは頬の傷に触れた。生暖かい血が掌に付着する、その血を握りしめた。
「また顔に傷が増えちまったな」
「へ、海賊にはよく似合う傷じゃねえか」
 シンは笑った。パヤヤームもふっ、と笑みをこぼした。
「その減らず口、いつまで叩けるかな?」
 パヤヤームは剣を後ろに構え、シンに向かって駆け出した。シンは迎え撃つべく身構える。
 パヤヤームはシンの前で飛び上がった。
「ヒャアァァァッホウ!」
 パヤヤーム高い声で叫びつつ剣を振るった。
「何!?」
 シンは相手の思わぬ叫びに驚き怯んだ。反応が遅れてしまい、とっさに下がったが、右肩を掠められた。
 二人の間に再び距離が空いた。今度はシンが血を滴らせる番だった。肩口から流れる血を手で押さえる。
「驚いたぜ…あんな風に突っ込んでくるとはな」
「チャンパに伝わる秘技、『ヒャッホー斬り』だ」
 大きく、オクターブ以上も声を張り上げて相手を驚かし、その隙を突く、これがヒャッホー斬りの原理である。本来は狩りにおいて動物を驚かして動きを止め、一気に仕留めるというのが目的とされた海だけでなく、山にも囲まれたチャンパの村の狩猟用の剣技であった。
「次は外さないぞ」
 パヤヤームは再び駆け出した。数歩手前で飛び上がりヒャッホーの叫び声を上げる。
 パヤヤームの剣は迷うことなくシンの体を切り裂いた、はずだったがパヤヤームの剣に手応えが全く感じられない。
 パヤヤームが驚きの表情を浮かべて着地するとシンの姿が残像を残し、パヤヤームの横から背後へと回った。
「あんな技二度も続けてくらうかよ!」
 所詮狩猟用の技である。叫びなどただの虚仮威しにすぎず、動物はまだしも人相手に二度も当たるはずもなかった。
「くらいな、転影刃!」
 シンは剣を斜め上に振り上げた。パヤヤームは背中を打たれ、膝を付いて倒れた。
「安心しな、みね打ちだ」
 シンは短剣を手中でくるりと回すと腰の鞘に納めた。
「シン」
 戦いが終わり、ガルシア達が歩み寄ってきた。
「おうガルシア、終わったぜ!」
 シンは笑いかけると再び伏したパヤヤームを見やった。
「さぁて、こいつらをふんじばってアラフラの長にでも突き出すか」
 シンは悪戯を企む子供のようにニヤニヤと口元を広げ、指をバキボキ鳴らしながら歩み出した。
「さ〜あ、覚悟しろパヤヤーム。ピカードの無実を証明させた後町中をいやと言うほど走らせて、逆さ吊りにした後で臭い飯を食わせてやるぜ…」
 シンは不気味な笑顔を浮かべていた。最早端から見ればどちらが悪人か分からなかった。
 覚悟しろ、と両手を広げシンがパヤヤームに迫った瞬間、パヤヤームの後ろの船室のドアが勢い良く開かれた。
「待ってください!」
 現れたのは一人の女性である。女性はパヤヤームに駆け寄ると側にしゃがみ込んだ。
「チャウチャ…」
 パヤヤームが言うとチャウチャは立ち上がり、シン達に突然頭を下げた。
「私はパヤヤームの妻のチャウチャと言います。無理な願いだとは思います、ですがどうか夫を許してあげてくれませんか!」
 チャウチャは赤褐色の髪を振り乱して懸命に頭を下げた。
「ふざけるな、海賊をしていたこいつを許せるわけないだろ!大体オレはこいつのせいで二日も臭い飯を…」
 ガルシアはシンの言葉を止め、ずい、彼の前に立った。
 チャウチャの姿を見、ガルシアは言った。
「何か理由があるのだろ、聞かせてもらえないか。海賊をしていた理由を」
 チャウチャは俯き気味に全てを話し始めた。
 彼女らの故郷、チャンパ村は古くから漁業で栄えた漁村であった。後ろは山々に囲まれており、そこで獲られる動物も狩猟することによって村民は生活してきたのである。
 ある時、大イースト海に異変が起こった。海に魔が取り付き、恐ろしいものが復活した。それにより海水の温度は上昇し、村の近辺の魚達は皆いなくなってしまった。
 さらに山からは動物達が姿を消してしまった。凶暴化した魔物達によってほとんどが捕食、または殺されてしまったのだった。
 古くからチャンパ村は土地が痩せており、穀物などの農作物を育てることは困難だった。
 飢え死にするのを待つのみとなった村人達のためにある日立ち上がったのはパヤヤームであった。彼は旅に出て食料を手に入れてくると村を飛び出した。しかし、食料を得るために頼るあてもなければそれを買う金すらもなかった。