二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 8

INDEX|14ページ/25ページ|

次のページ前のページ
 

 飢え死にするよりはよいとパヤヤームが選んだ道は海賊になることだった。最初は良心が痛む思いがあった。しかし、それ以上に村人を思う気持ちの方が強かった。せめてもの罪滅ぼしのため、襲撃する村からは多くは盗まなかった。
 全てはチャンパ村を救うため致し方のないことであった。
「おかずもなし、ご飯もなしじゃあ酷い生活じゃったろうな」
 スクレータは言った。
「本当、可哀想な話ね…」
 ジャスミンは同情した。
「ひでえなんてもんじゃねえよ、地獄だよ地獄!」
 パヤヤームは起き上がり、立ち上がった。
「でもまあ悪いこたぁ出来ねえな、罪は償うよ」
 パヤヤームは手を後ろに組んだ。縄に掛けろとシンに背中を向けた。
「ちょっとおまえさん!」
「チャウチャ」
 パヤヤームはチャウチャの耳元に口を寄せ、ひそひそと何かを話し始めた。言葉は聞こえなかったがチャウチャは言葉にはっとなり、納得したように従った。
「分かったよ、あんたがそこまで言うのなら…」
「さあ、野郎ども、いつまでも寝てんじゃねえ!町長んとこに罪滅ぼしに行くぞ!」
 倒れた海賊達を起こし、シンの元へ全員で歩み寄ってきた。
「俺にしてほしい事があったんだろ?」
「あ、ああ、ピカードの無実を証明してくれるか?」
 チャンパ村での酷い生活の話を聞いた後で、尚且つやけにあっさりと観念したのでシンは面食らっていた。
「任せろ、そいつは俺達の仲間じゃねえっていやあいいんだな?」
「ああ、頼む」
 一同は船室から外に出た。甲板から港に降りる途中でシンは訊ねた。
「なあ、パヤヤーム。この船はお前たちのなんだよな?」
「おう、こればっかりは折れたマストの修理代はしっかり払ってある」
 ただな、とパヤヤームは折れたマストの先を見た。
「あそこの岩に引っかかってるみたいで修理ができねえみたいなんだ」
 シンも見ると確かにマストの先端はひび割れた岩に引っかかっている。引っ張り出そうにも物が大きい分、作業は困難を極めるであろう。
「よし、パヤヤーム。お前も苦労したみたいだからな、オレがこいつを何とかしてやるよ」
 シンはマストの上に飛び乗り、中心部分を滑り降り、マストの引っかかる岩の前に降り立った。岩の前に立つと手をかざし詠唱した。
『爆炎の術!』
 シンは岩の前で小規模の爆発を起こし、その力で岩を粉々に砕いた。これによりマストを引っ張り起こす事が可能となった。
「これですぐに作業が終わるだろ、罪償ったら早く故郷に帰ってやれよ!」
 シンは笑顔で言った。
 甲板のパヤヤームは驚いていた。あれほど憎まれていたというのに船の修理を手伝うような真似をするとは思わなかった。どうやら根はお人好しなのだろうとパヤヤームは思った。
「ああ、ありがとうよ、シン…」
 パヤヤームは人知れず不敵な笑みをこぼしていた。
    ※※※
 シン達の活躍によってパヤヤームは捕まり、海賊チャンパは皆牢へ繋がれることとなった。刑期は定まっていないが、多くの村を襲うという罪を重ねたため、恐らく長くなるであろう。
 パヤヤームの服役中、彼の妻のチャウチャは船で生活することが許された。マストの修復作業もシンが障害物を破壊してくれたおかげですぐに取り掛かられた。作業は一日かかると職人は言っていた。
 牢へ入れられる前にマドラの町長達の前でパヤヤームにピカードは仲間ではないと証言させることで無事にピカードの罪も晴れることとなった。そのことはお供の者を一足先にマドラに帰すことによってピカードはめでたく釈放となった。
 ガルシア達は海賊チャンパを捕まえた手柄でアラフラの町長に一宿一飯を賜った。見たこともないようなご馳走に舌鼓を打っていると町長から思いも寄らぬ提案をされた。
 一緒にチャンパの船を使って貿易をしないか、と。
 パヤヤームは船の修理費はしっかりと払っている、なのでいくら牢に繋がれていると言っても所有権は彼にあるはずだった。それに、船はパヤヤームが刑に服している間はマドラと有効に使う約束をした。
 それなのに貿易に使うというのはアラフラの町長の私用となってしまう、ガルシアは当然のことながら断った。しかし、町長は町にある物は自分の物、自分の物は自分の物と言い、あくまで町長自身のものであるかのように振る舞った。アラフラの町長がどれほど強欲なのかが窺い知れた。
 翌日、事件は起きた。
 ひんやりした牢屋の中でパヤヤームを初めとした海賊達が鉄格子の中に囚われている。牢屋の前には当然のことながら看守がいる。
 パヤヤーム達は静かに地面に腰を下ろしている、反省している様子だった。
「静かだな、パヤヤーム」
 看守は言った。パヤヤームは何も言わない。
「さっき聞いたんだが、お前の船なあ、修理が終わったらしいぜ?」
 パヤヤームは答えない。看守はため息をついて言う。
「まあ、お前がまた船に乗れるのは何年先かわからんがな」
 ははは、と看守は嘲笑った。さすがに頭にきた海賊の一人が立ち上がって言い返そうとした。しかし、パヤヤームはそれを制止した。
「パヤヤーム、何で黙ったままなんですか?」
「いいから、しばらく我慢しろ。もうすぐチャウチャが来るはずだ」
 パヤヤームはそっと海賊に耳打ちするとまた元のように座った。
 やがてパヤヤームの言ったとおりチャウチャが面会にやって来た。腕には息子らしき赤子を抱いている。
「面会に来たわ」
 チャウチャは看守に告げた。
「おう、ご苦労さん。旦那はここにいるぜ」
 チャウチャは息子を抱いたまま鉄格子へ歩み寄った。
「おう、チャウチャ。来てくれたか」
 パヤヤームは言った。
「レオレオも連れてきたわよ」
 チャウチャの腕の中のレオレオはきゃっきゃと喜んだ。
「おう、レオレオ、会えて嬉しいぜ」
 パヤヤームは鉄格子の間から手を伸ばし、レオレオの頬に触れた。すると、さりげなくチャウチャはパヤヤームに耳を貸した。
「いいか、うまくやってくれよ。チャンスは一度しかねえ…」
「ええ、任せて」
 チャウチャはレオレオを地面に下ろした。
「あら〜、レオレオ、あの机にあるものは何かしらね?」
 鉄格子の真向かいにある机の上には鉄格子の錠前を外す鍵がこれ見よがしに置かれている。看守が嫌みったらしくわざわざ置いた物だった。
 レオレオは机までよちよち歩きで歩み寄り、鍵に手を乗せた。
「ああ、だめだめ。これはだめだぞ」
 看守は駆け寄り、鍵を取り上げた。
「全く、子供の面倒はちゃんと見といてやれよ」
「ごめんなさい」
 突然レオレオの体が光り輝いた。パヤヤーム、チャウチャを含め、そこにいる者全員にその光は見えない。
『バブー!』
 レオレオが声を発すると、看守の手の中から鍵が抜け、宙をふわふわと舞った。
 看守は何が起こったか分からないまま目を見開いて驚いた。
 鍵は見えない力でふわふわと飛び、パヤヤームのいる鉄格子の前に落下した。
 パヤヤームは手を伸ばしてそれを拾い、錠前を開けた。
「あ、お前鍵を…!」
「おうらぁ!」
 海賊は看守に跳び膝蹴りを放った。看守は仰向けに倒された。
「てめぇ、よくもさっきは言ってくれたな!この、この!」
 海賊は尚も倒れた看守を蹴り付ける。
「おい、その辺にしとけ。逃げるぞ!」