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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 8

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「へい!」
 最後に一回蹴り付けて海賊はパヤヤーム達と脱走した。
「た、大変です!」
 所変わってアラフラ町長の宮殿、応接間の扉が勢いよく開かれた。応接間では町長とガルシア達がお茶を飲んでいた。
「何ですか騒々しい。扉はもっと静かに開けなさい」
 町長は迷惑そうに告げた。入ってきたのは町の警備兵だった。
「すみません、ですが大変なんです!」
「大変なのは分かりましたから、で、何があったんですか?」
「パヤヤーム達が脱獄しました!」
 町長だけでなくガルシア達もこの知らせに驚いた。
「何ですって、それで捕まえたのですか?」
「いえ、奴ら港の方へ」
 港へ向かったという事はつい先ほど修理が終わったばかりの船で脱走するつもりらしかった。船で海に出られてはもう打つ手がなくなる。
「バカもん、そんな報告をしとる暇があったらすぐにパヤヤームを追いかけんか!」
 警備兵は大急ぎで外へ出て行った。
「ああ、どうしてこうも使えない奴ばかりなんだ!」
 町長は一人苛立っていた。しかし、ふと何かを思いつき、嫌らしい笑みを浮かべた。
「そうだ、ガルシアあなた結構強いですよね。パヤヤームを追ってくれませんか?」
 ガルシア達はパヤヤームにピカードの無実を証言させるという目的を果たしており、最早パヤヤームなどもうどうでもよかった。
「どうして俺達が?」
 ガルシアが訊ねると町長は険しい顔つきになった。
「ご馳走してやっただろ?」
 町長の言い分は、犬や猫などの動物だって食事を貰えば恩義を感じるものだろうと、その義理を果たさないかということであった。
 犬や猫といった動物と一緒にされてガルシア達はむっとした。
「なんですかその目は、分かったのなら早く追いかけなさい!」
 何を言っても無駄であろう、この強欲な町長には分かるまい。ここはガルシア達が折れて素直に従うことにした。
 港に行くと先ほど屋敷に報告に来た兵士が倒されていた。その他にも作業員なども倒れていた。
 パヤヤームは今まさに港から船を出した所だった。
「ああ、ワシの船が!」
 ガルシア達の後ろから町長が駆けてきた。
「何がワシの船だ、ちゃんと金は払ったんだからこれは俺のもんだ!」
 船上からパヤヤームが言った。
「ねえ、お前さん。あそこにいるのシンじゃないのかい?」
 パヤヤームはチャウチャの指差す港を見た。
「げっ、シンだ!」
「げっ、じゃないよ。いくらシンでもあそこからじゃ何もできないよ」
 船は既に港から五十メートル近く離れている。
「ほらお前さん、今度シンに会ったらシンの顔にあれをするって言ってたじゃないか」
「おう、そうだったな…」
 パヤヤームは港に立つシンに顔を向けた。
「あ〜っかん…」
 パヤヤームは下を向いて、思いの丈全てをそれに込めた。
「べ〜〜!」
 パヤヤームは目の下を引き伸ばし、舌をベロベロと出した。
 シンはポカーンとした。一体何をする気かと思えば、そんな子供じみた事だとは。
 船上ではチャウチャがキャハハと笑っている。
「やったじゃないのお前さん!シン、悔しかったらチャンパまで追いかけてきなさいよ、まっ、どうせ無理だろうけどね!」
 チャウチャのはしゃぐ声を残し、パヤヤームは舌をヘラヘラさせて船は水平線へと消えていった。
 後になってからシンはだんだん腹が立ってきた。
「パヤヤーム、あの野郎恩を仇で返しやがって、何があっかんべ〜、だ。こっちゃ唾飛ばしてやるよ!ぺっぺ!」
 シンは海へ向かって唾を飛ばした。
「止めなさいよ、汚いわねえ」
 シバは言った。
「ほらいつまで寝ているんだ!」
 町長は兵士の腹を蹴りつけた。
「もうパヤヤームは行っちゃったよ!」
 側の作業員も蹴った。
 倒れていた者達を起こすと不機嫌極まりない顔で告げた。
「屋敷に帰るぞ…」
 町長が歩き出すと兵士達は慌てて後を追った。ガルシア達の側を通りかかると町長は言った。
「ガルシア、あなたには失望しましたよ。パヤヤームを取り逃がすなんてね」
 町長は付け加えた。
「ああそうだ、ガルシア、パヤヤームを捕まえた褒美についてですが、当然ありませんよ。奴を逃がしたのですからね」
 言うと、ガルシアの顔を見ることなく町長は町へ去っていった。
「何よあれ、頭にくるわね!」
 ジャスミンは怒っていた。
「あの町長、呆れたもんじゃのうガルシア?」
 スクレータは言った。
「そうだな、呆れて怒る気にもならないな…」
 パヤヤームの船をもしかしたら貸してもらえないかと思っていた矢先、パヤヤームが逃げた事によってガルシア達の旅は振り出しに戻った。また船を手に入れるため当て所なく旅を続けるしかなくなった。
「もうこの町には用はあるまい、ここを出ぬかガルシア?」
「そうだな、次はどこへ行こうか…」
 もう船のありそうな町は無さそうだった。マドラに戻った所で何もする事がないだろう。
「ねえ」
 ふとシバが提案した。
「南へ行ってみない?」
「南に、どうしてだ?」
 南からは何故か風の力を感じるという。エナジーの気配を感じるとシバは言うのだった。
 ここから南には広大な砂漠の中にエアーズロックという山がある。風の力を司るエレメンタルロックと呼ばれていた。
「どうせ特に行くとこもないんだし、シバの言うとおり南に行くのもいいんじゃねえか?」
 シンはシバに賛成のようだった。ジャスミン、スクレータも特に反対はしなかった。
「そうだな、行ってみるか。南に」
 全員の意見は固まり、南のエアーズロックを目指すべく、アラフラを後にした。